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精霊星の物語 ~精霊島の物語~  作者: uki yoe
第一部 精霊島の物語
32/65

ラーンとドキドキ

「ユーキの力、強いのですね。私の素体が変化したのは、やはりユーキの素体のせいなのです」


妄想に、いや決意に浸っていた俺に、ラーンの言葉が耳に入る。

そういえば、俺の体は白銀龍レスカリウスのように時空間素の色で染め上っている。

俺のこの素体力が、ラーンの素体に影響を及ぼした?

だから、ラーンも俺と一緒に過去のコルニアへ来ることが出来たのか?


ふと思う。


まずいぞ。

この力は大きすぎないか。


このタイミングが俺とバビの出会いの時間であれば、今の俺の存在は、過去の俺にとって何らかの障害になるかも知れない。

黄金則の力が高まっている今の俺の状態は、過去の俺がこれからとるであろう行動に、なんらかの疑問を生じさせる事にもなりかねない。

どうしよう。

あの時の俺が感じたこの場所にいたはずの、俺の素体力のイメージを思い出す。

あの時の素体力の感じ方は今の俺の状態からすると、もっと、もっと、限りなくもっと……小さく、小さく抑え込まれていなければならないはずだ。

このまま一気にあの時の感覚で感じた力の大きさまで、素体の力を下げてやる必要がある。

俺は、体の中心にある各素体の力を増やす方向とは真逆の感覚で、己の素体力を減らす方向で探りを入れてみる。


く、こりゃあ難しい。

ほとんど小さくならない。

素体の力を大きくする分には慣れて来ていたが、小さくするのは初めだ。

素体の力を小さくするにも大きくするにも、感覚的にやる事は同じなのだろうか?

素体の力を増やそうとする感覚で取り組まないと、素体には変化すら起きてこない。

なかなか小さくさせられない。

一度大きくなってしまった力は、ある程度以上に小さくはならないのか?

大きくはなるが、小さくさせるには打ち止め感がある。

どう頑張ってもこれ以上は小さくならない。


むう。

どないする。


「ラーンやばい。この力、小さくしたいのだけれど、どうしたらいいだろう」


俺の存在を小さくしたい。

ラーンに力を小さくする理由を伝えると、ラーンは思いがけない答えを返して来た。


「ユーキ、それには封印が一番です」




封印。

力のあるモノを封じ込める為に、若しくは弱める為に施すもの。

それが封印。

封印ってなんか怖いイメージがあるのだけれど……封印しちゃう?

不安だぞ。


「大丈夫ですユーキ。封印で大きな力を完全にを封じ込める事は出来ません。特にユーキの黄金則はたとえ封印出来たとしても、完全に抑える事は不可能なはずなのです」

「でも、そうしたら、俺達は元の時代に戻れなくなるんじゃないか?」

「それも大丈夫です。お忘れですか?ユーキには空間魔法があるのです。大きな魔法を使う時は別空間へ入ってから行えばいいのです。大きな力を使いたい時は封印を解くのです。封印を解く時は、ユーキの創った新しい別空間で行うのです。ね。心配しなくていいのです」


