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妖艶な蝶。

作者: 桃色 ぴんく。

 私は今日も、彼女に見とれる。

彼女は美しい。ダンスを踊る、その動きはまるで蝶だ。そしてとても妖艶なのだ。


 小柄な身体だが、引き締まっている。タンクトップを着ていて、丸見えの腕には、ちょうどいい筋肉がついていて、とてもしなやかだ。お腹はもちろん出ていない。きっと、お腹も腹筋が割れるぐらい引き締まっているのだろうと想像してしまう。決してガリガリではなく、胸の膨らみは結構存在感がある。細身で引き締まった女性の美という表現がピッタリくるような体つきをしている。


 そして、彼女は美人だ。見た目に美しいので、ハードな振り付けで表情が歪んでも、それはそれでとても綺麗だ。私は彼女に見とれながら、あれだけの激しいダンスを踊れるなんて、彼女がまだ若いからだろうと思っていた。年齢不詳の美人だが、きっとまだ30代後半ぐらいなんじゃないかと勝手に思い込んでいた。


 彼女は、子供たちにダンスを教えている先生だ。レッスンを受ける子供の様子を見ながらも、私はいつも彼女を見ている。子供たちの前で手本を見せる彼女のダンスは相変わらずキレキレで格好いい。私も家では彼女のように踊ってみたりするのだが、どこか中途半端で、不格好だ。きっと、私が踊っている姿を他人に見られたら「何か適当なダンスだなぁ」と言われるレベルだろうと思う。彼女がいつぐらいからダンスをしているのかは知らないが、あそこまで格好良く踊れるようになるには、かなりの練習が必要だと思う。


 ある日、知り合いから彼女の年齢を聞いて、私はびっくりした。なんと彼女は50代だったのだ。しかも、お孫さんまでいるおばあちゃんだそうだ。お世辞抜きで私より年下かと思っていたから本当にびっくりした。彼女の年齢を聞いて、私はますます彼女のファンになった。


 私は、頑張っている人が大好きだ。年齢に負けず、輝いている人を見習いたい。そして、近くにそんな人がいるととても励みになる。もしかしたら、私もこの年でもまだ何か出来るんじゃないかと。そして、最近の私は何か始めるのに年齢は関係ないんじゃないかと考えるようになった。


 10代の頃、私は芸能人になりたかった。中学生の頃は作詞が趣味で、大学ノート8冊ぐらいに書き留めていた。歌うことが好きで、今でも歌唱力と歌声にはそこそこの自信はある。ただ、10代の私は、アイドルになりたかったのか、本格的なアーティストを目指していたのか、女優として演技がしたかったのか、大好きなヒムロックに会いたかったのか、はっきりしないまま劇団に入ったりしていた。

 結局、劇団に通い続けることに飽きて、私は劇団をやめ、その後は長身を生かせるモデルクラブに応募したり、20代半ばを過ぎると「この年じゃ今更アイドルも無理」と、声優のオーディションを受けたり、と、なんでも中途半端にやりたいという気持ちで過ごしてきた気がする。


 今、私は小説を書いている。作詞が趣味だった頃に、小説も少しは書いていた。原稿用紙にワープロで打った短編の作品を、中学時代の友達に読んでもらったりしていた。その時考えついた『君のために出来ること』という天使と大学生の長編恋愛物語は、中途半端に書くのをやめたまま30年ほど経ってしまった。ここでこうして小説を書くようになり、その時の作品をもう一度ちゃんと書いてみようと思い、つい最近やっと完結させることが出来た。こんな風に自分がやりたかったことをちゃんとやり遂げるのも、その後の自分の活力になるんだということもわかった。


 40代に入り、子供たちも大きくなってきて、少し自分の時間が出来てきた今、こうやって自分の好きなことをしてもいいんだな、という思いもあり、才能のカケラもない執筆活動を続けているが、身近で憧れる存在の、彼女の年齢を知り、ますます自分も頑張ろうという気になれた。


 やりたいことを年齢で諦める必要はないのだ。きっと、妖艶な蝶のように舞う彼女も、踊ることが心底大好きなのだ。そんな彼女はとても輝いていて、美しい。

 私はこれからも彼女に憧れ、その姿を見ては自分を磨き、やりたいことを続けるだろう。そんな生き方が本当の幸せなのだと私は実感している。



                     ~妖艶な蝶。(完)~

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