AN ENDLESS YOUR TURN
お待たせいたしました!!
とりあえず投稿します
――この出会いは星の巡り合わせ……つまりは運命
――これって奇跡的な可能性の出逢い
人間という生き物は実は神聖なる物で、その中で私というのは最上位であって。
運命とか奇跡とか、そんな訳の分からないようなものに目を輝かせ、胸を踊らせて。
見た目によらず男性の方がロマンチストと何かで聞いたことがあるけど、私はあくまでも女性がロマンチストの方がいいな。
そんな事思っていたら、私はいつの間にか気分が乗り、口に出していた。
「ようこそ、衣ヶ丘大学白虎棟……図書棟へ!!」
場所は何の変哲もない図書室。だけど、図書室なんてハプニング祭の中心。本に手を伸ばせば、触れ合う温もり。常連の長身の文学少年。考えただけでも素晴らしき場面が拡がる舞台。
そして、時間は夕方。天気がよければ西に沈む太陽に照らされる影なんて今にも描き起こしたい程。今はどんな天気か私は知らない。だけど、きっと今日も天気が…………今日は誰も来なかったんだった。
生憎の灰色空模様。でも……でもでもでも!!今、目の前には、男子がいるじゃないか!?
放課後 2人きり……こんなの検索しなくても分かる、絶対青春始まる系のフラグ!!これはよくあるシチュエーション!!待ち侘びたよこの瞬間!!しかも後輩。これだけでビックリするほど株高め。
私の時代ついに到来かも知れない。ようやく、世界が私に追いついたのね。私の銀縁レンズ越しの少年よ、届け!!
私が、このリュックサックと希望を背負った事により、世界はついに私のために動き出す。だって私は!!……って、……誰ですか。って聞かれてたかも。
……また、ミスしたように感じたけどまぁいいことにしよう!!そうじゃないとやってけないよ☆………………イケメンごめんなさい。
*****
図書館……もといい、図書棟の入口で自分は何を思い、何を考えるか。答えは瞬間的に導き出される。
ただただ、無心でいたい。それ以外の答えなんてない。……目の前の人のせいで、何かが崩れ去ったような気すらしてしまってる。
「…………」
目の前の人は、伸びやかに声を発した。濁りなきクリアボイスで。
解き放たれた文字の連なりは多分、果てが見えない、後ろの廊下の奥まで響いてそうだ。もっとも、今は誰も残ってない……そう思えるぐらい静かだけど。学校ってこんな静かな場所なのかと少し問いたい。……誰に問うものか知らないが。
(……welcome to the library.と)
とりあえず言われたことを、心の中で落ち着いて英訳化。そうでもしないと口から溜息が出てしまいかねない。そして、思う。
(招かれるような客じゃない。大袈裟すぎ。重すぎ)
入ってきて早々、意味が理解し難い独り言。特に、カンビレード・マース。……と思ったら、いきなり接待モードにチェンジ。キャラがせわしく、目まぐるしい。
こういうキャラがコロコロ変わる人は苦手だ。何考えてるか分からないからし、どう接すればいいか分からない。そういう面では自分も何考えてるか分からないと言われるけども。あくまでそっち系のキャラとは違うと異なると思いたい。
さて、今の体勢はといえば前屈伸ばした右手でドアノブを掴んだまま。もうこの体勢は、かれこれ10分近くしてるかもしれない。
(いや、動きたいのは山々だけど……)
目の前の人がいつまでもいつまでも、動かない。鞄を背負ったまま右手を全開で開いて、伸ばしたまま。石化してるのかと思うぐらい。あまりに動かないので、死んでるのかもしれないと思ったが、さっきまで言葉を発していたのにも関わらず、苦しみもせず死ぬなんてそれはあまりに酷な死に様すぎる。そもそも、立ったまま死ぬなんて仁王立ちの弁慶じゃあるまい。……1番、謎なのは胸の高さまで挙げられた右手だが。
(何をどうしたらこんなことするんだ……)
明らかに、これは誰もが悶え苦しむ、正真正銘の黒歴史的な……。
現実は、アニメでもマンガでもないのにこんな静止画、普通おかしい。だけど、それを忘れさせるように、払い去るように、目の前で年上の人が、キメてるのだ。少し痛めのポーズで。全開で。
本の連なる城……もといい、多くの本棚を背景にして。
(多分、関わったら面倒臭い人だ)
頭ではそれを理解している。しかし……こっからどうすればいいのかがイマイチ分からなかった。
(誰かなんとかして……)
目の前の人が招待宣言を告げてからはしんと静まり返り、この場の元々の雰囲気を取り戻してきた。……ただ、自分はそんな事を考えるより先に体勢をそろそろ動かしたい。
右手の感覚が大分、曖昧になってる……かなり痺れかけている。
(……故に動けない理由とは)
突然の宣告による困惑。突然の登場による波乱。この2つが動けなくなった理由なのかと推測する。恐らく、それ以外も複数重なっているだろうが。そこからあっという間に展開予想。
