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ようしょくや

作者: スミス・ポール

真っ赤な色の牛が「モーモー」叫びながら踊り狂っている。もちろん、本物の牛ではなくCGで描かれた牛だ。

ひととおり踊った後、最後に必ず「うまいよ!」と笑いながら叫ぶ。

真っ赤な牛が踊って笑いながら喋る?

「なんじゃそりゃ」

俺は声を出してテレビにツッコミをいれたが、既に次のCMに変わっていた。


全国で急激に店舗を増やしている外食チェーン「ようしょくや」

赤い下地に黒い文字で書かれた看板は、一度見たら忘れることができない何かがあった。

店舗を増やしているってことは、お客さんが足を運ぶっていうこと。足を運ぶってことは味がいいということ。なのだが。

「確かに美味いんだけど、それだけではないような・・・」

そう呟きながら壁に掛けてあるジャケットを手に取った。

さっきのCMを見てから食べたくてしょうがないのだ。

「今日は何を食べよう・・・」

考えただけで口の中にヨダレがたまる。

俺は赤い看板を目指して、牛のように突進した。


「ふぅー、食ったなぁ」

カラになった食器を前に、俺は満足げに呟いた。「ボリュームたっぷり、おまけにリーズナブル。どこで儲け出しているんだろう?」

膨れたお腹をさすりながらレジに行くと、いつもの店員が毎度決まったセリフを口にする。

「ありがとうございました!お客様、ポイントカードはお持ちですか?」

俺はこの瞬間を待っていた!財布から取り出した真っ赤なポイントカードには、50箇所スタンプが押せるようになっていて(スタンプの絵は踊っている牛)一回の来店で一個押してくれる。

ちなみに、スタンプが埋まると豪華ディナーが楽しめる旅行に行けるらしい。これはカードの裏に書いてあるし、CMでも宣伝していることだ。

そのスタンプが今日で埋まるのだ!

一回目のスタンプの日付が一か月前だから、かなりのペースで食べに来たことになる。

おかげでこの一ヶ月間のうちに体重が15キロも増えてしまった。

体重のことは会社の同僚が注意してくれたのだが、とにかく食べたかったのだからしょうがない。それに旅行に行けるのだから別にいいではないか。

俺が提示したカードを見た店員は、少し驚いた顔をしたがすぐに笑顔に戻り、「おめでとうございます!ただ今、店長を呼びますのでこちらにどうぞ」そう言って別室に案内した。

待つこと数分、満面の笑みの店長があらわれ、俺の手を握り「おめでとうございます!一ヶ月で50ポイント達成されたお客様は初めてでございます!わたくしどももとても嬉しいです!」

それを聞いて、俺は少し得意げになったが、長くなりそうなので店長の話を遮って聞いた。

「すみません、旅行ってどこに行けるんですか?」

「ああ、そうでしたな!すぐに準備します」

準備って、これからすぐに行くわけじゃないでしょ?そう聞こうとした俺に、店長が何かのスプレーを吹きかけた・・・


 ・・・からだせー

 たすけてくれー!


叫び声が聞こえる。泣き声も交じってる。

俺はゆっくり目を開けた。


 ・・・夢?


俺の目に映ったのは、白い布をまとった体格のいい大勢の人々だった。

ある人は叫び、ある人は泣き、ある人は呆然とした顔で座っている。

ここは、どこだ?

朦朧とした頭で考えてみても、気の利いた答えなんか出やしない。

誰か近くの人に話しかけようとした時、急に静かになった。

みんな、ただ上を見上げている。

つられて見上げてみると、天井が開き大きな手が現れた。

人々はその手から逃れようと悲鳴をあげながら走り回っている。

呆気にとられて見ていると、その手は迷いなく俺に向かって伸びてきた!

慌てて逃げようとしたが時既に遅く、俺は手に掴まれて引き上げられてしまった。

もがいてみたが何もできずに、小さな部屋に投げ込まれた。俺は立ち上がり窓から外の様子を覗いてみて、その光景に肝をつぶした。

黄色い巨人が俺を見つめているのだ!

俺は恐怖のあまり気を失った・・・


「あらら、倒れちゃったよ」黄色い巨人が話しかける。

「きっと気絶でしょうな。いつものことですよ」店主の黄色い巨人が答える。

「よし、じゃあこれ貰っていくよ」

「毎度ありがとうございます!」

「おたくが扱っているのは肉付きがいいし脂ものってて美味しいんだよ。だからつい食べたくなっちゃうんだよねぇ」

「ありがとうございます。そう言っていただけるとわたくしどもも嬉しいです!当店はこれからもお客さまに喜んでいただけるような養殖屋を目指して・・・」

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