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精霊星の物語 ~精霊島の物語~  作者: uki yoe
第一部 精霊島の物語
19/65

白銀龍 改名 常盤龍

レスカリウスはまず初めに亜空間に仕舞ってあった、カイラルプスの精霊晶を取り出し、精霊晶の輝きに見入っていた。

精霊晶を使う度に、亜空間から取り出しているのだろう。

空間魔法で仕舞ってあった精霊晶は、わざわざ表に出さなくても使えるものかと思っていたが、そうではなかった。

物質は亜空間にあっては現実世界に意味がなく、現実での効果は得られないようだ。


精霊晶を顔の前に出し、白銀龍は一心に何か土属性の効果を引き出そうと意識を集中している。

土属性の魔法を使う段階に入っていくのが見て取れる。

白銀龍の体から溢れる色が、白から緑へと変わりつつあった。

土属性=緑色。

決定だな。

常盤色ときわいろとでも命名しようか。

常盤色に変色したレスカリウスは、言葉にするなら白銀龍改名、常盤龍だ。

別名グリーンドラゴン。

わあ、体に良さそうな響き。

そうだな、違う名前も思い浮かんだぞ。

緑に輝く宝石のような鱗からヒントを得て、その名もエメラルドドラゴン。

カッコいいな。

こっちの方が万人受けするんじゃないか?

後で進言してやるか。

鼻で笑われるのがオチか。




レスカリウスはカイラルプスの精霊晶を通して、世界樹がおこなっている悪素への浄化作用を試そうとしている。

曰く、「世界樹そのものになれば良い」のだとか。

もしこれで、レスリーのやっている事が上手くいくのであれば、コルニア崩壊の最悪の事態も回避出来るかも知れない。

上手くいってほしいものだ。

俺と三精霊ズはだまってその流れを見ていたが、俺達が手伝える事はどうやら何もない。

「わっしょーい」と成り行きを見守るしかないのだ。

俺も、レスカリウスと同じような事を試みてみたいが、近くでやって失敗でもしたら、レスカリウスも迷惑だろう。

レスカリウスの邪魔になるのは本意ではない。

この一連の流れで、精霊達もレスカリウスも、多分俺には何も期待していない。

まあ、期待されても応えられないから、ヘタに期待されていたら困っていただろうけど……。

…おかげで、気は楽だ。

逆に感謝したい。


こんな時の俺は、いい結果を生む時がある。

では今のこの状況を俺なりに活用してみようか。

離れたところで俺の出来そうな事を自由にやってみるのだ。

レスカリウスに迷惑でない所で俺の持つ感性で悪素、悪毒に向き合ってみたらどうなるか。

何かしらの結果がだせたらいいな。

精霊人ユーキなりの悪素へ対する、何かしらのヒントが得られれば儲けものだ。




レスカリウスがグリーンドラゴンと化している場所を後に、俺は来た道をぼんやりと歩いている、

あの分だとグリーンがホワイト色に戻るには相当な時間がかかりそうだ。

俺は手持ち無沙汰で、テネアから貰った世界樹の枝棒を亜空間から取り出してみる。

レスカリウスが呑み込んでいると表現する、空間魔法で創作された亜空間クローゼット。

ぽつねんと置かれた世界樹棒。

あら、この枝棒、薄ぼんやり光っているぞ。

俺は歩む足を止め、小口の滑らかな世界樹の枝棒を観察する。

枝棒に含まれていた素体が光り出しているようだ。

この枝、まだ生きていたのか。

しかし、何事だ?

何故、光り出している?

光っているのはこの枝棒だけだぞ。

俺は周りの木々を見渡す。

変わらぬ景色。

いや、少し離れたほうにもぼんやりとした緑の光が見える。

あれは、俺の持っているこの枝棒と同じ気配か?

あの場所は……?


「テネア、この棒、いや枝、どこにある樹からとって来てくれたんだっけ。」


さっきこの辺の樹って言ってなかったか?ええと、そうだ、くしゃみ一発の樹の傍だった。


「テネアが、持ってきた枝?これはこの先の、元気な、樹」


やはり、あれなのだろうか。

あの光の元がそうなのだろうか。

俺は改めてテネアがくれた枝(棒)を見る。

この枝、他の樹の枝と違うのか?

