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精霊星の物語 ~精霊島の物語~  作者: uki yoe
第一部 精霊島の物語
39/65

点と点

カイラルプスの意識体は核心部分に触れる前に、不快な思いをさせてしまった事を俺に詫びた。

だが、俺は不快ではない。

全く不快ではない。

それよりも、死して尚精神が不安定になる、意識体カイラルプスの状態が心配だ。

話の途中で消えてくれるなよ、意識体。




「私はコルニアに時空間結界を張ったことで、私自身の力のほぼ全てを使い果たしました。その結果が今日、貴方がここにいる理由でもあるのです」


カイラルプスの意識体は精神を落ち着かせ、それまでと同じような感覚で語りだす。


そうだったな。

カイラルプスはコルニアの周りに結界を張り、力が尽きた。それはカイラルプス当人の力そのものだった。

そういう事だった。

それだけに虚無の力は強大だった。

そういう事で合っていたな?

だが、それが俺の今日とどう関わって来たのか。

これまでは、それが一向に分からなかった。

俺の最も知りたい疑問。

俺がコルニアへ来た理由。

それに付随する様々な要因。


「そう。貴方がここへ来ることになった理由です。私は私の力を失いました。私が持っていた精霊王の力、黄金則をなくしたのです。黄金則を失えば、歴代の王からの力を利用し続ける事が出来なくなります」

「ちょ、ちょっと、ちょっと待ってください」


あわてて口をはさむ俺。


「そもそも、黄金則の力って無くなるものなんですか?失ったって……この力って、使ったら無くなってしまうものなんですか?」

「いいえなくなりません。本来ならば黄金則は寿命が来るその時まで、私の中にある物でした。ですが、時空間結界を張り続ける私、カイラルプスには分かってしまったのです」


――分かった――だと?


「……何が…分かったのです?」

「虚無の力が、私の寿命を遥かに超えて……私の命が幾つあっても足りない程の時代の壁を超えて、このコルニアに影響を与え続けるであろう事をです。私には寿命がありました。精霊王とはいえ、私の命にも限りがあったのです。私の種族は滅び、もう私を残しては誰もこの星にはおりませんでした。けれど、私の力を使えば精霊は、世界樹は、生き延びるのです……精霊王はこの命が尽きようとも、コルニアは護らなければならない。私は精霊を産む世界樹を護らなければならないと判断したのです」

「それで、結界を張ったと?」

「ええ……私はコルニアを護る結界を私の死後も張り続けるよう、結界の力をそのままに、恒久的に結界のみを持続させるように特化させた黄金則を私自身の体から切り離しました。そうして、私自身が建てた私の墓標に封じたのです」

「その為に貴方は貴方の力を失う事になった……」

「そうです」


ああ、だからか?レスリーがコルニアへ舞い降りた時、カイラルプスの意識体が出迎えたのは。


「白銀龍と対話をした貴方は、その時切り離された貴方の黄金則だったのですか?」

「そうです。ですが、アレももう限界が来ています。私が切り離した私の力はもう限界を迎えています。もう無理なのです」


――カイラルプスの結界が緩んでいる――

白銀龍レスカリウスはそう言っていた。

これほどまでにコルニアを護り続けてきたカイラルプスの時空間結界。

確かに、あの結界は緩みつつあったのだ。

――コルニアの最悪の事態はまだ暫く先の話――

レスリーはそうとも言っていた。


「リテラの世界樹……」

「……はい?」

「世界樹を育て、管理する者が精霊王でした」

「はい」

「世界樹は長い時間をかけて、新しい芽を息吹かせます。精霊王はその手助けをし、増やす事の出来る唯一の者でした。それは星の意志であったかも知れません。ですが、精霊王はいなくなってしまったのです」


世界樹林のあるコルニアに訪れる最悪の事態。

精霊王がいなければコルニアの滅びは…後世、必然と言われてしまうのだろう。

6000万年前、精霊人が滅んだ時の事が必然だったと言われるように……。


「コルニアで生き残った精霊達は、精霊王がいなければいずれ緑のリテラが滅ぶ事実を知っていました。そして、時属性、空属性を司る大精霊が未来を視たのです。」


どんな、未来を?



――精霊王が現れる――

――だが、それは遠い遠い先の未来――

――もしかしたら、その引き継ぎ者はリテラの者ではないかもしれない――

――遠い遠い遥かに遠い、先の未来――

――無窮の先のその先に――

――緑の星は蘇る――



「世界樹が滅びれば、精霊も滅ぶ。精霊王がいなければ世界樹は滅びる。精霊が滅びれは、リテラ本来の生態系も又、滅ぶのです。未来を視て来た精霊達の決断はとても、とても早かった。次なる精霊王を呼ぶ為に、一分一秒も待っていませんでした。彼らはあっと言う間にこの空間を創り、私が止める間もなく、この空間を維持する為のエネルギーへと転換していきました。リテラと貴方の星を結んだ超長距離時空間回廊。これは数千万年前、貴方をコルニアに呼ぶ為だけに、彼等によって創りあげられたものなのです」


まさか、この空間にカイラルプスは関与していない?

