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精霊星の物語 ~精霊島の物語~  作者: uki yoe
第一部 精霊島の物語
18/65

悪素の所以

そして闇黒素。

闇属性には闇黒素と呼ばれる素体がある。

俺が洞窟内の暗闇で、闇の中の全ての物が見えていた訳がそれだ。

暗黒素持ちであれば暗闇は決して暗闇ではない。

暗黒素持ちにとって暗闇は活動の場でもあるのだ。

ドワーフ族の半数がこの闇属性持ちであると言われている。

地中に住住処を持つドワーフ達だ、闇属性も持っていよう。

ドワーフ達も髪の毛が紫色だったりするのだろうか。


テネアの色、闇黒素の色。

深紫色の綺麗な色。

そのテネアと今回の悪素、一体何の関係があるのだろう。


「悪素って響きから、闇属性のイメージが思い浮かべやすいけれど、全く関係ないのだろう?」


何故、そんな悪素とテネアが結びついてしまうのか。

気持ちが固まったテネア俺の問いにさらりと答える。


「悪素は、闇属性の一部。でも、私はあまり、得意ではない、の」


闇属性に悪素があるのか?

どういう事?


「悪素って闇属性に含まれるって訳なのか?でもここの大地からは闇黒素のイメージがあまり感じないのだけれど……」

「そう、悪素は闇黒素でも、本当の闇黒素ではない、の」


頭がこんがらがる。

早口言葉に聞こえた。


「悪素は虚無と一緒にリテラへやって来たのです」

「それまでリテラに悪素は無かったんだよ」


ラーンとサフィーが助け舟を出した。


「テネアは悪くないのです」

「悪素は違うんだよ。理の外から来たの」


虚無の力。

精霊達にとっての悪災。

カイラルプスの時空間結界が今なお、防いでいる物。

それが悪素。

悪素の悪素たる所以。

それは何か。

精霊王が命を賭して戦った《真の敵》とでも言えるのかも知れない。

今なお、世界樹を枯らそうとしている力。

理の外から来た力。 


「毒だ」


それまで黙っていたレスカリウスが、吐き捨てるように言った。




闇属性、闇黒素にはもともと毒性に関する力が存在していた。

暗黒素の中の毒素系とでも言えるであろうか。

だが、虚無とともに落ちてきた毒素は、それまでリテラに存在していた精霊の力のソレとは異なるものだったのだ。

《強毒性・悪毒》

その力はリテラに落ちて着た瞬間、その場にいた多くの精霊を滅ぼし、彼らの王である精霊王その人をも消滅させた。

それほどの毒。

それほどの力。

その後5800万年、精霊の星リテラにおいて、新たな精霊が生まれる事は無かった。

リテラの精霊は一度死に絶えたのだ。


新たな精霊でさえ、5800万年の時間が無ければ、リテラの大地には生まれて来なかった。

さらに200万年後の今日。

その毒は闇属性テネアの力をもってしても、中和のし難い恐ろしい力を今だ持ち続けているのだ。

精霊王カイラルプスの時空間結界は間違いなく、コルニアを守って来ていた。

だが、コルニアの危機はヒタヒタと音もなくだが確実に迫って来ていたのだ。

精霊王の結界が6000万年かけて緩くなってきている。

その為に、コルニアに届く悪素の力強まり、その所為で世界樹の老木に影響を出してきている。

これは始まりに過ぎない。

これから始まるコルニア崩壊のシナリオ。

そんな事は考えたくない。


これまでにも悪素はコルニアに届いていた。

その間コルニア時間で500万年、人知の及ばぬ長い時間だ。


だがその事、長い時間をかけコルニアに悪素が届いていた事に間違いはない。

俺が思うに、カイラルプスが守ったこの大地コルニアは、俺の知る《冷蔵庫》のようなモノだったのだ。

外部からの悪素が冷蔵品を温めようとする熱であるならば、冷蔵庫の蓋であり、箱の三方に収められている断熱材のようなモノがカイラルプスの時空間結界であった。

そして冷蔵庫の中を冷やす電源であり、コンプレッサーであり、冷却ガスであるのが世界樹であった訳だ。

そのサイクルがこれまでは均衡を保っていた。

危ういバランスの上で。

