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精霊星の物語 ~精霊島の物語~  作者: uki yoe
第一部 精霊島の物語
41/65

ゆく星くる星 若しくはエピローグ

「貴方には、リテラに転生していただきたい」


事もあろうにカイラルプスの意識体は俺へそう告げた。

これから日本へ帰ろっかな、でもコルニアも心配だしなーと思っていた俺。

転生ってどういう事なんだ?

アレか?

死んだ後に気が付いたら、異世界で勇者になるってやつ。

前世の記憶を駆使して、主人公最高ってやつ。

――違う――

違う?

最高じゃなくて最強だ。


……あんまり変わんねーな。

って俺、その気になるなよ。

転生ってのは死んだ事が前提のはずだ。

すると俺―死んでくれ―って言われたのか?


「あの、転生ってどういう事ですか?ここに来て俺、死ねって言われたんですかね?」


冗談だろう?


「まさか、とんでもない。貴方に死んでほしいだなんて一言も言っておりません。私が申し上げたのは転生です。リテラに生きる者として、転生していただけないかと申し上げたのです」


もしもーし。

言ってんじゃねーか。

どこが違うんだよ。


「転生したら、俺はどうなるんですか?俺、本人はどうなるんです?死んでしまうって事なんじゃないですか?転生する為に俺は日本に帰れずにここで死ぬって事なんじゃないんですか?それで転生って、意識体さん、貴方俺を馬鹿にしてます?それ、どんな提案ですか」

「ああ、違います。待って、待ってください。私の言葉が足りませんでした。貴方は転生で死ぬようなことはありません。私がお願いしたのは貴方の力の方です。貴方の黄金則、その素体力のみをこの星の生命に、転生させてほしいとお願いしたのです」


俺の力の転生?

精霊王のこの力?

黄金則と呼ばれるこの力のみを転生させる?


「俺が死なずに?」


力だけを?どうやって?


「そうです。貴方が転生で死ぬ必要はありません。転生していただきたいのは貴方の力です。黄金則の貴方の力、その力をリテラに残していただきたいのです」

「そんな事が可能なんですか?」

「可能です」


リテラに転生をしておきながら、日本にも帰れると言うのか?

俺が日本へ帰る気持ちを貫きながら、リテラにも残ることが出来ると言うのか?

俺は目の前にいる精霊達に思いを寄せて考える。

リテラへ転生。

それはどのような状況なのだろう。

この子達と一緒に生きる事が可能だというのか。

もう一人の俺がいればいいような話だが、そんな事が本当に可能なのだろうか。


カイラルプスの意識体からの熱い視線を肌に感じつつ、ラーンの頭を触ろうとした手がふと止まる。


ん?

二人?

もう一人の俺?


ポコリと分かれたラーンの素体が頭をよぎる。

二つに分かれたラーン。

素体の姿から、人型に進化したラーン。

何かを閃きそうな予感。


「貴方が貴方の星へ戻られて、尚且つリテラの生命に転生する事は十分可能なのです」

「それは……どうやって?」


もしかして?


「素体の切り離しです」


やはり、そうか。

――いや、まだ閃いてなかったけど――

やはり、この素体を分離させることで、俺はリテラへ転生出来、且つ、日本へ戻る事も出来るのだ。

――いや、まだ……

や、は、り、精霊王の力を切り離せば、万事うまくいくのか。

――いや、俺なんにも閃いてなかったろう――って、そうだ!

閃いた!

自身が退化するって方法もあるんじゃないか?

退化だよ、退化。

進化の反対、退化してみるって手はどうなんだ?


「あの、退化させるって方向は?」

「ありません」


そうか。

まあ、いいや。

俺なんて、やろうと思わなくったって、いつでも退化出来る。

つい先だっても、悟ったはずの悟りがどこかへ行ったきり帰ってこない。

これを退化と言わずに何と言おう。

――劣化――

シャラップ。


お!

