プロローグ とある新参者の話
アモンへようこそ。
ここは右を見ても左を見ても悪党だらけのクソッタレた街だ。
毎日が祭りのように騒々しい。
射的をしてみるのはどうだろうか?
チンピラに当てれば景品に小銭、魔王に当たれば大当たりで地獄ツアーにご招待だ。
そんな顔するなよ。せっかくの飯と酒が不味くなるぞ。
何だって?魔王なんてファンタジー世界の住人じゃないのかって思ってるのか? そういうあんたは科学全盛でファンタジー要素なんて欠片もない世界から来たんだな。
しかしこの街にはいるのさ。それも両手の指じゃ足りないほどだ。
仮にも王様が何人もいるっていうのはおかしいと思うだろ?でもあんたはもう少しは察してるんじゃないのか?なんたってあんたも転移してきたクチだろ? いいから先を話せって? わかったわかった話すさ。
それはこの街の特殊な事情ってやつが関わってくるのさ。
この街は巨大な召喚陣の上に街があるのさ。
もう二百年も昔の話さ。
この世界にはすんごい力のある召喚士がいたらしいのさ。そいつがここで悪魔を召喚しようとしたんだよ。
頭は雲にまで届く大悪魔さ。
そんなの呼んで契約なんてしたらこの世界を壊すことも出来る力を得られるだろうな。
少なくともそいつが天下を取れることは間違いない。でもそうならなかった。
何故かって?そいつは召喚するのに失敗したのさ。
しかもただの失敗じゃない、大失敗だ。
そいつはその時に死んだと言われているし未だに生きているなんて話もある。
っとここで話が終われば良かったんだがそうはいかない。ここからが話の本題ってやつさ。
悪魔の召喚は失敗したが代わりに悪人がポコポコ召喚されるようになったのさ。
それも二百年間途切れることなくな。
まるで悪の卵を産む養鶏場って所か? もしくは闇鍋みたいな街だな。
さっきも言ったが魔王はいるし、かと思えばマッドサイエンティスト何かもいる。
未だに山や海がそのままあるのが不思議なくらいだ。
俺やあんたが仏になっているよりかもな。
まあこの街についての話はこんなもんだ。
俺は帰るぜ。
あんたも気をつけて生きるんだな。
はっ?勘定を忘れてるって? オイオイ、これだけ聞いといて情報料もなしなのか?世の中ギブアンドテイクだぜ。
あーそうか。
あんたは文無しか。
でも安心しろよ。
この街だと死体の取引もされてるんだ。
あんたのでも飯代くらいにはなるぞ。
騙したのかって? そう怒鳴るなよ。
最初に言ったろ?この街は右を見ても左を見ても悪党だらけだってさ。
なら正面にいる男だって悪党に決まってるだろ?サヨナラだマヌケ野郎。
地獄の鬼とよろしくやっててくれ。
パァン
やれやれせっかくの話が無駄になっちまったか。まあ俺の腹が満たされたんだから良しとするか。
後に残ったのは眉間に穴を開けた1人の男の死体と日常だと言わんばかりの客達、それと手馴れた感じに処理する店主とうんざりした顔のバイトだけだった。