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精霊星の物語 ~精霊島の物語~  作者: uki yoe
第一部 精霊島の物語
10/65

目標達成

コルニアに来てから六日ほどが経った。

外界では二ヶ月ほどの経過になっているのだろうか。

サフィのおかげで、俺は地表から30cm位の高さで常に体を浮かせるようになった。

瞬発的な最高高度は10倍の30mほどだろうか。

これはかなりの高さになる。

どうだ、出来たぞ。

俺はやればできる子だったのだ。


「ユーキ、目標達成だね」

「ありがとうサフィ。俺、空を飛ぶのって本当に子供の頃からの夢だったんだ」

「でも、浮いただけだ……ね」

「テネア?」

「それは言わぬが花なのです」

「ラーン?」

「ま、まあ。ユーキは頑張ったよ。ご褒美にコルニアを案内してあげる。だから一緒にいこ」

「……ありがとう」


なんか微妙。

ともかくもだ、地に足を着けずに浮いていられるのだ。

俺はコルニア滞在理由にして第一目標だった、体を浮かせる能力を開花させる事が出来た……。

出来たはず。


この調子で他の能力も開花させられないだろうかと調子に乗って、思いつきで空間魔法を使ってみた。

近場ならばともかく、この大地の端に行って見るともなれば、空間魔法を使うべきなのではと思ったのだ。

が、どういうわけか俺の空間素体はうまい事働いてくれない。

亜空間というか、何もない空間への出入りは出来そうなのだが、そこから先がよく分からない。

まあ、いいか。

この地で空間魔法を利用する事はまずないだろう。

それよりも、覚えたての浮遊魔法をもっと練習して、もっと自由に空中を飛び回りたい。

そう思った。

俺が今できる風属性、風力素の力を使った浮遊技術はこうだ。

まず、足の下に力を意識させ、空気圧縮体を発生させる。

そして、その直下に進みたい方向と真逆の方向性を持たせた風を流す。

それに乗って体の移動を意識すると、飛ぶとはお世辞にも言えないまでも、レスカリウスの体を乗り越えられる事が出来くらいの高さまで、ジャンプすることが出来る。

移動する手段としては思いのほか便利なレベルにはなったろう。

この方法なら、途中にちょっとした障害物があったとしても、かなり遠い場所まで行って帰って来る事が出来るはずだ。

自由に空が飛べるようになるには、まだまだ時間をかけなければならないだろうが、個人の力で浮遊することが出来るようにはなったのだ。

それだけでも俺としては十分満足できる気分ではある。

これがさらに進んで、すいすいと空を飛べるようになるのなら、それに越したことはない。




だがまあ、敷居を下げたとはいえ、一応の目標は達成できたのだ。

この辺りで、今後の俺の身の振りをはっきりさせておいた方がいいだろう。

このまま何となくの関係では駄目なのだ。

精霊王だ、精霊人だ、と言われてはいるが俺は人だ。

人はその在り方において人なのだ。

人が大事な気持ちを相手に伝える時は、言葉に出して伝えなければならない。

そういう生き物なのだ。

以心伝心。

言葉以外の部分で通じ合う事も事実ある。

言葉でないからこそ伝わるものがある。

それは、言葉で通じ合う感覚よりも深い感覚だ。

目と目で通じ合う感覚よりも深い通じ方であるかも知れない。

コルニアの精霊達には特にそれが言えた。

言葉よりも上の感覚で意識が通じあう時があった。

精神の共感とでも言えるかも知れない。


この間の事もある。

俺が、ラーンにヒーリングをかけてもらった時の事だ。

特にその事を感じたのだ。

気恥ずかしくて、ラーンには伝えていなかったが、あの時俺の魂は震えていた。

ラーンと魂で繋がっているような感覚に感動していたのだ。

その時感じたのだ。

ラーンの魂と俺の魂が共感し合い、感応していると。

その時思ったのだ。

極端な話し、精霊達の世界に言葉は不要なのかもしれないと。


だが、である。

だが、今は敢えて言おう。

言葉には気持ちを表す以上の力が宿っていると。

そして今、彼らに俺の気持ちを伝えるには、心を鬼にしてでも言葉に出しておかなければならない事なのだと。

思いを言葉にして相手に伝える。

これは白銀龍や精霊達への俺なりの誠意なのだ。


俺がこの大地、コルニアで生きていくつもりが無い事を俺の思いも込めて、はっきり伝えておいた方がいいだろう。

この感覚に間違いはないはずだ。

人としての、俺、個人としての誠意を果たそう。


「皆に言っておきたいことがあるんだけど。いいかな」


俺はまずレスカリウスがいない時、三精霊ズに語り始めた。


「俺がここに来てから六日ほどが経ちました。皆は俺がいつまでここ居るのか、これから先どの様にしていくのか、なにかしらの思いを持って皆が接してくれているのではないかと俺は感じています。だから、それについて今後の俺の身の振り方を答えておきたいと思います」


ちょっと硬い感じの言い方になってしまうのは勘弁ね。


「精霊の皆にしたら、今ここに、こうして、同じ刻を一緒にいる事は大したことの無い、当たり前の時間なのだろうと思います。でも、異世界から来た人間の俺にとって、この時間の経過はものすごく大事なものなんだ。だから、はっきりと言っておこうと思います。俺は、……俺はやっぱり、向こうの世界の人間なんだ。俺は、向こうの世界で、今を生きたい。このまま此処にいると、俺はここに居ついてしまう。コルニアはいい所だ。いや、よすぎる所だ。だから、俺の気持ちが向こうに帰れなくなる前に、俺は自分本来の生きていた場所へ帰らせてもらいたい。今、俺はそう思っている」


ここまで一気に言葉にした。


このままここにいたら、俺は絶対に帰りたくなくなってしまう。

皆が嫌いとかではないのだ。

住むべき場所が違うのだと俺のどこかが言っているのだ。

向こうの世界で前向きに生きていこうと、覚悟を決めている俺がいるのだ。

精霊達を見渡し言葉を続ける。


「サフィ、ラーン、テネア、だからこれからあと少しの間、皆といる事の思い出を一杯作っておきたい。俺にこのコルニアのいいところを一杯……そう、数えきれない程一杯見せてほしい。我儘なことを言うけれど。頼む。お願いします」


頭をさげると頭を下げた目線の先で、サフィのモヤモヤがゆっくりと地に降りて行き、ラーンがそれに続いて並んだ。

姿勢を戻して顔を上げてテネアを見たら、テネアは涙目になっていた。


直視できない。


暫くして、彼女らが重い口を開いた。


「ユーキ、まだ、浮いただけ………」

「………飛んでいないのです」

「ユーキ、頑張ってた」


胸が痛んだ。

ああ、そうか。

そういう事か。

もっと早く気づけよ、俺。

この子達の微妙な言葉の裏には、そういう気持ちの表れがあったのか。

精霊達が俺の考えに気付いていない訳がなかった。


「ごめんな」


そう言うのがやっとだった。



そしてその後、俺はあと四日ほどで自分の世界に帰ると、精霊達とレスカリウスに告げたのだった。



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