愛に愛されることを望み恋をする。
【昔むかし、とても栄えている国があった。その国は戦争をし続けその数勝ち続けたがとある大国に挑んだ時その国の王子は大きな傷を負い国民も沢山死んだ。王子は降参し世界からも自国からも恥とされ蔑まれた。王子は傷を隠すように表情の読み取れない右目だけ見えるようになっている無地の白い仮面をかぶり己の城に身を隠した…】
今日、庭園を見たら最後の一つの花が枯れていた。
もうとっくにこの城には色がなかったというのに更に寂しくなってしまったようだ。
その時、優しい花の香りが王子の鼻を掠めたり
風に乗ってきたようなものでは無い。近くで、どこか温かい。
「花…いる?」
「?!!」
少女が1人立っていた。王子の前にその花籠を差し出し首を少し傾げている。
「何故…ここに立ち入った?国民は…僕を嘲笑い、蔑み…」
「瞳を見ればわかる。君は花を愛でてくれる優しい人だってこと。」
少しカタコトだが、少女の言葉は王子の心までよく届いた。王子は花籠からよく目立つ植木鉢を一つ取り、少女に尋ねた。
「これは…?」
「それは…アイビー。可愛らしい葉でしょう。」
あと、と少女は続けた。
「私の名前も、アイビー。父さんがつけてくれた。」
「!」
「だから、君の名前も教えて?」
アイビーの花言葉は諸説あるが、主にふたつの顔があると言われている。永遠の愛、誠実、友情など。
そして死んでも離れない。
だが少女は色々なものが欠けていそうであり…
「君は愛を知っているか?」
「なにも知らない。だから知りたい。」
「僕の名前はルナだ。僕は…」
王子は迷った。無知の少女に自分の全てを教えるべきか。世界からも自国からも恥とされていることを。
それとも、少女ならば王子を慰めてくれる唯一の存在になってくれるのだろうか。
王子がその期待をかけ口を開こうとした、その時だった。
「君は、動揺している。話したくないことは話さない方がいいよ。」
やはりカタコトで感情の籠っていない声だったが王子には久しぶりの「優しさ」だった。
「…そうか。そのアイビー頂こうか」
「ありがとう。また来るね」
王子はその場でお代を渡し、植木鉢をそのまま持って立ち尽くしていた。
少女の後ろ姿をいつまでも眺めていた。