寝起きと気絶と
なんか主人公が悲惨な事に。
もみくちゃにされ、叫び続けた悠斗は既に事切れていた。
そんな悠斗が目を覚ましたのは板の間だった。
ほのかに感じる杉のような香りそして香辛料のような感じの香りが混じったような匂いを嗅ぎながら悠斗は身体を目覚めさせる。
周囲を見渡すと色々あるが目立ったものは木製のテーブルとこれまた木製の簡潔なベッドだけだった。
見るとテーブルの上にはコップが1つ置いてある。そこから湯気が立ち昇っている。どうやらこれが香辛料のような匂いの正体らしい。
悠斗はテーブルに近づきコップの中身を覗き込む。中から毒々しいほど真っ赤な液体が入っていた。
「なんだこれ。」
悠斗はこのコップの中身をあれこれ考え始めた。
唐辛子かと思えば匂いはそこまで強くないし、トマト系にしては匂いが違いすぎる。
悠斗はコップの中身を嗅ぎながら、さらに周囲を確認する。
ベッドのすぐ脇に悠斗のカンペ入りのかばんがそのまま置いてある。
そうこうしている内に悠斗の背後の扉が開いている事に悠斗は気付けていなかった。
「起きましたね。」
後ろからの急な声に驚いた悠斗。危うく飲もうとしていた吐きそうになった。
「フフフ…そこまで驚かなくても。」
悠斗は慌てて振り向く。
透き通るような黒髪、悠斗の目の前には女性が1人立っていた。
そのまま女性が話す。
「主人が危なくなったところを助けていただいてありがとうございます。」
「主人?」
悠斗は引っかかったところをそのまま口にする。
それに気付くと女性は少し笑って応える。
「ああ。申し遅れました。私はクエア・クロイツ。うちの主人、バーツの妻です。」
「!!」
途端に悠斗は膝を着き項垂れた、主に精神的に。悠斗としてはあのおっさん確定がまさかこんな美人が嫁だとは思いもしなかったである。(かなり失礼だ。)
それを察したクエアは今度は苦笑いをしながら語る。
「まあまあ落ち着いて、主人があんな見てくれですからね。誤解とか多いんですよね。『できた娘さんだ』とかよく言われますもの。」
どうやらこういうのはそこそこあるようだ。ショックがやや残ってはいるが再び起き上がった悠斗。
「へえ、そうだったんですか。ところでこれは…」
ここで悠斗がずっと起きてから気になっていたコップの中身を指差した。
「ああ、それですか。主人が持ってきたクポの実のジュースですね。」
そう言ってクエアはクポの実の説明をし始めた。
クポの実とは密林から砂漠地帯まで幅広く生える木の実である。
実自体は緑色のからに覆われ硬いが中身はやわらかい。更に実を熱く熱せば辛くなり、冷やせば甘く、そしてそのままかじりつけば酸っぱくなり効能自体も変わってくるという稀に見る超万能植物である。
現在、悠斗が目にしているのは加熱した実を漉したものである。
「へー。」
悠斗はかなり分かりやすいクエアの説明に頷きながら聞いていた。
と、ここで悠斗は極自然にコップに口を近づけた。説明を聞いたためだ。
しかし悠斗は単純なミスをしていた。
この実は加熱した時間帯によって辛さが変わってくる。
今回の加熱時間は30分程度、ハバネロクラスの辛さになっていた。完全に玄人向けだった。
当然、そんな辛いものにたいする抵抗などなく…
「それじゃあ、いただきま…ん。ああアアアあああぁぁぁぁぁぁぁぁAAAAAAAAAAA!!!????」
当然。舌がやられた悠斗はそのまま2度目の気絶をしてしまった。
―称号 気絶の天才を適応しました―
そこでクエアが部屋の隅のほうに呼びかける。
「やりすぎです、あなた。」
「ハッハッハッ!」
ここからは死角の所からでてきたおっさん確定の男、もといバーツ。
「いいんですか。あなたの命の恩人に。」
呆れた声がバーツに向けられる。
「いいんだよ、あのやろう。気絶している間に『おっさん確定だな(笑)』とか言いやがって。」
まくし立てるバーツにはどこかスッキリした感がある。
しかしクエアには夫の性格などはお見通しである。
グサッと一言
「嘘ですね。」
「っ!!ま・まさかね」
もうこの時点でかなりばればれな所に子供らしいと思ったクエアだが感情を押し殺し問い詰めた。
「う・そ・で・す・ね?」
「ひぃっ!すんませんしたぁ!」
さらなる問い詰めに耐え切れなくなったバーツは土下座をした。流れるような土下座だった。
こうして悠斗が再び目覚めたのが翌日だったとかバーツはそれまでの間妻にこっぴどく叱られたとか。
なぜここまで木の実の説明をしたのか。作者にも意味不明。
新獲得称号
気絶の天才/ノックアウター
そのまんま。短期間に気絶をすることで獲得します。
これは作者的に入れる必要あったのかとも思ってしまった称号。
効果は危機的状況耐性微上昇。
ちょっぴりびっくりしづらくなる程度。
はっきり言って微妙。