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シルバーバレット3

桂木のこの発言に部屋中の人間が驚きを隠せなかった。

一番驚いたのはミクリだった。


「桂木さん、あなた自分が何を言ってるかわかってるの?」

「当然だ、今の現状を考えればなおさらな…」


桂木は小さく頷く。ミクリは桂木の言葉に「でも!」と否定しようとしたが続ける言葉が出てこない。

正義は二人の会話をただ聞いていた。

桂木の言った『今の現状』という言葉をヒーローが怪我を負って動けないこの状況の事だろうと正義は理解した。


「この話を上の人間は知っているの?」

「いや、今彼らに伝えれば手遅れになるだろう。これは俺の独断で行う」

「上からの承認も無しに民間人を巻き込むなんて一体どんな処罰を受けるか…」

「そんなもの救える命に比べれば大した事はない」


ミクリは桂木の目を見た。本気の目だ。人が決断したときに見せる覚悟の目だ。

この時の桂木はテコでも動かない。この覚悟が彼、桂木勇気の強さなのだろう。ミクリはため息をつき手を上げた。


「わかった、降参よ。でも責任はあなた持ちだからね」

「聞き入れてくれて助かるよ」


緊張が解けたのか先ほどまでとは違い笑顔を見せる桂木。

どうせ聞き入れるまで食い下がるくせに…とミクリは呆れ返ったが桂木の笑顔を見るとその気持ちもどこかに飛んでいった。

すぐに桂木は正義に向き直った。先ほどミクリに向けられていた瞳は今正義に向けられる。


「君の力が必要だ…!頼む」


桂木は頭を下げる。ヒーローに頭を下げられて断れるわけがない。正義は二つ返事で承諾した。

桂木はそれを聞くとミクリに正義をある部屋へ連れていくように命じた。ミクリは頷き正義を連れていった。


「……」


二人の出ていった部屋に沈黙が生まれる。その沈黙の中で桂木は一人思考を巡らせた。そして小さな声で、しかし強く、呟いた。


「頼んだぞ少年」


ミクリに案内された部屋で正義はある検査を受けた。

検査はすぐに終わったが解放されたのも束の間すぐに次の検査が受けさせられた。

検査がすべて終わった時には正義はかなり疲れ果てていた。

今朝の不良との一件に始まり遅くまでの学祭準備、その後の日常ではあり得ないヒーローの戦いに巻き込まれグロッキーなところにこの検査の嵐では疲れが見えるのも仕方がない。そして極めつけには「検査は終わった?ならついてきて」とミクリが休む隙ももなく引っ張り回すのだ。

しかし最後に連れてこられたところで変身装置を渡された時先ほどまでの疲れはどこかに消えていった。

変身装置と言われ渡されたのは四角形の無色なバックルだった。


「これで変身するの?」

「今のままじゃ無理よ」

「え!?じゃあ俺ヒーローになれないじゃん!」


どうしよう!っと叫ぶ正義にミクリは説明をする。


「あのね、そのバックルはあなたの強い意思や憧れによってその姿を変えるの。今はただのガラクタだけどね」

「で、変身の方法は?」

「ああ、それはね…」


ミクリが近づいてきた。彼女の髪の毛が揺れる度にすごくいい匂いがする。ミクリは正義の手からバックルを受けとると


「こうするのよ!」


正義の胸に思い切り押し込んだ!


「ぎゃふん!」


バックルで思い切り叩かれダサい声を発しながら床に倒れる正義。ミクリはそれを見て耐えろよとばかりに呆れた視線を送っている。


「なにするんだよ!?痛いじゃないか…て痛くない?ってかバックルは?」

「そこよ」


ミクリが正義の胸を指差す。見るがそこにバックルはない。


「ないじゃないか」

「服を脱いで確かめてみなさい」

「しかし女の子の前で…」

「いいから脱ぎなさい!」


正義なりに気を使ったつもりだったのだが怒られたので仕方なく上着を脱ぐと胸には12と数字が書いていた。


「ええ!?なにこれ俺聞いてない!」

「言ってないんだから当たり前でしょ」


パニックに陥る正義にミクリは冷静に告げる。


「今バックルはあなたの中に入っているわ。でも心配しないで簡単に出せるから」

「どうするんだよ!?早く教えてくれ!」

「出てこいって念じるのよ。身体にあるときは貴方の体の一部のなんだから簡単に取り出せるわ」


ミクリの言われた通りにするとバックルは簡単に胸から出てきた。先ほどとの違いは真ん中に12と数字が刻まれている事くらいだ。


「すげえ…」


正義は正直に思った。今日起きてることはいつもの日常では考えられない事ばかりだ。

桂木の部屋に戻った正義は先ほどの興奮も覚めやまぬまま色々な質問をした。ヒーローになった経緯、この組織のこと、好きな女優は誰かなど関係ない質問までぶつけ始めミクリに止められ桂木に苦笑いされる始末だった。

幼い日から憧れていたヒーローという存在が実在して今まさに目の前にいる。それだけで幸せだった。

家に送られ帰ってきても正義の興奮は覚めていなかった。

なんせヒーローに頼まれヒーローになったのだから今夜は眠れない!…と思っていたがベッドに横になったとたん忘れていた疲れがどっと降りてきて彼はすぐ寝息をかいた。

明日彼を待ち受けている困難も知らずに…。

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