第二十五話 ベルロワ子爵家からの、招待状
朝のシャティヨン伯爵邸。セレスティーヌは執務室で、新たな招待状を受け取った。
封蝋にはベルロワ子爵家の紋章。ペーパーナイフで封を切る。
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> シャティヨン家ご令嬢、セレスティーヌ・ド・シャティヨン嬢
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> 突然のご無礼をお許しください。
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> 当家の養女、リリア・ド・ベルロワが、最近お嬢様のお噂を社交界で深く伺っております。
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> もしご都合がよろしければ、私的にお茶会をご一緒いただけませんでしょうか。
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> 私とリリア、二人でベルロワ子爵邸にてお待ちしております。
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> 日時はお嬢様のご都合に合わせてお決めいただければ幸いです。
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> ベルロワ子爵令室、レイラ・ド・ベルロワ
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セレスティーヌの脈が、跳ねた。
指先が、無意識に己の手首を探る。医師の癖だ。
……これは、正常の範囲を超えている。
「……来た」
呟く。
「来たわ」
結城ゆかり。九歳になったあの子が、ようやく私のもとへ来てくれる。
セレスティーヌはペンを握った。急いては、いけない。丁寧に、けれど間を置かず。
> ベルロワ子爵令室様
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> 拝復。この度のご招待、心より感謝申し上げます。
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> 来週火曜日の午後二時はいかがでございましょうか。
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> 私的なお茶会として、一人でお伺いいたします。
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> リリア嬢にお会いできるのが、何より楽しみでございます。
>
> セレスティーヌ・ド・シャティヨン
封蝋を押した。
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侍女に即座に配達を命じ、セレスティーヌは自室へ戻った。
鏡の前に立つ。短いボブヘア、十七歳の顔。だがその瞳の奥には、四十歳の緒方真理子がいる。
緒方真理子。来週、私たちは出会う——もう一人の、前世持ちと。
セレスティーヌは両手でそっと頬を押さえ、深く息を吐いた。
「来週、火曜日」
呟く。
「私、緒方真理子。四十歳の産婦人科医。事故で死んだ三児の母。あなた、結城ゆかりと──」
言いかけて、止まる。
まるで、初診の患者への問診だ。
セレスティーヌは思わず噴き出した。
机の引き出しから、緒方真理子だった頃に愛用していた聴診器の代わりの装飾品を取り出す。そっと、胸元のレースのブラウスの下にしまい込む。
「あなたが結城ゆかりなら、これで、きっとわかるはず」
鏡の中の十七歳が、四十路のドクターの顔で、にやりと笑った。
「見て、これ。……医療ドラマの主人公気取りよ」