いい事、思いついた。


この際だ。

俺はお前を一緒に切り離してやる。

――誰?――

お・ま・え。

いつも突っ込んでくる、もう一人の俺。

ああ、俺、分かれるの簡単じゃん。

そうだよ。

俺、もう一人いるもんな。

いっつも野次…もとい、合いの手を入れて来るもう一人の俺。

生まれ持った性分。

脳内に在中する天使とも悪魔ともとれる俺。

少しでも切り離したらスッキリするだろうか?

――ほとほと俺って、自分自身に失礼だよな、なあ俺――

えーと。

素体の切り離しが俺にとってどういう事になるのか、一応聞いておこう。


「素体の切り離しって、俺の意識も一緒に切り離す事って出来ますかね?」

「もちろん!あなたの意識なしに素体を切り離すことは出来ません。素体は貴方の意識そのものとも言えます。因みに、そう……貴方が持つその黄金則の素体の力、その全てを切り離す事はしないでください。貴方にとっても、私達にとっても一番都合の良い形は、貴方のその黄金則を貴方の体にほんの一部分だけを残して、その他の力……貴方の生きる星にとって必要のない多くの力を貴方自身から切り離していただき、切り離された貴方、自我が固定された素体となった貴方をそっくりそのままリテラの生命体に転生していただく事です。その姿こそ、理想形と言えましょう」

「俺の持つ黄金則の力、素体の力全てを切り離すのではなくて、一部を残して切り離す?」

「ええ、そうです。そうして黄金則の素体の塊となった貴方は、コルニアの外界に生きる人族や獣族、エルフやドワーフといった種族の子に……リテラで生きる為の新しい肉体を持って生まれ直していただければ良いのです。ああ、もちろん、肉体を持った貴方は貴方のまま、貴方の星へ帰ることが可能です。その為に素体全てではなく、一部を貴方のこの姿に残すのです。そうしておけば、貴方はこのまま何の問題もなく、お帰りになれます。肉体に残る貴方と、素体に分離された貴方の意識は同じ貴方です。ですから…問題があるとすれば、言葉が悪いかも知れませんが……それはリテラに転生していただく方の、この星に残られる方の貴方のお気持ちのみとも言えるのかも知れません」

「転生した方の俺の人生が、リテラの今後を左右する存在になるって事か」

「そうです。それは決して平凡な人生とはならない事でしょう。それだけの力です。異星の方である貴方に、その事を強要する事は出来ません。そう簡単ではない大事な事を話させていただきました。断るも、断らないも貴方の自由です。貴方の気持ちのままに決めていただいて結構です」




ずるいな、カイラルプス。

俺の気持ちはほとんど決まっている。

それが分からないアンタじゃないだろうに。

どうするかと、頭を悩ます俺じゃない。

日本での俺とリテラでの俺。

俺は二人に分かれるよ。

どちらも俺か。

願ってもない。

悩むどころかすっきりだ。


しかし、固定された素体になるって、それ退化じゃないのか?

いや、些細な事だ。

つまらない事につっこむのはよそう。

進化だろうが、退化だろうが、どっちでもいい。

やることは決まった。

俺は喜んで分かれよう。

リテラに生きる俺と地球に生きる俺。

凄い事じゃないか。

わくわくして来るぞ。


「残っていただけるのですか?」

「へへ、残りますよ。転生しますよ。俺はここへ残れるものなら残りたかったんですから」


気配を変えず、うなずくカイラルプスの意識体。


「ならば、私のこの役目も終わりが近づきましたね」

「……」


重たっ。

やっべ、安請け合いしてしまったか?

否、今の俺の気持ちに後悔はない。

全部ひっくるめて、引き受けてやる。


「やばくなったら、トンずらするくらいの覚悟だけどな」


正真正銘、素の気持ち。

そのくらいの気持ちでいいだろう?


「はははははは……構いません。まったく構いません。ありがとうユーキ。貴方の力が残っていただけるという事だけで、この星の運命は大きく変わるのです。ありがとう。貴方の気持ちに感謝します。貴方の力はリテラにおいて、無敵です。やばくなったら私達、歴代精霊王の力が全力で貴方を護る事でしょう。安心してください」


無敵?

