始まりの夜 〜プロローグ side-R〜
ゆるゆると始まります
龍
……それは世界最強種であり、非常に高度な知性を持つ者。
その姿は巨大で強大な龍本来の姿をとることもあれば矮小な小動物の姿をとることもあるらしい。
その中でも彼らが好んで姿を真似るのが『人間』。
どうやらこの物語の主人公もまた同様のようだ……
「12の声を集めなさい」
全てはそこから始まった────
時は遡り、所は世界一の王国【帝龍王国】。彼は自室のベッドで寝覚めた。時刻は陽刻2時。
「おはようございます、7代目」
7代目、と呼ばれた彼の名は相崎 蘭。この国の王であり、この世界の統治者だ。
そして蘭に声をかけた青年は洪野 仁。所謂側近と呼ばれる者で、執事の様な格好をしている……仁曰く、趣味だそうだ
「……お前はなんでいつも勝手に俺の部屋にあがってやがる」
「勿論、7代目あるところに私ありですから」
それを聞いた蘭は深い溜め息をひとつ。
「嘘付けこの野郎、んな訳ねぇだろ」
「流石に7代目でも気付きますか」
仁はクツクツと笑った。この笑い方、以前から蘭に気味が悪いと言われてもやめようともしない。なんとも、おかしな奴だ。
「どうせ毎度の如く何かイイモノでも見付けたんだろ?」
蘭が決めつけた様に言い放つと、仁は我が意を得たりといった顔で背に隠し持っていたモノを差し出した。
「こちらが今回のイイモノ、でございます」
「……何だこれは?」
それは青白く輝く球体で、水晶にしては大きいし、なにより面白味が足りない。
「【創世の道】を開く鍵にございます」
「ほぅ……?」
【創世の道】とは《創世の神》の許へと続くただひとつの道であり、蘭に残された数少ない『興味』の対象だった。それほどまでに彼は強い、龍族の中でも1、2を争う程に。
「んじゃ行くとすっか」
「御意に」
即断即決。
そして仁もまるで始めから蘭がそう言うのを分かっていたかのように……否、分かっていたのだろう。用意は万端で、国王軍もすぐに動ける状態にしておいた、と蘭に告げる。
しかし蘭はその様子を一通り眺めて、怪訝な顔をした。
「なんで軍まで準備してんだよ、2人で行くぞ仁」
「……はい?」
流石の仁もそこまでは予想していなかったようで、どこか間の抜けた声を上げてしまう。
「だから、2人で」
「それは聞きました、聞きましたが……正気ですか?」
「当然」
今度は仁が深い溜め息を。
「7代目、【創世の道】を我々2人だけで踏破出来るとは到底思えないのですが……」
その警告すら蘭は鼻で笑い飛ばす。
「お前は俺様を誰だと思ってるんだ?7代に渡り帝龍王国を治めてきた相崎家でも最強と謳われる相崎 蘭様だぞ?」
得意げに言い放った蘭に対して仁は悪戯な笑みを浮かべ、耳打ちした。
「自分で言うと大層滑稽に見えますよ、7代目」
「…………」
蘭が黙り込んでしまった。
これはマズったか?と思い仁が顔を覗き込むと、蘭は笑っていた。
「くっ、くははっ、あはははっ、流石は仁だ、あっははははっ」
「何か問題があったでしょうか?」
「あるわっ! だが、面白いから許す」
爆笑する蘭と愛想笑いを浮かべる仁。彼らは昔からこうだったらしい。全く、相性が良いのか悪いのか。
「しかし、本当に2人で行くのですか?」
「あぁ、いや、気が変わった」
「1人で行くわ」
………溜め息を通り越し沈黙が起こる。そりゃそうだろう。
そして勿論その沈黙を破るのも、蘭だった。
「そゆことだから、内政とか外交とか、任せるわ」
それだけ言い残すと蘭は窓に足をかけ、外に飛び出す。
“Emerge”
蘭が魔法の起動句を唱えると、人型の蘭の背後の空間から龍の翼が滲み出る。なんとも、不思議な光景だ。
実にアンバランスなその姿に仁は大きく落胆し、諦観したような目で蘭を見据える。
「どうかご無事で」
「それフラグだから、まぁへし折るけど」
そして蘭は空へと旅立
………たなかった。
「わり、【創世の道】の鍵忘れてたわ」
こうして龍王の旅は一応のスタートを切った。
ヒロインは次で出すから……
文章量はプロローグ終わり次第多くしていきます
…………語彙力と文章力ほちぃ…