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精霊星の物語 ~精霊島の物語~  作者: uki yoe
第一部 精霊島の物語
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精霊王カイラルプスの意識体

「貴方にお逢いしたかった。新しき精霊王、私の後継者たるべき存在……異界の人よ」


凛々と頭に響く意識体の声。

と同時に、この空間を支配する気が重たくなるようなプレッシャーが多少薄まっていくのを肌で感じる俺。

この感じであれば、精霊達への負担も随分楽になるだろう。

そう思ってサフィ―達を眺めてみれば?

何だ!?

精霊達の動きがまるで時間を止められたかのように、その動きを止めている。

あの姦しいとも、うっとうしいとも取ることの出来た可愛らしい精霊達。

その彼女達がピクリとも動かず、ただそこに存在(ある)のみ。

こ、これは……。


「大丈夫です。安心なさい。この子達は大丈夫」


再び聞こえる意識体の声。

俺は精霊達の身を案じつつも、さしたる疑問を抱きもせず声の主を確認する。

まだ確実な姿を定まらせない、その気配から推察される声の主。


「貴方は……精霊王カイラルプス……ですよね」

「はい、私はカイラルプス……かつてこの星リテラにおいて繁栄を築いた精霊人、最後の王。精霊王カイラルプスと呼ばれたその者の意識体。異星の人よ、如何にも私はカイラルプスであると言えましょう。ですが、正確には私はカイラルプス本人ではありません。本人が精霊晶に封じ込めた肉体を持たぬ意識体にすぎません。私はあなたに会う為だけに眠り続けてきました。かつてこの星で精霊王と呼ばれた一人の男の切なる願い。それが私なのです」


カイラルプスの意識体。

やはりそうなのだ。

目の前にいるこの意識・意識体はかつて、コルニアを悪災から守り抜いたカイラルプス本人のモノなのだ。

これは、千載一遇のチャンスかも知れない。

あらゆる疑問を聞かせてもらうチャンスかも知れない。


カイラルプスは続ける。


「私はしばらく前より、貴方の中で、貴方の行動をみておりました。ですが、私がこの形を得るほどまでに、貴方はご自身の力を使おうとはされませんでした。……私は、実に歯がゆい思いをしていましたよ」


エート、いきなり文句を言われても……そんな事……。

だが、まて、落ち着け。

格上の存在に反論して機嫌を損ねてもマズイだろう……ここは穏便に、建設的に……だ。


「知らなかったんです。貴方が俺の中にいたなんて……知っていたならもっと早く貴方の姿を拝んでいました」

「ええ、そうですね。私は貴方を長い長い時間、待ち続けていたのです。このくらいの時間など、それを思えば造作もない事……」


そこまで言うと、カイラルプスの意識体のソレは、はっきりとした輪郭を結び、深々と息を吐くと、今度は逆に大きく息を吸い込んだように俺には見えた。


意識体と言う割に、普通の人間と変わらない仕草。

だが、人ではない。

一番の違いは目だ。

この意識体の顔には目が3つある。

その他の見た目は俺とそう変わりはないようだが……。

額の中心に見えるもう一つの目。

結構気になるぞ。

絆創膏でその目を閉じてやりたい。


そう思いながら、どこかしらの違和感と、気分の悪さに頭を振る。


駄目だ。

居心地が悪い。

この空間のせいだろうか?

ココへ来た時のトラウマなのだろうか?

気分が落ち着かない。

久しぶりに人型の他人と話をするからか?

なんだか俺、この状況についていけていない気がする。

この空間の気配に、若しくはカイラルプスの意識体に、俺の気持ちが呑まれている?

大丈夫か?この状況。


「王様、すみません。コレ、この子達は本当にこの状態で大丈夫なのでしょうか。時が止まったかのように動いていないんですけど」


ラーン達をダシにして、落ち着かない気分を悟られないように振る舞う俺。


「ええ、大丈夫です。逆に、こうしておかなければこの子達の身は安全ではありません。こうしておかなければならないのです」

「へ?……どうして?」


思いがけない返答。


「この時空間結界の回廊……貴方の命名したこの回廊ですね……これはもともとコルニアにいた全ての精霊達によって、彼らの献身的な自己犠牲によって創られたものでした。この回廊はコルニアの精霊達そのもののエネルギーで創られています。そして、この回廊に飛び込んだこの子達の力は、この回廊の存在と維持の為に吸収されようとしていました。この回廊に取り込まれようとしていたのです。ですからこの子達の活動を一時の間、私が止めました。そうしなければ、この子達はこの回廊の一部となってしまう事でしょう」