すげぇな。

ま、アキレスの踵って話もあるし、話は半分くらいに聞いておこう。


「よし、それじゃあ俺はどうすればいいんでしょう?」

「そうですね。まず、体にある素体の分離をしていただく必要があります」

「分離?」

「ええ、分離です。少しを体内に残して、わかれてみてください」

「分かりました。やってみます」


俺は自分の体の中心付近にある、各色の素体を意識する。

俺自身の中心付近にある素体。

中心の一層とさらに奥にあるもの、それら中心にあるものよりも一回り外側にあるもの。

黄金則のその力。

その力の源を二つに分けようと精神を研ぎ澄ます。

日本へ帰る俺用素体は、コルニアで初めて感じた時くらいの大きさがいいだろう。

ざっくり、ざっくり切っていく。

そんな感覚


よし、こんなもんかな?


火属性=火炎素 かえんそ

氷属性=氷零素 ひょうれいそ

風属性=風力素 ふうりょくそ

土属性=土石素 どせきそ

雷属性=雷磁素 らいじそ

水属性=水素  すいそ


闇属性=闇黒素 あんこくそ

光属性=光素  こうそ


空属性=空間素 くうかんそ

時属性=時間素 じかんそ

音属性=音素  おんそ


11属性、11素体。


黄金則と呼ばれる俺の力。

巨大と極小、二つに分離された俺の中の素体。

だが、この時点で分離されたそれぞれの素体に、別人格の俺は感じられない。

この素体力に、俺の意識が固定される?

本当?

今は全く感じない別人格。

実際に分かれるのであろう、もう一人の俺。


「次に、リテラへ転生させる方の力を体内から放出します。体内から出した瞬間、そこには分かれたもう一つの意識が存在するはずです。やってみてください」


意識体に促され、恐る恐る体外へ放出してみる。

と……。


出ました。

出ましたよ。

俺。


肉体の方の俺と素体の塊の方の俺。


「俺か?」

「俺だ」


本当に分かれたらしい、俺の意識。

リテラ側に転生する事になる、もう一人の俺。


「貴方の方に、黄金則は残してありますね?」


肉体の方の俺に話しかける意識体。


「はいっ。残っています。ここを通って来た時と同じくらい残しました」

「結構です。少しでも残しておけばその力は貴方が亡くなるまで、貴方の体内に残ります。もとより貴方が生まれ持った力です。貴方の星では無用かも知れませんが、今は、この回廊の力を利用するのに必要です。それで宜しいでしょう。では、貴方の方はどうでしょう。何か問題を感じますか?」


意識体はもう一人の人格を有する俺へ問いかける。

フヨッた素体のもう一人の俺。


「全く問題ありません。って言うか、コレ本当に浮ぞ!!凄いなコレ」


はしゃいでやがる。

微妙に恥ずかしいな。

頼む。

大人しくしてくれ。


「感じる限り、大丈夫のようですね。では……肉体を持たれているユーキ、貴方はこのままこの空間回廊をお進みくだされば、元の世界へ戻れます。場所はこちらへいらした時と同じ場所のはずです。ただ、出られる時に、いつの時間に出たいのかは意識しといてください。そうすれば何の問題もなく、あなたの世界へ戻れます。貴方の人生の時間軸に戻るのです。貴方のこれまでの人生の流れに全くの支障は出ないでしょう。ただ、こちらでの記憶や、こちらで受けた肉体の傷などは残る事になりますが、そればかりは申し訳ありません。何ともしようがありません」


