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精霊星の物語 ~精霊島の物語~  作者: uki yoe
第一部 精霊島の物語
29/65

空間魔法と時間魔法

「ただいま、帰ったよ」

「だたいまー」

「お帰り、なさい。お話、出来た?」


帰ってきた俺達にテネアがチョコンと出迎える。

おお、テネア。

テネアがお姉さんのようだ。


「うん、お話出来たよ」

「そう」

「ユーキ、バビと一緒に楽しかったですか?」


ジト声でラーンが俺の目の前をフヨる。

ええ、それはもう楽しかったですとも。

薄汚い心が晴れやかになるほど。


「あー、ユーキなんだか怪しい。バビとお空で何して来たのー?」

「サフィ、お前なあ」


――サフィには言いたいことがあるんだぞ、あんな事とか、あんな事とか、あんな事とか――

言いたい事、結構一杯あったんだけど……。


「はあ、どうでもいいか」

「あー、あやしいー。絶対あやしい。レスリー、ユーキがあやしいよ。ずるーい、バビとレスリー、ユーキとお空で何して来たの?」

「何して来たんですか?」


あー、姦しい。

めんどくせぇ。

どうでもいいんですけどと思ったら、テネアまで疑いの眼差しを向けている。


「ユーキ、テネア、見る」


小さな手で俺の顎をつかんで持ち上げるテネア。

おふうぅ。

つぶらな瞳に、小さな唇。

つややかな前髪にふっくらホッペ。

ツンと上を向いた鼻に完璧な眉毛。

美人とか、可愛い子とかに耐性の無い俺。

ピリッと緊張。

直視するにも息が詰まる。

ともすれば、顔の筋肉が弛緩してニヤケそうだ。

こらえろ、俺。

あと、鼻息荒くなるな。


美女とかイケメンってそれだけで武器だよな。


「テネア、何もないよ、本当だよ」


バビの助けにホッとする。


「そうそう、何もないよ」

「本当、に?」

「本当ですか?」

「ほんとかなー?」


「何もありません」「何もないぞ」


レスリーまでも助け舟。

ああ、自由で気ままな空はよかった。



――――――――――――――――――――――――――――――



「亜空間の制御が出来ているのだ、その先の空間転移もそう難しい事ではないぞ」


レスリーのレクチャーが始まっている。


時間魔法。

空間魔法。

その両方が合わさって創られた結界。

それが時空間結界。


空間魔法の仕組み。

物は空間がなければ存在できぬ。

空間があって初めて物は存在する。

今、目の前にあるモノを空間の中に閉じ込める、又は解放させる。

現在の現象を保存し、又、保存されたものを呼び戻す。

遠くに存在するものを近くへ寄せる。

近くにあるモノを遠くへ飛ばす。

現実、そこにある空間を歪ませ、幻を発生させる。

新たな空間を創造し空間を創り換え、定着させ、若しくは移し替える。

今ここにある、匂い、色、音、見た目、触覚それらを遮断せしめ不感にさせる。

又、逆にそれら五感に働く存在を拡大させる。

幻の顕現。

圧縮、拡大。

湾曲と切り取り。

固定と伝播。

遮蔽と露出

新しい空間の創造と既存の空間の破壊

そして、空間魔法の最も有用な利用方法。

空間を超えて、目的の場所へ自身を移動させる魔法。

こちら側からあちら側へと転移する魔法。

準禁忌魔法と呼ばれるモノ。

それが空間転移だ。


コルニアに働いている空間魔法の作用は二つある。

空間の固定と遮断である。


空間の遮断。

悪素が空間の中へ広がっていく事を防ぐ為の空間遮断。

空間魔法によって広大な規模を外界より遮断し、その遮断によって悪素の伝播をコルニア内部へ伝播させることを封じる。


そして時空間結界に使われる空間魔法には空間の遮断魔法の他にもう一つの要素、空間固定の要素が加わる。

空間の固定。

コルニアの周辺360度に渡って展開された固定空間。

空間の固定は何の為にあるか?