だが、その断熱材であるカイラルプスの時空間結界が緩んできてしまった。

その時に、この循環の崩れを治す術をここに生きる者達は持っていないのか。

考えたくない、コルニア崩壊のシナリオ。

だが、俺の頭の中には最悪の事態が想像出来てしまった。

その最悪の事態は今、何もしなければ間違いなく起こり得る。


俺は気負わない。

だが、なんとかしてやりたい。


理屈じゃない。


カイラルプス。

俺はお前の守ったこの大地を救ってやりたいぞ。


テネアは嘆く。


「私は闇属性の精霊。でも、コルニアの悪素を減らせない。ユーキ、私ダメな精霊。ごめんなさい」


絶句だ、言葉が出ない。

くそう。

俺は男だろう。

今、テネアにかけるべき声があるはずだ。

何とか言えよ、俺。


「テネア、大丈夫。君は駄目じゃない。絶対、駄目じゃあない」


陳腐な言葉だ。

だが、黙っているよりはマシだ。

言葉を続けろ、そこで止まるな。

考えろ、考えろっ。

弱いけれど黄金則の力、俺の力で何とかならないのか?

――うーん、ならないな――

ちっ。


「そうだ、レスリー。カイラルプスの精霊晶だ。あの精霊晶を使って、この悪素をなんとか出来なかったのか?」

「カイラルプスの精霊晶を用いて世界樹の浄化は行った。だが、世界樹への効果は一時的なものでしかなかった。数日もすれは依然と変わらぬ状態へ戻ってしまうのだ」

「私も、この地面への、解毒を試みたの、でも、そこだけしか良くならない。たぶん悪素はずっと奥に溜まっている、の」

「奥って、どういう事?」

「地面、の奥。世界樹の根の、深い、所。コルニアの大地、全ての奥」


厄介だな。

レスカリウスが世界樹の治療をしてもそれは一時的な事であって、根本的な源を取り除いている訳ではないのか…。

その為、時間が経てば悪素に侵されている状態に舞い戻ってしまう。

テネアが土壌の解毒を試みても、それは全体のほんの一部でしかない為に焼け石に水、という事なのだろう。


打つ手がないのか?

考えろ。


「じゃあ、今この瞬間、ここにある世界樹はどうやってこれまでを生き抜いてきたんだ?悪素の浄化は世界樹がしているんだろう?それを真似することができればテネアでも、レスリーでも浄化が可能なんじゃないか?世界樹が悪素を浄化するその仕組みがあるんだろう?」


ほう、と白銀龍が考える。


「世界樹の浄化作用を真似る…か、うむ、それならば精霊晶を用いれば可能だろう。我、そのものが世界樹となるか。面白い。試みた事がなかったぞ、ユーキ。それはやってみる価値があるな」


レスカリウスが乗り気だ。

おお、よし、こんな簡単に改良のヒントが出るのなら、何でも口に出して言ってやる。

だが、レスリーよ、口にだしておいてナンだが、俺は今、感性の勢いだけで言っているぞ、その辺、大丈夫なんだよな?

世界樹そのものになるって?俺、そんな事言ったっけ?

そういう事でいいのかな?

…俺にも出来る事…なのか?


「テネアは…、もしかして出来ないのか?」


俺はもじもじしているテネアを見る。

可愛い子は何をしていても可愛いな。


「世界樹の真似は、私には無理、闇属性じゃできない、の」

「そうなのか……」


じゃあ、仕方がないんだな。

サフィとラーンはどうなんだ?と二精霊を見やる。


「サフィ、無理だよー、サフィは風属性だもん」

「ラーンも無理なのです。ラーンが出来るのは、水に生きる者達の模倣なのです。ひょっとしたら、出来るかもしれませんが……、やっぱり少し違うのです」


そうか、世界樹にも素体があるのだった。

つまり世界樹には世界樹に合う属性がある訳だ。

世界樹の素体の属性は何だ?


「ユーキ、世界樹は土石素・土属性だ。ここにおる精霊達に、世界樹を司る土属性はおらん」


レスカリウスが告げた。



――――――――――――――――――――――――――――――



次回サブタイトル予告です。

~白銀龍 改名 常盤龍~

お楽しみに。


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