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1話 不法侵入

小説書き始めました。

よろしくお願いします。

 寒気を感じて目を覚ます、窓を閉め忘れたのだろうか。

 起きて閉めようかと思ったけれど、体が怠くて起き上がる気力が無かった。


 気付けばふかふかとした温かい毛布を抱きしめていた。

 毛先の長い毛布だが肌触りがとても良い。

 あまりの気持ちよさに頬ずりしていたが、背中に風があたって寒い。

 部屋は薄暗く、手の感触を頼りに毛布の端を探ってみるが中々見つからない。

 触る場所によって毛の感触が変わる、どこを触っても気持ちがいい。


 フゥッ…フゥッ…と息遣いのようなものが聞こえた気がしたけど風音だと思い、気にならなかった。

 そのまま手を上下に動かすと、フワフワなのに柔らかい膨らみがあった。

 超低反発クッションだろうか、指で押すと抵抗なく沈んでいく。


 触り心地の良さに思わずフニフニと指を動かす、触り心地がいい物に目がない僕には抗えない感触だ。

 ふわふわとした毛布やぬいぐるみを触り心地の良さだけで買うこともあった。

 フワフワなのにフニフニで今まで触ったことのない感触に満足感を覚える。


 空いている手でもう一度毛布の端を探してみる。

 そしてモゾモゾと動かしていると、サラサラとしているがゴムのような弾力のある太い棒に触れる。

 先端の方に手を持って行くと細く5本に分かれていた。


 サラサラとした細い棒を挟み撫でながら、ふにふにと柔らかいものを揉む。

 徐々に毛布が暖かくなり、また眠気が襲ってくる。


 この感触を楽しみながら眠りにつく途中、毛布が大きく震えた気がしたけど意識は沈んでいった。







「ふ…、ふざけるな…」


 眠気も吹き飛ぶような低い声に意識が呼び戻される、毛布喋った気がした。


「何の…つもり……説明……しろ…」


 気のせいじゃなかった、毛布だと思っていたものは毛布に包まった人だった、そして凄い息が上がってる。

 声で女性だと分かったけど、怒ってる、怒りで息切れしてる人を初めて見た。


 寝る直前の行動を思い返せば目の前の女性が怒ってる理由はすぐにわかった。

 自分の家だと思っていたのが実は他人の家で、寝ている女性の布団に潜り込みセクハラをしてる。


 この状況は非常にまずい、社会的地位など簡単に消し飛ぶ許されざる行為。

 リアル夢だなとか、透明人間になろうとか、目の前の出来事から逃げ出したくなる。

 いっそ無かったことに出来ないだろうか。


 そんな事を考えるけど現実は何も変わらない。

 この絶望的な状況を切り抜ける言い訳が思いつかない。


「すみません!触り心地が良くて撫でてしまって!」

「ほう…触り心地が良かった…のか…」

「その、この事は本当に知らなかったというか、だから、その!」

「んっ…!早く…、この手をどけろ…」


 その時になって手に指を絡ませて、胸を揉んでいることに気付いた。

 気が動転しすぎて気にしてなかった。


「私が良いと言うまで…動くな…、少しでも動いたら…敵対行動と見なす…」

「はい…」


 今まで真面目に生きてきた筈なのに、ほんの1回の出来事で人生が終わるのだと思うと泣きそうになる。


『昨夜、民家に男が押し入り、寝ている女性に対して「わいせつな行為」をしたとして近くに住むアルバイトの男が逮捕されました』


 そんな原稿を読むニュースキャスターの声が脳内で再生される。

 確実に終わった、未成年ではないから実名報道だろう。


 もう同じ場所には住んでいられない、数少ない友人の縁も切れる。

 実家に戻っても家族に泣かれ、近所からは家族共々白い目で見られるんだ。







 僕の人生は終わってしまった。

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