俺が切り落とした細かい枝葉の節跡には、いかにも切った感が見て取れていたが、切り落とした箇所を含めた枝全体が、いつの間にか滲み出来てた自然のテリによって、きれいに保護されている。

見た目にはそのテリが、かなりいい感じの保護膜になっている。

サラリとしているが、ヤニの一種なのかも知れない。


細胞組織の密度も相当高い。

結構な重厚感があり、身体能力の上がっている俺のポテンシャルに、見事なまでに合っている。

しかもこの枝、数年もかけて乾燥させてあったかのように、相当硬く締まっている。

叩いたら割れてしまうような、ガラス的な硬さではない。

木材のしなやかさに、鉄のような硬度がある。

さらに特筆すべきは、緻密できめの細やかな触り心地だろう。

一度手に持ったら、手癖が悪くなったかと錯覚するほど手から離れない。

肉体の一部にでもなったかのようだ。

いい物を所有している感が妙に心をくすぐる。

高級品の品格を枝からびしばし感じるのだ。

そこはやはり世界樹の枝。

この星においても、お金を出して買えるような代物ではないだろう。

そのくらいのレア感はあってもおかしくない。

そう解釈していた気配がある。


だが、今、俺が手にしている世界樹の枝、多少のレア感はあるだろうと甘受していたが、もしかして認識が間違っていた可能性がある?

先程から感じる微妙な違和感に、今度は小口を見る。

テネアが切って来たであろう、枝の切り口。

いきなりピーンと来た。

違和感の原因。

もともと世界樹の幹側についていたであろう、この小口の滑らかさ。

これは、どうしたものか。

いや、この小口、反対側にも同じことが言える。

この枝は初めから切られてあったのか?

誰が切った?

テネアが何かをしたからだと思っていたが、もしかしてテネアは何もしていないのではないか?


「テネア、あそこに見える土石素の光、あそこにこの枝の世界樹があるのかな?」

「そう、あの辺。あそこにある世界樹が、この枝、私に落したの」


落した!

ガーン。

そうだ、テネアは言っていた。「この枝を持って行けと言われた」と。


「テネア、そこへ行って見よう。俺を連れて行ってくれ。案内してほしい。俺、この枝を落した世界樹を見てみたい」

「わかった、こっち。あの樹もユーキに、会いたがっているかも、ね」


ニッコリ笑顔のテネア。

リアル天使がここにいる。

いい笑顔だ。

若干眩しいぞ。

ああ、俺のこの湧き上がる感情は恋じゃない。

ああ、今、分かったよ。

これはヘンタイ…… いや違う、父性だ。

母性ならぬ、父性。

父としてこの子を守ってあげたい。


――おい、目を覚ませ――

もう一人の俺が警鐘を鳴らす。

 ガンガン、カンカン、カーン、カーン、カァーーーン……。(警鐘の音)


俺の帰りを出迎える美しい妻と、俺の可愛い娘のテネア。

『お父さんお帰りなさい』

『あなた、夕食にしますか?それとも私……』

『ご飯が出来ているのだろう』

『テネアと一緒に作ったのよ』

『じゃ、君は後でじっくりいただくとして、せっかくだから食事にしよう。うわあ、美味しそうだ。すごいじゃないテネア』

なんて、会話。

手作りのおかずに炊き立てごはん。

温かく、美味しそうに湯気を立たせた夕食がテーブルに並び、家族団らんのひと時が展開される。

『ああ、こんな幸せがあっていいのだろうか』

と円錐状に盛られた(昔話し盛り)ご飯を真ん中からほおばりながら、妻とテネアを見渡す俺……。


…ァーーン…カーン、カンカンカンガンガン、ガン。

――コラ、起きろ――

ああ、いかん夢をみた。


甘い夢だ。

相当甘い夢だった。

ふう。


「……俺も、ずいぶん甘い夢を見たも…も…も、ぶぁっくしょい」

噛みまみた。


ガンカン、ガン。(警鐘の音)

――言うな。誰だよ――

そうだよな…ま、身の程を知れって奴だ……。

なあ、ダチ公。




「……ユーキ、テネアが行ってしまうのです」

「置いてくよー」

「ああ、待って皆さん。テネアさーん」



――――――――――――――――――――――――――――――




次回サブタイトル予告です。

~噴出の土石素~

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