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石榴の悲願  作者: 流架
3/23

2黄色の薔薇の門



状況把握とか何も出来ずにがっちがちに固まっていた深雪だが、暫くすると慣れて辺りを見回す余裕も出てくる。すると、目の前に巨大な門があるのが見えてきた。

黒く細い鉄柱が優美な曲線を描く、アンティークな雰囲気の門。真ん中には鉄柱で描いた薔薇のモチーフがあり、その薔薇を中心に八方に蔓が伸びているデザイン。しかし規格外な大きさは横五メートル、縦は十メートルはあろうかというほどに巨大だ。さらにどうなっているのか疑問だが、門柱には蔓薔薇が絡み付き、大輪の黄色い薔薇が咲いている。

そもそも地面云々以前に、本当に門だけがぽっかりと浮いている。柵とか壁とかもなく本当に門と門柱のみ。一体何なんだこれ。


これからどうなるんだろうと思っていたら、彼が門に向かって口を開いた。



「≪開館≫!≪開館≫をお願い申し上げる!我が名は≪石榴≫、紅玉の曼珠沙華、西の最果てより生まれし海原の罪深き人柱!≪ヴァルキューレ≫の方々はいらっしゃるか!!」



門に向かって呼び掛ける彼、ここから察するに≪石榴≫というらしいが、本当に本名だろうか。

それよりインターホンはないのかと突っ込みたい。


………あんなおしゃれな門にインターホンがあったらそれはそれで嫌だが。



「―――≪石榴≫殿!?如何なさったのですか!?」



しかし、あの呼び掛けに応えてきたのは、なんと女性だった。

此処で出てきたのがメイド服のメイドさんだったら様になったのだろうが、あいにくと違った。作務衣のような上着に膝丈の巻きスカート、足元は編み上げのブーツという、一風変わった服装である。しかも何処から出てきたのか、左側の門柱の上に片膝を付いていた。しかも、また恐ろしく綺麗な女性だった。

艶やかな黒髪をフェイスラインで切り揃えたショートボブ。頭に巻かれたヘアバンドは後ろが長く垂れ下がり、まるで尻尾のよう。下から見上げているが、此処からでもはっきりわかる女性らしい曲線を描く身体はいっそ見事だ。

………自分の体型を思い出して泣きたくなった。



「俺は別に何もない。ただ、ちょっと拾いものしたからな。こっちのが良いだろ」



「そうでしたか、いきなりで驚きましたよ≪石榴≫殿。―――少々お待ち下さいませ」



女性はひらりと軽やかに飛び降り、門の向こう側へ。

そこで、深雪はやっと口を開くことが出来た。



「あの、此処は………?」



「≪時忘れの館≫って言ってな。世界で一番安全な場所だ。この中に入れば、何者も何かを傷付ける事は出来ない。悪いが、事情の説明はもうちょっと待ってくれ」



困ったように微笑む彼に、深雪はちょっとだけ居心地が悪くなった。

この≪時忘れの館≫が絶対安全だというのがどこまで信用できるかわからないが、少なくとも彼は助けてくれた。今がどういう状況かも深雪にはさっぱりだが、さっきの女性とは顔見知りみたいだった。いつもはこの門を使わない事も。

つまり、深雪がいるから彼は―――多分だが―――正式な手順で中に入ることを選んだのではないか。

さっきの言葉の内容も含めて。



「俺は屋敷の主に挨拶して来ないといけないから、ルビスをつける。一応メスだし、会話もできるしな」



「は?」



〈妾のことじゃ。なに、小娘の面倒ぐらいみてやるわ〉



突如割り込んできた声に、深雪の身体は再び硬直した。



「頼むぜ、ルビス。意地悪すんなよ」



いとおしそうに撫でる毛並みに、眼下の獣はグルルと鳴いた。

なんとも肉食獣らしい………って違う!!

うっかり現実逃避しかけたが、深雪は賢明にも立ち直った。



「………どういうこと、ですか?」



「これはルビィ・リコリスって言ってな、俺の騎獣なんだ。妖魔だからってのと、俺のだからこうして会話も出来るようにしてある」



詳しいことも後でな、と言われたら深雪は頷くしかない。意志疎通が出来るなら万々歳だ。


その時、ゆっくりと目の前の門が開いた。

その先には、先程の女性がいる。



「―――≪入館≫の許可が下りました。どうぞお入り下さいませ」



※※※

取り敢えずまだまだ続きます。


どうか気長にお付き合い下さいませ。

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