所要時間、3秒……間違いない。これは恐らく…………。
(非日常、展開分岐……)
なんとも馬鹿げている予想だけど、多分誰かに描かれた話ならきっとそうなる。
――目の前の上級生は、誰が見ても美人だと思うし、自分も今まで逢った人の中でも抜群の容姿端麗だ。
「ねぇ、君は、」
彼女は1歩ずつ僕に近づく。僕みたいな冴えない陰気臭い男子生徒なんかに……。
「そんな悲しい顔をしてるの?」
窓から差し込む橙の日差しに照らされる女神は、僕だけを捉えている。僕なんかが、こんな人に関わっちゃいけないのに動けない。
「……僕は……僕は」
肩に掛けてる鞄をグッと握る。僕は、ただ、本だけを探したかっただけ。言わなきゃいけないのに口もままに操作も出来ないし、表情も変えられない……。
「何も、言わないで」
日差しが彼女の向こう側に行き、ハッキリと彼女の顔が見えた。
嬉しいような悲しいような……そんな笑顔を僅かに見せて僕の目の前に立つ。サラリと伸びた髪がどこから吹いたか分からない風で揺れる。静かな雨しか降らないはずの心が全てを悟ったような彼女の存在で揺れる。
「……!!」
学校の図書室。夕方に2人は星の巡りで交わる……。――
(図書室、夕方、男女2人きり、美人と冴えない奴……)
あまりに揃いすぎた条件で小説のワンシーンが描けそうである。しかし、あくまで現実はそうならない…………いつもなら願いたくないけど、今だけはそう願い、祈るしかない。
(頼むから、動いてくれ……)
祈ったからなのか目の前の人は溶けだした氷のように動き出したのだ。まるで、自分の行為を客観視したように。何が動かした原因なのか分からない。ただ、謎に開かれた右手は元の居場所を探し、定位置に急いで戻っていった。それから、何度か瞬きをし、少し伏し目がちになった。眼鏡から流れるような視線も、どこか絵になる。端麗とは実に便利でおくめかしいものだ。
「……とりあえず、中に入って」
宣言とは打って変わって、静かに囁き、そそくさに身を翻した。
……一体、ここまでで何分要したのか。真実は、当事者にしか分からない事だけど。
(……やっと、動ける)
ただ、時間がかかりすぎたようで、右手をドアノブと離した瞬間、全身に痺れ始めた。正座しててフラッとなる方がまだマシに感じるほど、一気に痺れが体を包み込む。もちろん、誰のせいかなんて馬鹿みたいに分かりきってるけど、どうしようもない。……全く今日は厄日なのかと思える。
(こんなことなら、すぐ帰るべきだったのか)
足に感覚がほぼないながら、1歩1歩苦しめられながら、歩みを進めた。
「……さ、」
入ってからここは、本だけの存在場所だと思った。壁がほとんど見えないほどびっしりキャラメルカラーの本棚に覆われていて、その本棚の中も本で埋め尽くされている。本棚1つ1つもかなり大きいのに、その行列もかなり多い。それでも十分多いのに、白虎棟も5階建てだ。多分5階には、ライトノベルとかマンガが多いかもしれないが、それも立派な本……だろう。ざっと、蔵書数は100.000冊近くは行きそうだ。
(これが、国の力か……)
噂によれば、地下にも書庫があり、古い新聞などのスクラップがあるとかないとか……何度か検索したし、見学も行かされたけど、想像を遥かに超えてきている。というより、もはや図書室の域を超えているような気がする。
形容するならば本之城と言うか……。
「………………は」
さっきまでの謎の対面のせいで気付かなかったが、床も廊下とは違い、自然な色合いのフローリング。あえて、ニス塗りをせずに自然のままなのが本と共存させているようにも感じられる。
(力入れすぎだろ……)
ここだけでいくらお金かけてるんだろう。というか、ここの大学付属分も合わせて総額いくらなのか…………考えただけでもゾッとした。
後ろのドアが微かに音を立て、静けさに包まれたこの部屋に一瞬だけ存在した。そういえばまだ閉まってなかったんだ……なんて呑気なことを頭で考えていた。
「ねぇってば!」
いつの間にか目の前の人はこちらを睨みつけていた。
「…………君って、何者なの?」
(それはこちらの台詞なのですが……)
招かれたと思ったら質問。……全くもって他人の考えなんて分からないし、出来ることなら一生分かりたくない。知ったとしても何も変わらない……ならいっそのこと知らない方がいいじゃないか。確かに世の中には、メンタリストという他人の心を読める人も中にいるし、絶対出来ないってことは無いんだろうって心ではどこか思ってる。だけどさ…………読んで何があるんだという結論になってしまう。それも、元から好かれないような人ならば尚更…………。
だから本当は、目の前の人は誰なのか。とかそんなのはどうでもいい。……読めるものは本だけで十分。
だけど、きっと現実はそんなことを許してくれない。他人との関わりなんて、今すぐにでも絶ちたいのに……今年も、今月も、今週も、そして今日もまた自分の気持ちを心にしまい込んで静かに呟く。
