男子高校生の放課後談
まず、お詫びを……
月初というか中旬になってしまいました。
世間は8月ではありますが、この話の時間軸は6月にもなってません。
あらすじは序文で書いてますので思い出しながらお読みください
体育委員同士の衝突、そして、図書委員会の日から数日。
その日々は、本当に特に何もなく、自分が過ごすような平静な日常が続いた。前までは、当たり前だと思えるような普通の日常。
あの後も体育の授業があり、その度に体育委員同士は顔を合わすことはもちろんあったし、 言葉を交わすことも時折あったが、互いの対抗心は見受けられないぐらいに、静かだった。
ちなみにクラス対抗リレーの練習はといえば、元から足が早い4人で固められてるということもあり、タイミングさえバッチリ合えば1位を取れるのではないかと囁かれるほど順調であった。
(まぁ、性格は全然似てないんだけど……)
近藤は自分で、運動部所属やから任せとけ!!みたいなことを言って、どこまでも自己中心。
麥瀬は隣の体育委員に因縁っぽい対抗心を抱いてはいるし、元からの気高い性格持ち。
長田は練習しながら、改善案を模索するような様子を何度も見かけた。だが、あくまで練習には手を抜かず、毎回息を切らさんばかりに走っていた。
自分はといえば、周りからの批判されないように、努めていた。
(麥瀬が口だけのキャラじゃないから成立してるんだろうな)
そして、もう1つのイベントである図書委員会。
その際に起きたイレギュラー。もう1人の図書委員 九条さんともあれから何の接点もない。……元々、クラスメイトと関わりがないタイプなので、それが当たり前なのだが。(体育の授業は例外)
九条さんも、どちらかといえば孤立してるようなタイプだし、お互いに、1人が苦痛というタイプでもないので、2人で群れることは無かった。
(委員会前と後は、話したけども……)
ただ、なんだかんだで、友人の1人や2人はいつの間にか出来ていたりするし、あまり気にもとめていなかった。
あくまで、自分には作れそうもないオチではあるが、何故か自分以外の他人には出来るだろうという確証じみたものがある。……と思う。
そんな調子で、自分のいる班が掃除当番になった日。体育祭が2週間後ぐらいで、テスト1週間前のこと。
「汐宮的にはさ、誰かこの人いいなって思う女子いる?」
それは、単直に言えば恋バナという類のものが振られた。それも突然。
(……そもそも、今 掃除してるんだから口より手を動かせって)
もちろん、口には出さない。……目の前の彼が動いてるのは口だけだが。
「どんな清楚アイドルでも、排泄物はする訳だし、どんなクズ野郎でも、人間味は1ミリぐらいあるのは分かるだろ?」
後者は、まだいいけど、前者に至ってはいつの時代のアイドルだ。と言いたくなる。
そもそも、したことないんですぅ♡って人は、腸内環境が清楚でないと、遠回しに言ってるようなものではないのか。いや、というよりも。
(何故自分に……)
普通、そういう話は、友達同士で話すものじゃないのか。と思っていたが、こちらの思いは伝わることは無い。
「つまり、人間は、所詮 性癖の塊って訳よ!」
だから、そういう同意は……。
(コイツハナニヲイッテルンダ)
……何を言ってるのか、さっぱり分からない。あまりのことすぎて、珍しく反芻してしまった。
それが分かったのか、こちらが返答をする前に言葉が飛んできた。
「何を不思議そうな面をしているのだ?何もおかしなことを言ってないだろ?」
そんな不思議そうな面をしていたのか。と聞きたいがその前に。
(おかしなことしか言ってないことに、彼は、気付きはしないのか……)
さも当然のことを言ったまでだ。という面構えで彼はこちらを見ている。
周りを見ると、同じく掃除の班である人が、こちらの会話を聞い て、若干ニヤニヤした様子であった。
(こういう会話は、男子高校生あるあるなのか…)
普段から、他人と話さない(入学してから何故か、女性の先輩やクラスメイトにはやたらと絡まれたけども)から、こういう時にとっさの対応が追いつかない。
「やっぱりさ、俺達の学年代表様がどんな女子がタイプかって、1年全体男子で気になる訳よ?」
「はあ……」
(いや、そんなこと普通、気にならないだろ……)
呆れ返事ぐらいしか出ない。男子というのはこういう話を日常的に行っているのか。
「ちなみにさ、俺的には有栖がいいなって思うんだよな~」
目の前の彼はそんな風に言って、あそこがいいとかベラベラと喋り出す。
本当に手を動かして。と心では念じてみるがどうも通じはしない。