ガツンと頭を殴られたように目を見開く俺。


「この超長距離・時空間回廊が精霊達の存在で創り上げられた?」

「はい。リテラと貴方の星を結んだ超長距離型時空間回廊。これは数千万年前、新しい精霊王をコルニアに呼び込む為だけに、彼等によって創られました。虚無による悪災から逃れる事の出来たコルニアに残る全ての精霊素体。彼等の持つ全ての力を用いて、この回廊は創られたのです。当時、コルニアにいた全ての精霊体……彼等は貴方を呼ぶこの回廊を維持させる事の為だけに、その身を投じました。この場所は精霊達のエネルギーで創りあげられているのです。貴方の元に駆けつけたここにいるサフィ、ラーン、テネア、バビ。この子達の存在は何の防護もしなければ、この回廊に新たなエネルギー体として認知されてしまいます。この子達の活動はこの空間にとって新たなエネルギーの塊に見えていた事でしょう。この子達はあなたの力で守られていたからこそ、この回廊の中で自我を保てていたのです」


過去のコルニアにいた、全ての精霊によって生成された特殊な魔法。

まるで、意志を持っているかのように突如現れた時空間回廊。

俺を日本とコルニアをつないだ1本の道。


「ですが、本来この回廊に新たなエネルギーはもう必要なかったのです。貴方は今、ここにいるのですから……。長い、永い時間をかけて、この回廊は役目を果たしました。新しく生まれてきたこの子達の生素体活動は、この子達のモノなのです。意識体である私は残る一瞬の力を用いて、この子達の素体エネルギーを凍結させました。大丈夫、安心なさい。この子達の状態を貴方にも、私にも、誰の迷惑も掛からないようにしたのです。この子達は大丈夫です。」 


――貴方との対話が終われば、この子達も元の活動場所へ戻る事でしょう――


カイラルプスはそう告げた。




だが、その話を聞いて、交錯する俺の思い。


ここに来て込み上げた不安感。

圧力ともとれた大きな力、居心地の悪さ。

こちら側へ入った瞬間に感じた、この空間を取り巻くプレッシャー。

とても安心などしていられない、焦燥感にも似ためまい感。


「こ、これ……この空間を取り巻くもの全てが、6000万年前にコルニアにいた、悪災を免れたはずの精霊達の姿だって言うんですか…そんな……そんな馬鹿な……」


俺の中に込み上げ、膨れ上がる、吐き気とも、畏れとも取れる複雑な感情。


俺が入るときに触れた、あの波打つ壁の表面。

俺が立っているこの仄暗い床。

俺の周囲360度に展開される回廊空間。

これが元はラーンやバビ達と同じ、生きていた精霊達だったというのか?


「…なんで……なんで……なんでそんな事を…何の為に……一体、どれほどの精霊達がこの回廊の為に犠牲になったんだ。それほどまでの事なのか、たった1人、俺1人をコルニアへ連れて来る為に……お、俺は、俺は一体どれほどの犠牲の上に呼び寄せられたんだ」


精霊達は応えない。

超長距離時空間回廊はただ、ただそこにある。


過去とも、未来ともつかぬ時のたゆたう場所で、俺に対峙するカイラルプスの意識体。


「貴方の尤もな疑問にお答えするには精霊と精霊人、世界樹と精霊王、そして黄金則の話をせねばなりません。話は長くなりますが、貴方にはこの話を聞いていただかねばならないでしょう。そう。貴方にこの事を語る事は私の責務でもありました。聞いていただけますか?」


俺に否定する理由はない。


「1つの種が滅びた話です。つらい話になるかも知れません」


精霊王の意識体は小さな声で伝えると、遠い、遠い、遥か昔の出来事を俺に向かって話し始めた。

それはかつての星の支配者、精霊人の事と、当時の精霊達が取った驚きの行動の事だった。


かつて、6000万年前に栄えてた1つの種族、リテラの全ての場所に居を構え、つつましやかな生活を営んでいた平和な種族。

その種族・精霊人。

そして、その種族と供にあった精霊達。

カイラルプスの意識体は、彼らが確かに存在していた証を立てるかのように、過去、栄華を極めた精霊人の話をし始めた。



―――――――――――――――




次回サブタイトル予告です。

~独白~

お楽しみに。


そろそろこの物語に、一つの区切りが見えてきました。

ここまでお読みいただいた皆様に、感謝です。

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