――止める間もなく――って。

まさか。

意識せず、小刻みに震えだす俺の体。


「こ、この空間は、この空間は貴方の力が基本となって……貴方が精霊達を素材として創り上げたモノなんじゃ……」

「私ではありません。この時空間回廊を創ったのは私、カイラルプスではありません。コルニアに残った全ての精霊達が、自発的にこの空間を創ったのです。新しき精霊王である貴方を見つける為に、貴方に出会う為に、貴方を呼ぶ為に、このリテラを救ってもらう為に……この空間は彼らの尊い自己犠牲によって創られたのです」

「なっ!!」


なんと言う事!

へなへなと座り込む、俺。

この空間が本当に精霊達の命で創られた空間だったとは。

いやそれは分かっていた。

だが、その生成が精霊達の自主的・自発的なものだったとは。

俺の為だけに創られた、俺を探し出し、コルニアへ連れてくる為の時空間魔法。

この超長距離時空間結界は全宇宙から、精霊王の力を引き継ぐ黄金則の波長を持っている人物を永遠とも呼べる時間、探し求め続けていた。

その為だけに、精霊達の命を懸けて作られた時空間回廊。




既に力を切り離したカイラルプスに、そんな超長距離・時空間回廊を創る力は残っていなかった。

精霊達は新しい精霊王を迎えるために、自主的に時空間回廊へとその素体を変化させた。

そのスピードはあまりに早かった。

コルニアにいた大精霊を含む、全ての精霊がこの結界回廊の創生に、自発的に体を張ったのだ。

精霊達は自ら進んで、この回廊そのものになったのだ。


望んで尋ねた話の核心。

その答え。


俺は時を止め活動を止めた、バビをサフィ―をテネアをラーンを抱きしめる。

俺を慕ってくれた、俺の可愛い精霊達よ。

本当はもっと沢山いたんだ。

精霊達はもっと一杯、お前達の仲間はもっと一杯、コルニアにいたんだ。

それなのに……。


「俺はおまえ達の仲間の命……命を……」


そして……。

そして、コルニアに1人、永遠とも言える時間を、死してなお超えてきたカイラルプス。


点と点とが結びつく。


――王様はね、意識体となってコルニアにいたんだよ――

――私達が生まれる前から、ずっと前から待っていた――

――王様は思念が消えるまでずーっと、ずーっと、待っていたのです――


――王は我を見て嬉しそうだった。意識体となっても尚、この大地を永遠と見守り続けてきたのだ。6000万年誰も越えようとせなんだ時空間結界の壁を初めて超えてきた我を見た時、それは、実に嬉しそうな顔をしていた――


どいつもこいつも、こいつらは……こいつらは……。

溢れ出る気持ちが止められない。


「ぁ、ああ……あああ……あ、あ、ああああああああ………………」


どれほど……。

どれほど望まれて、俺はリテラに来ていたのか。

どれほどまでに待ち焦がれ、俺はコルニアに来ていたのか。

どれほどまでの長い時間、精霊達は、カイラルプスは、俺を待っていたのか。

心の奥の深いところから込み上げる、涙を伴う悲しみ。


俺の慟哭が空しく響く。


「貴方は精霊王の引き継ぎが出来る波長、黄金則の持ち主だったのです。私は待っていました……長い、永い年月を待っていました。貴方にお逢いしたかった。新しき精霊王、私の後継者たるべき存在……異界の人よ」


何故、どうして俺が全ての属性を持つ黄金則の力の素を持っていたのか分からない。

けれど、精霊達が創ったこの時空間回廊は遠く離れた宇宙の果てに、とうとう俺を見つけたのだ。

カイラルプスの意識体は、泣き続ける俺に言う。


「赤子であった貴方を見つけた後、時空間回廊は1つの道を確立させるための準備に入りました。その為に時空間回廊は、貴方を見つけた後、貴方の星の時間で20数年、貴方をこちらに呼ぶのに時間がかかっていました。回廊の準備と貴方の力が弱まるタイミングが必要だったのでしょう。貴方の星から、コルニアへの道を開けたのはこの回廊の持つ力でした。そうして貴方はコルニアへいらしたのです」



――――――――――――――




次回サブタイトル予告です。

~力の継承~

お楽しみに。

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