(んー、有栖さんは確か……)
この前の図書委員会の際に、例の如く九条さんが色々教えてくれたのだが、「もしかすると、こういう話題が振られるかもね」という推理で、クラスメイトの女子のことを軽く教えてはもらった。
初めは、そんな情報はいらないと聞かないつもりだったが、「いち、女子クラスメイトとして聞きなさい」と命令される形で、否応無しに話されたのが事実だが。
(有栖 夢 確か、性格に難アリの女子って聞いたな……こんな形の情報しか教えて貰ってないけど)
ただ何故か、彼女の話してくれた情報は良さではなく、実は○○なんだよ……という聞いたら幻滅しそうな内容ばかりで、実は聞かない方が良かったのではないかと今でも思ってる。
その調子で、この学年女子の情報も話さんばかりだったので、その場で止めておいた。
今になっても、その選択をして、本当に良かったと思う。……ちょっと遅かったかもしれないが。
「な?有栖って最高だろ!!」
そんなことに頭を持ってかれたせいで、彼の有栖さんの素敵なところ(仮)の熱弁が終わってしまい、こちら側に同意を求められた。
「あ…………人それぞれ好みある。よね」
同意をしようにもほとんど聞いてないため、特に何が?と聞かれると厄介かと思い、そうぼやかす。
「あの手は、性格悪いから目覚ませって……」
ようやく、この人と自分の間に第3の人間が加わり、会話が成り立ち始めた。
「うるせえ!お前みたいに2次元厨の意見は認めねぇ!!」
「皆、最初はたかが画面上だの、グラフィックだのと小馬鹿にする……だが、それは彼女達の持つポテンシャルの高さを知らないからであって……」
「何言ってるかさっぱりわからないっつーの!」
「こちら側はいつでも君を歓迎してる」
「全くもっていらねーよ!!」
ただその会話に自分は参加してないが。
(そもそも何が原因でこんな話題に……)
当事者が何一つ理解してないまま話は進行していく。
「おいおい、またケンカか?」
「「こいつが発端です」」
「互いに互いを売る行為は早々出来はしないと思うが?」
「「お前、何言ってくれてんだ!?」」
「はぁ……尊重って言葉は存在しないのか??」
「但し、2次元は除く!!」「だが、現実は除外する」
「……仲が良いのか悪いのか」
その様子を傍観していたらしい班員がまた1人、彼らの話の輪に加わる。
最初に話を振られたこちらのことは、今はどうでもよくなってるのかもしれない。
(巻き込まれないうちに帰ろ……)
ゴミを集め終わり、ちりとりを取りに行こうとすると、話題に加わっていなかったらしい1人が、ちりとりを手にして待っていた。
「後のことは、放っておいていいよ」
「あ、あぁ……」
こちらの微妙な返事を聞き、思い出したように会話を繋げてくれた。
「四嶋 優翔ね。一応、後ろの席だったから覚えてると思うけど」
「…………」
(しじま?しじま……ええと)
興味が無いせいなのか、覚えきれてないクラス名簿を頭で整理しながら、漢字変換をする。
女子と比べて、何故そんな情報量が皆無かというと、女子の情報しか聞けなかったからだ。学年女子の情報は把握してるというのに、クラス男子の情報は教室に着くまで、一言も出てこなかった。
結果、男子情報は聞けない始末。そして、自身で知る気さえも起きないので、完全に無知状態。
(初日からよく絡まれる近藤とか、リレーの人たちあたりは一致するけど……)
「もしかして、覚えてない?」
こちらの間合いを察したのか、彼は少し呆れるように聞いてくる。
ここで嘘をついても、意味が無いと思ったから正直に、しかし、微かに首を縦に振った。……なんとなく彼は、物事を見透かしてるというか、妙な第六感?というべきものを持ってるように映った。
「正直だけど、クラスメイトの名前は覚えておく方がいいよ、汐宮」
彼は、呆れながらも諭すように、静かに告げてきた。まるで、それは仕方ないと言うような感じで。
「…………すみません」
消え入りそうな声で、彼に謝罪の言葉を告げる。
しかし、彼はどこか困ったように眉を下げる。
(流れが変だったか……)
「謝るほどのことじゃないけど?」
「え……」
指摘を受けたら謝る……それが普通。だというのに、彼はそれをむしろ不要というような発言をする。
「確かに、クラスメイトの名前を覚えてないのはどうかと思う。が、
謝るまでのことじゃない」
「でも……」
「そもそも、アイツらみたいなのでキャラが濃すぎるから、こういう感じのやつは印象残らなくて当たり前だよ」
アイツらで、教室の反対側で戯れてる3人に目をやり、こういう感じのやつで、彼自身を指し、そして眉は下がったまま笑った。
