第三十八話 リリアと、共闘、議会演説
ヴェルニエ侯爵の爵位剥奪から、一週間後。
王宮議会で、特別会期が開かれた。
招集したのは、王弟オーギュスト殿下だった。
「王国の女性の未来を論じる議会」
議場の傍聴席に、二人の若い女性が招かれた。
セレスティーヌ・ド・シャティヨン、十七歳。
リリア・ド・モンペリエ、九歳。
(リリアは、すでにベルロワ家からモンペリエ伯爵家の養女に移っていた)
十七歳と、九歳。議員たちの視線が、露骨に語っていた。小娘が何を、と。
だが二人は、傍聴席ではなく、議場中央の演壇に立たされた。
「議員各位」
オーギュスト殿下が口を開いた。
「本日は、王国の女性の未来を論じる特別会期である。私は、女性の声を女性の口から聞きたい」
議員たちの間に、さざめきが広がった。
「シャティヨン家のお嬢様、モンペリエ家のご令嬢、お話を願いたい」
セレスティーヌが、先に口を開いた。
(プレゼンは、結論から。医局のカンファレンスと、同じだわ)
「議員各位、ご機嫌よう」
ボブヘアの十七歳の令嬢が、議場に凛と立った。
「私は、王国の女性たちに職業の機会、教育の機会、医療の機会——その三つを、未来のすべての女性にお渡しする提案を申し上げます」
扇は、開かなかった。
代わりに、両手を議場へ広げる。
「私のベル・サンテでは、すでに看護師十六名が、平民の女性として職を得ております。月収は、男性平民の平均の二倍」
議場が、ざわめいた。
「これを、王国全土で十年かけて、千人に拡大いたします」
「千人……?」
白髭の老爵が、杖を取り落とした。
「左様。千人の女性に、職をお渡しいたします」
続いて、リリアが口を開いた。
「議員各位、ご機嫌よう。モンペリエ家養女、リリアでございます」
少女も、隣で背筋を伸ばした。
「私は、ベル・ロワ・カーヴ芸能事務所で、十年で王国全土五百名の女性に、芸能の職を提供いたします」
議員たちが、絶句した。九歳の少女に、大人たちが黙らされていた。
「合計、千五百名」
セレスティーヌが引き取った。
「これが、私とリリア嬢——王国の女性の未来、ベル・トリオでございます」
リリアと、目が合った。
どちらからともなく、口の端が上がる。
議場のあちこちで、どよめきが起こった。
王弟オーギュスト殿下が、立ち上がった。
「議員各位。両嬢の提案、王弟として後援する」
その日、「女性職業認可法」が可決された。
議場を出た廊下で、リリアがくすりと笑った。
「ティナ、千五百名だなんて、すごい数字を言ったわね」
「あら、リリアの五百名あってこその千五百名よ」
窓から差す夕陽が、二人の影を、廊下に長く伸ばしていた。