なるほど、なるほど。

素晴らしい。

ラーンて、他の精霊達と違うよね。

なんか、お姉ちゃんって感じがする。

姐御じゃないよ。

お姉ちゃん。


では、お姉ちゃんの言う事を信じて、封印とやらをやってみる事にしよう。

俺自身の精霊力。

黄金則と呼ばれる力の封印をする。

これまで俺は、レスリー達から色々なアドバイスを受けてきた。

たかが、俺一人の力の封印だ。

俺一人の知恵と能力で何とかしよう。

してみせる。

これまでの流れで学んだ、精霊力の使い方を今こそ発揮してみせよう。


俺は体の中で、各素体の色が並んでいる順番をイメージする。

内側から外側へ、外側から内側へ並ぶ各素体。

それらの素体にそれぞれ封印式を構築していく。

式と言っても俺の式は単なるイメージだ。

各素体の色に鍵穴をつけ、カギを回していく感じ。

水道の蛇口に栓を付け、その栓を閉めていく感じ。


――知恵ってそういうもんか?――

ほっとけ。


どちらのイメージが封印の形に近いのか良くわからなかったが、どちらも俺の力を弱めていく結果にはなった。

素体の力を締めるとか、閉めるといった感じで、力を抑制させていく。

結果的にこれが力の封印と言う事になればいい。

締め終わった俺の素体。

観察すると、各素体から滲み出る波長が弱くなっているのが分かる。

コルニアに来て、初めて素体に各色をあてがった時の状態に似ている。

俺の感じている身体的な感覚で言うと、片目を閉じて世界を見ているようなそんな感じ。

これなら俺の素体力の存在は、だいぶ小さく見えている事だろう。

少しホッとして、助かったという気持ちが強くなる。


ラーンにお礼を言わなければならない。

ラーンはどこ?

ラーンを見ようと目で探していたら、ふよふよしたラーンがふっと寄ってチュってして来た。


俺の頬にチュ。

?!

チュウされた。

されたと思った。

なんか今、何かが頬に触れた。

形を感じた。

明らかに何かが俺の頬に当たった。

ラーンの唇?だったのか?

フヨフヨしているラーンが俺の目の前にいる。

ふよふよ……のはずのラーン?

もやもやの中に何か人型が見え隠れしている。

ラーン?

何が起きている?

人型の輪郭がはっきりしてくる。


「ユーキ、私ラーンです。どうでしょうか」


俺の目の前に藍白色の後光を纏った、超がつく美人ちゃんが現れた。


ラーン、キタァーーーーー。


――そして俺は、ほんの少しだけ、この世界に留まってみようと――

って思わねえよ。

思わないんだけれど……。



―――――――――――――――



ドキドキ感が止まらない。

なあ、ダチ公。

ものは相談なんだが、目の前に超絶美人の女の子(裸)がいたとして、俺に何かの選択権はあるのだろうか。


例えば手を伸ばして、近くへ寄せるとか……。


例えばその手に触るとか。

例えば髪の毛を触って遊んでみるとか。

例えばホッペをつまんでみるとか。

手を握ってみるとか。

ハグするとか。

首元に顔を埋めてみるとか。

髪の毛の匂いを嗅ぐとか。

キスしてみるとか。

頬ずりしてみるとか。

お馬さんになってみるとか。

生足に踏まれてみるとか。

もっとすごい事をしちゃうとか。


――後半、アウト――

いや、俺は決してヤマシイ気持ちで思っているんじゃあない。

正真正銘、純粋なピュアな気持ちで思っているんだ。

けっして後ろ指刺されるような気持ちでは……。

――性癖は治らない――

ちくしょー。

マッパのラーンを目の前に、俺、どうすりゃいいんだ。

テネアの時は周りにレスリーがいたし、俺も状況が掴めていなかったからスルーしていたが、ココ…これ、この状況はどうなのよ。

何、このプレイ。

俺を貶めようとする影のボスがどこかに潜んでいるのか?

ラーンから目を離そうとしているのに、目が吸い付いて離れない。


「ユーキ?私、ドコか変ですか?」

「へ、変じゃない、全然変じゃない、というより、ラーンちょっと服着てェ!目のやり場に困るよー」


俺はどこまでいっても俺だった。

――バカだなあ。何、いい恰好しいしているんだ――

だってよ、俺、DTじゃん。

DTね。

知ってるよ。

ヘタレで結構。

ドーテー万歳。

武士は食わねど高楊枝。

(意味:ぶっちゃけ、やせ我慢。食べてもいないのに、如何にも食べたかのように楊枝を使う様)


――据え膳食わぬは男の恥ってことわざもあるぞ(意味:とりあえず食っとけ)――

喝!!

喝だ喝!!

黙ってろ。

黒幕め、俺は犯罪者にはならないぞ。

――頭の中じゃ前科100犯くらいあるけどな――

ああ、それはそう……ってか、ぜろ1、2個少なくね?

あんな事やこんな事は、頭の中でも出来るのだ。

リアルでやるなら、あんな事やこんな事を許してくれる同世代の女性がいい!