(あ、思い出した……)
そして、その表情を見てようやく彼、四嶋のことを思い出せた。
(クラスメイトのことを思い出すなんて、言葉的にはおかしな点しかないけど)
今は席替えをしてしまっているが、確か入学時の出席番号順の際、後ろの席に彼がいた気がする。
プリントが余ってたり、足りなかったりすると、率先して取りに行ってくれたが、その時の表情が、今見せてるような少し眉の下がった微笑みだった。
そして、クラスメイト全員に大して、どこまでも平等で、優しい男子生徒だ。
「……いつもありがとう」
自然にそんな言葉が、零れていた。上手く笑えてるか不安だったけど、真顔でこんなことを言うよりかは、きっといいはず。
「どういたしまして。で合ってるかな」
そんな言葉を交わしながら、2人で掃除を行った。
「第一印象でOKだから、な?」
「え、マジで言わなきゃいけないのか?」
「全員に聞いてるからな!さぁ、ここか?隣か?それとも先輩か?」
「2次元来い。2次元来い。2次元来い。2次元来い。2次元来い……」
いつの間にか、途中で加わった男子のタイプの話になっており、誘導尋問というか、どちらの宗教に入るのかという選択を迫られていた。
自分はというと、四嶋に促された通り、掃除を終えてこちらに火種が飛んでこないうちに、静かに教室を後にした。
「「え、マジで!?!?!?!?」」
フロアを1階降りた頃に聞こえてきた声は、とても男子高校生らしい元気で騒がしい声であった。
(………………ところで、四嶋以外は誰か分からないままだ)
どうやってクラスメイトの名前と顔を覚えるか。それが、今の自分にとっての1番の課題だ。
(もう入学して2ヶ月経とうとしてるけど、間に合うかな)
「お、汐宮。いい所に」
掃除を終え(自分の分だけ)、そのままロッカー室で靴を履き替えようとしてると、急に名前が呼ばれた。
「安野先生」
学年代表生徒という立場上、基本的に先生方に呼ばれることは他の生徒に比べれば多い。
特別観察生徒や劣等生という類の一部の生徒に比べると変わらないかも知れないけど。
「今から帰るのか?」
そして、学年代表生徒というものは、厄介事(面倒事)が付きまとう。
(先生の顔と名前は、完全一致で覚えてるのにな……)
「……何か用ですか」
とりあえず、こちらの内心を悟られまいと、爽やかな雰囲気を装う。
無口で、孤立してるのは多分知られてるだろうが、優等生イメージは保っておくべきだと思うからだ。
何かと学年代表、学年代表と、頼まれごと(主に挨拶)が多い。そんな毎度毎度、同じ生徒が出てきて楽しいかと、思う。
どうせ皆、流し聞きなのだから誰が言っても、何を言ってもいいはずだけど。
「まぁ、用といえば用になる。少し先の話なんだがな」
まどろっこしい話し方で、こちらにストレスを与えてくる。
(普通は、先生の名前なんて2の次なんだろうな……)
「では、体育祭関係ではないということでしょうか」
ただ、話してるのは、第1学年主任 安野 潤先生。
教師歴も人生歴もベテラン以外の何者でもない。
間違っても生徒が……人生歴15年のアマチュアは、下手に出るのが最善だろう。
「ああ。体育祭は、生徒会と体育委員が主役の行事だからな……学年代表が出る幕が用意できそうにない」
「体育祭ですからね……」
喜んで用意しないでいいと言いたくなるが、あくまで同調するように相槌を打つ。
「ところで、汐宮。我が校の創立記念日は知ってるかね?」
全く帰らす気のない会話に、少しだけ嫌気が差す。
ちなみに、開け放されたロッカー扉に左手は軽くかけたまま先生と話をしている。
「7月12日ですよね」
そしてその創立記念日には、記念式典をする。
「先生の中でも把握してない人がいるのに、よく知ってるな」
「まぁ、学年代表を務めさせて頂いてますから……」
恐らく、安野先生はその件について呼び止めたのだ。そして、それはすぐに終わるはずがない。
(全く、元からある用事と急に出来た用事じゃ心の持ちようが変わるんだけど……)
かけていた左手でロッカーをパタリと閉め、そのまま学年主任の方に詰め寄る。
「創立記念日に執り行われる、式典の件ですね」
「あぁ、話が早くて本当に助かる」
こちらとしては、話が早くなくてとても不服でしかないが。
(また挨拶文考えるのか……)
クラスメイトのことを覚えるのって中々難しいですよね……
特にぼっちキャラだとなんかあいつうるさいな……みたいに捉えてないのでは???と思ってしまいます。
一応、作者自身はぼっちになりそびれた友達がままいるタイプです(いいこと