空間固定で固定しているもの……それは『時間』である。


時間魔法。

時間魔法の醍醐味は今から先の未来、若しくは過去の時代へ自身を移動させる事だ。

だが、時間の流れを超え、自身の転移を行う力は禁断魔法の類にあたる。

自身の安全を守る為には使用を制限しなくてははならない禁忌の類に当たるのだ。

時間と空間は密接に繋がり合っている事を知っておかなければならない。

その事を知らず、むやみに時間転移を行えば世界が崩れる。

否、この場合崩れるのは世界ではなく、時間転移の力を発現させた当の本人の方である。

時間転移された先、その先の空間の固定が出来なければ、力を使った当人の体は存在できない。

あやふやな空間に物体は存在できないのだ。

揺らいだ空間に存在しようとしてもその存在は散在してしまう。

散在した存在を元に戻すにはどの様な方法があるか、過去、あらゆる者がその方法を探し出そうと試みたが、成功した事はない。

したがって、時間魔法を利用しての時間転移を行う者は、空間魔法をも使える者でなければならないと言う事になる。

言い換えれば、時間転移魔法は空間転移魔法と対になっているものなのだ。

レスカリウスは言う。


「今の世に空間魔法と時間魔法を同時に所有している物は我しかおらん」


それだけ空間と時間の属性素体を持っているというのは稀な事なのだ。

数千年に一人いるかいないかの稀な素体持ち。

主観だが、恐らく過去の時空間属性の素体持ち者であっても、コルニアへ到来出来るほどの力を持った者はレスリー以外いなかったのだろう。


ではもう少し間口を広げて、時間属性、時間素持ちは時間魔法で何を行うのか。 

時間魔法単体で行われる、有用な使われ方。

それは過去や未来へ飛ぶと言った大きな事ではない、もっと身近な時間操作の利用のされ方であった。

加速と減速。

停止と開始。

過去と未来の透視。

といったところであろうか。

さらには禁断魔法の類に時間の圧縮と伸張という能力もあるが、リスクも大きく使用されることはない。


失われた大地コルニアに使用された空間魔法と共に使用された時間魔法。

その主体は時間の減速であった。

空間の遮断によって外界との縁を切り、コルニア全体を時間の減速によって悪災の侵入を遅らせる。

その上で、コルニアの周囲を時間の減速と遮断を組み合わせた空間を広域に渡って固定させてある。

それが、コルニアを覆う時空間結界の内容である。

入口もなければ出口も存在しない、精霊王カイラルプスが創りし、超広域時空間結界。




「つまり、空間転移には一度行ったことのある場所である事が重要になってくると言う訳だ」


とレスリーは続ける。


「ほうほう。一度行って見た事のある場所であれば、途中のルートは端折っていけるって寸法か」


亜空間を創造する時には意識していなかった、周りへ与ええる影響を通常空間だと考えなければならない。

岩がある場所へ転移したら、岩と同化してしまう。

もし仮に岩のある場所へ転移してしまい、岩と同化してしまうような事になったら、それはもう死しかない。

岩ではなくそこがマグマの中であったとしても同じ事が言えるだろう。

簡単に死ぬのならまだいい。

中には強引な転移で体に異物を取り入れてしまい、苦しみながら死んでいくケースも有るのだと言う。


「一度も見た事のない場所では、何が障害になるか分からん。その点で空間転移は準禁忌魔法に位置づけられているのだ」

「確かに、端折って移動するのは怖いな。いきなりだもんな、移動先が分かっていたって実際そこへ行って見ないと分からない事だってあるからな」


好きな子のお風呂シーンに遭遇するなんてご褒美、万に一つも起きないだろうが、見たこともない場所にいきなり飛び込むのってのは分かっていても躊躇する。

学校の屋上から、ふかふかの新雪2mにピョーンと飛び込むとして、その雪の下の状態が、針の山なのか単なる地面なのか、知っているのと知らないのとでは大きく違う。

そもそも雪ってものを知っているか知らないかでも、躊躇する気持ちは大きく違うのだ。

俺が不安に感じるのも当然だ。

空間転移魔法知っているか?

――知っている――

マジか?

――嘘だよ――

嘘でもいい、問題ないと言ってくれ。

空間転移の先が針の山とか……それ、もう死んでるだろ。

針山地獄って。

シャレにもなんね。


「空間転移の事故の大概はその力を使用した本人に降りかかるものだ。だが、そなたであればどの空間へ転移したとしても、黄金則の力はそなた自身を守る方へ働くだろう。そなたが行う空間転移にそなた自身の失敗は恐れ無なくともよいとおもうぞ。少なくともここコルニアで、そなたの転移を妨げるものはないだろう」

「マジ?」


まさかの問題ない宣言。

つまり、出来レース?

すごいな。

ビバ、黄金則。

ビバ、俺。

素晴らしい。

悩むことなんて全くないのか。

俺にとって空間転移は問題ないんだ。

悩んで損した。

死亡フラグが見え隠れするものだから、どうなる事かと思ったよ。


――では何故、今まで空間転移を行おうとした時に、スムーズに事が運ばなかったのだろう。

思った疑問を口に出す。


「そなたの力不足ではなかったか?」


次回サブタイトル予告です。

~未来か過去か~

お楽しみに。

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