「おい、俺」

「なんだよ」

「俺の分も墓参りに行けよ」

「分かっているよ。それよりお前だよ。あんまり恥ずかしい人生送るなよ」

「ああ、分かってるよ。ま、どうにかなるだろう?」


ああ、俺だ。

間違いなく、俺がいる。

このまま日本へ帰る俺と帰らない俺。

リテラへ転生する俺と、リテラを去る俺。

どちらも俺だ。


『がんばれよ』

『お互いにな』


自然と湧き出る笑み。

よし。

後は任せた。

此方は任せろ。


湿っぽいサヨナラはいらんだろう。


「じゃあ、行くな」

「おう」

「待って、この場が貴方方の今生の別れになるかも知れません。よろしいのですね?」


『かまわないさ』


どの世界で生きようが俺は俺。

俺はぶれても俺は俺。


俺は俺を信じる。

信じられなかった俺を信じる。

ガムシャラに生きようとした家族を信じる。

これまで出会った人々の苦難を信じる。

これまで生きてきた俺の覚悟を信じる。


俺はもう逃げない。


命を懸けよう。

俺は俺。

どこまで行っても俺は俺。

恥ずかしくてもいい。

地面に這いつくばってもいい。

間違ってもいい。

俺は俺。


後は俺を信じよう。

それしかない。

だから、構わない。


そうだろう?もう一人の俺よ。

俺は行く。

俺の人生を。

ただ、歩いていけばいい。

人としての人生を。


「カイラルプス、俺、行くわ。貴方達とはもう会う事はないだろうけど。楽しかったよ。後の事はそっちの俺に任せるよ」

「分かりました。では、この空間を真っ直ぐお進みください。このまま真っ直ぐです。よそ見はしないで。貴方の世界が待っています」


このまま真っ直ぐだな。

俺は颯爽と歩きかけ、ふとある事を思い出す。


「そうだ、この枝棒。お前に渡しておいた方がいいのかな」

「ん?世界樹の枝か……んー、ぅん?そうか?……そうだな、そっちに持って行っても取り出せないか。わかった。確かにそれは俺が持っていた方が良さそうだ」


俺は枝棒とその他一式を空間から取り出すと、もう一人の俺へ譲渡した。

そうだ、もう一つ、しておきたい事を思い出した。

しておきたい事。

コレ、こいつはどう思うかな?

俺は俺を様子見る。


「仕方ねーな。いいんじゃねーの」


さすが俺。

分かってらっしゃる。

俺は笑顔で精霊達の前へ進み出ると、手を伸ばしてそっと大事そうに抱き上げた。

可愛い、精霊達。


「さようなら」


サフィ。

ラーン。

テネア。

バビ。


俺はそれぞれの精霊達にそっと口づけをして別れを告げた。


良し。

我がコルニアに、一片の悔いなし。

いざ、さらば。


俺は黙って歩き出す。

コルニアでの記憶に封印をかけながら歩き出す。

日本へ向かって歩き出す。

出口はもうすぐ、すぐそこに。

よそ見はしないで、歩いていくぞ。

新しい俺の人生。

夜明けの時間にはまだ少しあったはず。

俺はやるぞぉ。

リアルの人生よ。

待っていろ。

俺は今すぐ、そこに行くからな。




そうして俺は日本へ帰る。

これまでの人生に向き合う為に。

来た道を歩いて帰るのだ。


真っ暗な闇が広がる森の中。

森の木々が梢を揺らす。

黄金則は働かない。

見えてくるのは俺のリアル。

それがいい。


ここから先。

日本へ帰ってからの俺の人生はまた別の話。

リテラへ転生したもう一人の俺の人生もまた、別の話。


その後の話はまたいつか。

いつかどこかで語られる。


精霊星の物語 ~精霊島の物語~

第一部 Fin

第一部完です。

この物語はこれで一応のめどをつけたつもりです。

ここまで、本当に楽しく書かせていただきました。

この場を借りて、御礼申し上げます。

ここまでお読みいただきまして、ありがとうございました。


さて、今後の話ですが、日本へ戻ったユーキの物語、一応ありますがたぶん書きません。読みたい人がいない気がします。


リテラに残った方の物語は、続きが出来次第ゆっくりとupしていきます。

ただ、続きの話は恐らく、残虐なシーンや大人のシーンが出て来る事となるでしょう。

抵抗のある方はここでお止めになってください。

分類の登録ワードも変えざるを得ないと思っています。


一応、次回話以降の内容を予告しておきます。

次回話は日本へ帰った側でない方の、分離した時点の視点から始まります。

そして、転生。

(困った事に、主人公の名前が変わる事になりそうです)

さらに、幼年期を経て、学園編へ。


次回UPまで少し、お時間をいただきます。

精霊達の活躍もこれからですし、面白くなるといいのですが……。

それでは、また近いうちにお会いできる日を楽しみに、さようなら。

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