「汐宮祐希。高等部1年……」
いつも聞こえないと言われないように微妙に調節した声はきっと相手にも届いているだろう。その人は、こちらに何度目かの微笑みを見せた。
「ふぅん……それが新入生くんの名前ね?」
(自分=新入生くん……よな)
言い方的に、これからもそう呼ぶようにしか聞こえない……これ、自己紹介した意味無い気がするんだけど。
「真名を言われたからにはこちらもディスクロージャーしなければならないわ……」
そうして、謎の1回転後、右手で左目を隠した。
(この人、やっぱり…………)
心の中で不審感が確信に変わりつつある中、その人は2回目の宣言した。
「宇宙で1光年に1度の存在……そして、銀河系でたった1人の存在……世界が闇に堕ちし時、華麗に彗星と共に現れ、その闇を打ち払いし存在。……真名、火星の女神!!」
きっと、目の前の……改め、カンビレード・マース……長いから、マースさんとやらはこの宣言を言えて凄く満足そうにしている。……ただ、気になる点が複数。
「……1光年は距離」
理科で誰もが習うであろう1光年。それは、年と付いてるがあくまで光が1年かかる距離のことだ。
「……地球では、1光年はそうかもしれないが、火星では年のことよ!!」
今、明らかに設定作ったよこの人。多分不利になったら何かと火星、火星って言うオチだ。
「今は特別に火星語を封じてるわ……感謝しなさい!」
火星語なんてあるなら聞きたいけど、そこまで言ってたらキリがなさそうだ。
「闇になんとか……って」
一体いつ起きるんだ……世界が闇に堕ちし時なんて。
「堕ちる!!えーと…………きっと、そのうちよ!!!!絶対!!多分!!確実!!」
あるのかないのかさえハッキリしてないのに来てるなんて火星物騒すぎる……設定も世界観も説明も全て雑すぎる。
「今は銀河で何が起きているか。特にこのち……第3惑星の酷い有様を調査するために、この大学に潜入してるって訳よ!!」
呆れた。……目の前に一般人いるけど、そんなこと言って大丈夫なのか。というか、カッコつけたいがために第3惑星なんて言い変えたよこの人。もはや、さっきから火星、連呼して言ってるってことは……。
「誰も私が火星からの使者なんてこと誰も知らないわ……」
がっつりネタバレしてる、お嬢さん。久々にこの設定話せてるから凄く楽しそうに目を輝かせているが……間違いなく、この人は。
(中二病……)
生を見るのは初めてだが、流石の一言しか言えない。他人の目も気持ちも全部フル無視で、自分の世界で生きてる。ある意味、強者だが、それは莫大な黒歴史を現在進行で更新しているなんて、本人は知らない。
「さぁ、新入生くん。ここまで知ってしまったからには第6星間性交流をしなければいないわ……」
第6星間性交流……こういう時って大体、つまらないものだったりする。そして……。
「さぁ、LINEを交換して友だちになるわよ」
マースさんもその鉄板を外さなかった。……出来ればLINEさえ交換したくないが。
「ほら、エレクトリックテレパシーを差し出しなさい!!これは命令よ?」
LINEは普通に言ったのにスマホは言わない。中二病ってこういう感じなのか……。仕方なく鞄の奥から黒一色のスマホを取り出した。
「新入生くん……もしかして、ダークエルシオンドラゴン使い?」
「………………」
無言でスマホをしまおうとすると慌てて、謝ってきた。意外と真面目に話せる気がした。その後の操作は、静かに行ったのでかなりスムーズに済んだ……が。
「これからもよろしくするわよ新入生くん☆」
「……あの、すみません」
「第6星間性交流をしたじゃないの……聞きたいことならそっちで聞いてよね!!」
「…………」
つまり、LINEで聞けと。人間関係云々で、まともにやり取りしないようなぼっちに、なんてことをこの人は言うのだろう。
「……????ま、いっか。新入生くん、早く出てって!!」
「え……ちょっ」
「もう、帰るべしべし!!」
いきなり、回れ右をさせられ、一気に入口まで戻され、意味のわからない別れの挨拶を告げ、ポイッと追い出された。追い打ちと言わんばかりにガチャりという音さえ聞こえた。
全く……招かれたと思ったら睨まれ、その後、LINEを強制的に交換させられ、しまいには閉め出される。
(なんて人だ……)
スマホにはあなたを追加した友だちでマースさんがいる……はずだった。しかし、そんな人は追加した人にはいなかった。
ただ、アイコンのところにマスカレード・ビーンズという文字だけの人が1人だけいた。
(カンビレード・マース。そういえば、火星ってマーズ…………)
はい……ヒロインかなりキャラ濃いめです。
もう、序章は終わります!
次の回で、翌日を描いて
7月から本編に入れたらいいなぁとは思ってます
ゆっくりですが何卒よろしくお願いします( ..)"