初取引
「フォーム先輩、どうしてここに?」
情報屋がニコニコしながら立っていた。
「ごめん、驚かせちゃった。いいや、これも縁だね。まさか、ここでジェネルさんに会えるなんで。隣いい?」
「ええどうぞ。本当によく出来た縁ですね。信仰に目覚めたのですか?」
「今日ではないね」人差し指を左右に振りながら隣に座っていく。
「そうですか?この授業受けてからそうなれるといいですね」
当たり障りない言葉を返し、目標人物をさりげなく見る。
「あれ、僕がここにいること気にならない?」
「全然、授業を聞く権利は生徒であれば誰にもありますので、先輩がここにいても全く疑問を抱く必要がありませんね」
「つれないね、前はあんなにキラキラした目で話を聞いてくれたのに」
「あれ、先輩でそんなにかまってちゃんなんですか?」何が企んでいる気配プンプン漂わせる情報屋を見て、やれやれと話に乗る。
「仕方がないですね、お話聞きましょう。なるべく簡潔にお願いします」
「じゃあ、一言で。情報を売らない?」
「早くありません、情報回収?入学してから3日しか経っていませんよ」
「今まで通りならばね、でも状況は変わった」情報屋の目線は私の腕時計に向ける。
「確かに、これは情報屋にとって一大事なことですね。しかも、今回のは一年生限定」
「そう、とても困ってるの。だから、先輩を助けると思って、協力してくれない」オーバーに両手を合わせ、上目で私を見る。
「この話何人に持ち掛けていたのですか、フォーム先輩?」ニコッと笑いながら尋ねる。
「あれどうしてそんな事気になるの?もしかして、ジェネルさん僕の専属情報提供者になりたいの?」
「ポイントいくら出せます?私とても高いですよ」
(寝言はマジて寝てから言え、さっきからやってる仕草は愛嬌見せるつもりなのかなあ。殴りたい気持ちだけが湧き上がる)
チャイムが鳴り、先生も教室に入り授業が始まる。
「まあまあ、確かに他にも何人か親切な後輩ちゃんに頼んではいるけど。ジェネルさんは格別だよ」
「格別ね…じゃあきっと先輩は十分な準備してきたのですね。もし、後で他の子とあんまり変わらないこと知れば私悲しいですわ」存在するはずもない涙を拭き、横目で情報屋を見る。
「そこは安心してもらって大丈夫、僕の信用にかかわっているからね」
「話は分かりました、では具体的にどんな情報が必要ですか?それ聞いてから判断させてもらいます」
「大まかに集めてほしいのは2つだね。一つはその腕時計だ。もし承認してくれたら、リストを送るね。そこに対応する報酬が載っているから。もう一つは極先生のことだね、それはジェネルさんが先生の助手になれた際実行してもらって構いませんよ、こちらも別でリストを送るね」
極先生の名前が出た瞬間、目を一瞬細めたのは自分でもわかる。
「さすが生業なだけありまして、すでに把握済みというわけですね」
「ここの先生基本謎が多いから、特に極先生は掴みにくいのよね。だから、助手になる条件公表した時、学園中ちょっとした騒ぎになってたよ。あと一つ面白い情報として、その時質問した生徒はオレンジ髪を持つ女生徒だそうよ」
「先輩、もう少しお互い距離置く方が物事綺麗に見えますよ。でも要件はわかりました、今週中に連絡いたします。」
「もちろんゆっくり考えてもらって構わないから、もし決まれば僕に“はい”だけ送ってきてね。その後、指示出すから」
「記録に残りますから?」
「鋭い!」親指を立てられ、ウィンクしてくる情報屋。「でもこれ以上の詳細は情報料取らないといけないから、知りたい?」
「いいえ、大体予想付きますから。それに今は記録残ることがわかるだけで十分です、また必要な時に尋ねます」
(まさか、こんな二次元な世界でネット上のプライバシー漏洩を防ぐ知識が役に立つ日が来るとは)
「あら、残念。折角出血大サービスしようと思ってたのに~じゃあ、用事も済ませたし僕はそろそろ退散するよ。またね、ジェネルさん」
再び横を見るともう情報屋の姿はどこにもいなかった。
(え、消えた!?そういえば情報屋の異能でなんだっけ?サブだからゲーム内で説明すらなかったのかもしれない。いやいや、今はそれところではない、この授業受ける本来の目的を忘れてきてる)
余計な事は考えず、聖子と聖女を再び観察し始める。