それまで我慢。


――ぱちぱちパチパチ――

天使の俺が拍手する。

――天晴(あっぱれ)ステッカーを差し上げよう。俺も随分大人になったものだ――


ふん。

いつまでも立ち止まっている俺じゃないのさ。

日本へ帰って彼女を作るという、夢を持った今の俺は強いのだ。




煩悩に呑まれつつもさらにその上のステージへ上がるべく、俺はここへ来た事の目的を思い出す。

もうすぐ始まるはずの出来事を思い出す。


俺は白銀龍のいない白銀龍の住処から、遠くビボック山の三連山を眺めやる。

山の向こうに広がる世界樹林のある辺り。

その辺りから、生き物たちのざわめきが感じられる。

世界樹林の覚醒。

始まったか。

バビママを中心とした世界樹特有の土石素の力。


「始まるな」

「ユーキ忘れていました。私を異空間で断絶するのです。ユーキの力を隠すだけでは片手落ちなのです」

「ああ、そうか…そうだね…」


ちょっとドキドキしながら、ラーンをちら見。

あ、ちゃんと服っぽい物で隠してる。

服着てても、ドキドキ感は止まらない。

だって、マッパよりエロい恰好をしている。

乙。

いや、いや、煩悩退散。

チラチラ見ながら、考える。

今の状況を考える。

――考えろ――

もうすぐ土石素の爆発が始まるぞ。

やばい、押してきた。

急げ。


「えっと、空間魔法でラーンの周りを断絶してしまって、ラーンはそれで大丈夫かな」

「私は水の精霊ですよ。大丈夫」


そっか。


「じゃあ、ラーン違和感を感じたら教えてね」


と、少し急いでラーンの周りに大きめの遮蔽壁で出来た立方体を展開させる。

亜空間や単なる断絶空間の展開だと、周りが見えないのではと思ったのだ。

空間遮蔽の要領でラーンの周りを覆ってしまえば、空間を断絶させたことにならないだろうか。

どうかな?


『ラーン?聞こえる』

『聞こえますよユーキ、とても快適です。一緒に入りますか?』


笑いながらのやり取りに、俺は少しばかりの心の余裕を感じながら、空間魔法で遮蔽させたばかりのその空間に手を止める。

ラーンの存在を隠すためにこしらえたこの空間遮蔽。

希望どおりにうまく事は運ぶだろうか?と思う気持ちともう一つ胸に湧いた何か一瞬の気づき。

それが何だったのか言葉に表すことができない。

喉にまで出かかったのだが、この空間遮蔽に何を閃き、何を感じたのか、俺の脳内で画像を結ばない。

ヒントはこの空間遮蔽と時空間転移のはずだ。

時空間転移とこの空間遮蔽で何かのヒントになるような大河の一滴感を感じたのだが、それが何だったのか……。


『ユーキ!ほら見てください、始まるようです』


もやもやした俺の気持ちを振り払うかのように、ラーンの鋭い声が俺に飛ぶ。

ラーンが指を指す先。

仰ぎ見る山並みの向こうから土石素の奔流が見えてくる。

山を越え、空を覆い、どんどんと土石素の色が広がっていく。

常盤色の奔流。

世界樹林の精気が込められた土石素の波動。


そして、あっという間に俺達の場所にも土石素の波はやって来た。


俺達に問題は起こらない。


『この土石素の色は本当に綺麗ですねー。ユーキの優しさが溢れ出ているようです』


俺は目標の達成を実感し、遮蔽空間の中のテネアがこそばゆくなるような感想を漏らす。

ミッションコンプリート。


さっき感じたことは、後から思い出すこともあるだろう。

今は忘れてしまっても大勢に問題はあるまい。




よし、では行くか。

これで時空間魔法のテストは完了だ。

ダチ公、行くぞ。

――ドコへ?――

日本だよ。

地球へ帰るぞ。

自信がついた。

俺は帰れる。

確信を得た。




『ユーキ、帰るのですか?あなたの世界へ』


俺の決意に、ラーンの寂しげな声が脳裏に響く。


『そうだラーン。俺は帰るよ』


常盤色に染まる中、俺は俺自身の力を感じながらラーンの宝石のような瞳を見つめて、揺るがない決意の言葉をつぶやいた。



―――――――――――――――



次回サブタイトル予告です。

~ハンターのユーキ~

お楽しみに。

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