取引半成立
思うようにいいタイトルが思い付かず、
結局これに決まりました。
あの後、無事脱出できた私達は外で待機していた救助班にそれぞれ緊急処置を施された。最後まで意識を取り戻せていないヒロインは運ばれ、遠くで攻略対象の幼馴染らしい人物も慌てて駆け付けていた。私の場合は擦り傷のみだから、食堂に寄り夕飯を持ち帰ってから寮に戻った。
「もう今日はグタグタや、何も考えたくない寝よう」と布団をかぶりすぐに深い眠りに入った。
次の朝、
起きた時もう10時過ぎた、授業無い日は本当に早起きがしんどい。すべてベットが私を離してくれないのが悪い。
一通り身支度して、フォーム先輩に“続ぎを話したい”とメッセージを送る。秒で返信が届いた。
“この場所で待ってるよ”
この会話だけ見てるとまるでこれから告白するみたいな文面だね、なんかいいように踊らされているような気がしてならない。
外で付属の地図を開くと、親切な矢印マークが再び現れ案内してくれた。
待ち合わせ場所は楽器練習室と書かれていた。これはまた防音効果抜群なところを押えたわけだね。
扉をノックして入ると、フォーム先輩はピアノの椅子に座り真剣に鍵盤を見ていた。
「普段何を弾かれるのですか?」扉を閉め、フォーム先輩に尋ねる。
「いや~お披露目したいのは山々たけれど、残念ながら僕超音痴なんだよね」
「では、そんなに夢中に鍵盤を見つめるのは何故ですか?」
「僕は単純に白黒が好きだから」
満面な笑顔で答えを言うフォーム先輩答える気が全くないのを瞬時で察した。
「そうそう、昨日随分大変なことになっていたね」
「あれは巻き添えです、まあ珍しいものが見れたので視界が広まりました」
「それはよかったね!詳しいことは話す気があるなら後で喜んで買い取らせてもらうよ。その前に、何が聞きたいんだ?」
「先輩の情報源が多様に渡っていることは承知しています。しかし、同じ情報を求めてるとき、調べる人数が多ければ重複度も必ず跳ね上がります。そこの計算はどうしているのですか?」
「ああ、そのことね~前も言ったように僕が欲しい情報を事前にリストにしているんだ。それを見れば重複しやすそうな情報はあらかじめ報酬ポイント設定を低くしているよ。だから突然高くなることはあっても、低くなることはないからジェネルさんの心配するようなことは起こらないよ」
「なるほど、事前統一してればポイント差による不満を抑えれるわけですね。
では、もう一つお尋ねしたいことはあります。基本報酬はポイントと言ってましたけど、それ以外はどういう場合で変更することが可能ですか?」
「うーん、変更するもののレア度によりますね。まあ、僕が構わないと思えばいつでも変更可能だよ」
「分かりました、これで私の返事も決まりました」
一息おいて喋り出す、
「腕時計の件は引き受けます。しかし、極先生の件はご遠慮させていただきます」
「理由を聞いても?」
「一番は私が先生の元で学ぶ目的とズレを生じるからです。それに他に大事なことがありますので、先生についてあれこれ探る時間がありません」
「うんうん、一年生は確かに色々忙しいね、僕もあの時期大変だったんだ」とあごに手を乗せ大げさに頷く。
「じゃあ、腕時計のリストだけ渡すよ。もし情報を集めれたら、僕にリストの数字を教えてね、紙に書いてくれたらこっちで回収するよ。回収方法は見てのお楽しみに」
フォーム先輩から受け取ったのは5枚にも渡るリストだった、しかも裏表印刷。さっと目を通し、かなり細かい部分まで情報を求められている。これ全部集めることが出来たら、卒論を書けるレベルじゃないかなあ。
「あと、前約束したようにジェネルさんは特別に報酬倍のしているからじゃんじゃん集めて来てね!報酬内容
については一切他言しないでお願いするよ」
「分かりました、ではお先に失礼します」
「はーい、僕はもう少しこの美しい白黒鍵盤を眺めておくよ」
扉を閉める前ちらっと見たフォーム先輩はカーテンからこぼれる日差しに当てられ笑顔で鍵盤に触れていた。不気味で全身の毛が一瞬でぞわっと立った。




