ゆっくりでいいよ
一度挑戦所にいれば次に挑戦したい人は被挑戦者が拒否権行使するまでそのまま申請することができる。さっき確認したところ、あの場にいた紺達は既に全員申請している。2分後に次の挑戦者と対戦することを設定し、次の挑戦者を待つ。
視点を負けた紺1番の方に戻すと、挑戦所にある休憩所で残りの人達と集合を果たしていた。
「どういう内容を出したの?」
「口って言ってもわかりづらいから、録画を見てくれ」
内容宣言のところを見て、白の表情が明らかに曇ってきている。
「最初から勝てる内容ではないのは予想してたけど、やってくれたわね…」
紺2番「勝率の20%はどこのデータを根拠に出したんだ」
紺5番「今はそれよりも、内容に抗議できないなら、私達に正確な数値を当てれるのか問題ではないの」
紺3番「待って、でもヒントは出てる。見ろ、1分35秒のところで異能さえ分かれば範囲は絞れると言ってるぞ」
紺4番「本当だ、そういえばこいつ結局何の異能を持ってたの?」
紺6番「実際使用している場面を見ている生徒は少ないから、正確の名称はまた知らないけど。火元素の浄化系なのは確かである」
録画を見ながら、個々の意見が飛び交う。
「静かに!」さすがに我慢できなかったのか、制止する白
「……」
「次の挑戦時間は迫ってきている、まずは順番通りに挑む。その間にこっちで引き続き対策を検討する。いいわね」
「「「「「「はい!」」」」」」
一方、ジェネルの方は何をしているというと椅子とテーブルを設置してのんびりお茶タイムの始まりだ。
「どうどう、被挑戦者、ピロが選んだ茶葉の香りは?最高級だよ」
「確かに今まで嗜んだことがないお茶ですね。ああ~早く召し上がりたいですね。」
「わーい、褒められた。さすがピロだわ!」
「残念なことに、おいしいお茶を入れるテクニックは私に備えていないことですね。メイド長が入れたお茶はそれはそれは完璧と称賛に値するものでした」
「ええ、ピロも飲みたいよ!!」
「あなた、お口がないじゃないですか」
「そうだった、ピロなんでお口がないのだろう」
何故かピロといびつなほんのりした雰囲気を醸し出していた。
「いよいよ、次の挑戦者が来たようですね」
「本当だ、ピロお迎えしてくるよ」
「ええ、お願いしますね」
すっかり我が家のように寛いでいる私を見て呆然とする紺2番、ちょっとそばかすが特徴な可愛いらしい女の子だ。
ピロから代わりに挑戦内容を聞かされ、何をすればいいのかわからず立ち尽くす。
「あなたお茶入れるの得意ですか?」
「え、お茶ですか?得意とは言えないですけど、お客さんによくお茶出したりはしています。家がレストランを経営していますので」
「それはとてもよろしいこと、では一緒にお茶を頂きましょう。ピロおすすめ最高級なのですよ」
「えっへん」
気圧されたのか促されたままとぼとぼな足取りでテーブルに近づく紺2番ちゃん。戸惑いは抜けきれずけど手際よくお茶を入れてくれる。
「どうぞ」
「ありがとうございます、そんなに緊張しないでください。何もしませんから」
「どうしてそんなに余裕でいられるのですか」
「逆にどうしてそんなに焦っていらしゃるの?挑まれているのは私の方だというのに。どうぞ、座ってください」
「恵まれているあなたには理解できないと思います」言われた通り椅子を引き腰かける。
「恵まれているという部分に関しては否定しません、けれど私に悩みがないわけではありません」
「きっと自分にとって贅沢な悩みです」
「そうかもしれないませんね、結局ご自身で乗り越えるしかありません」
「ちょいタンマ...重いの重いの飛んでけ!」ピロが二人の間に割り込み、器用に4隅を使って払う動作をする。
「あら、私には会話の才能が少し欠けているみたいですね。では話題を変えましょう。その前に、お茶が冷めますので頂きましょう」
香り立つお茶を一口頂くと、少し重たい空気も和らいでいく感じがした。
「うーん、この癖になるような後味美味しいですね」
「こんなに美味しいお茶初めて飲みました」
「でしょでしょ、一押しだよ!」
お茶タイムを楽しんでいた頃、急に紺2番ちゃんが我に返り椅子から立ち上がる。
「いつの間に流されってしまった。これは貴方の作戦ですね」
「いいえ、ただゆっくりしたいだけです。2分は流石に短かったようですので、そちらが対策を決めるのにもう少し時間がかかりそうですね」
「何を根拠に!?」
「おかしなことを、反応を見れば一目瞭然ではありませんか。いつ決まると思います?」
「それを今敵対している自分に聞きます」
「いけないことですか?私と一緒で現時点では何も知らないじゃないですか。時間はまだまだありますから、雑談を続けましょうよ」
「ピロも混ぜて!!」
結局、紺2番ちゃんは流れに逆らえず、いろいろと私の雑談に付き合ってくれました。もちろん回答は外れました。
これで2勝目。




