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閃光【穂積レジャーランド】

 2014年7月17日。

『恋姫†演武』

 は全国のAPM2という筐体で稼働した。

 新キャラクターを3名も追加し、グラフィックもアニメ調に一新。全体のバランス調整も加えられている。

 私は今は懐かしき『したらば掲示板』の岐阜スレに書き込んだ。

『何処で対戦できるんですかね』

 無責任な書き込みをしながら、顔面が沸騰する思いだった。

 私はこの年になるまでゲームセンターでゲームをしてこなかった。学校教育の賜物で怖い場所というイメージもある。ましてや、知らない人間と、100円玉を入れて対戦するなど想像もつかなかった。

 しかし、試したかった。

 ゲームセンターという戦場で40%の男がどこまでやれるのか。

 その価値を知りたかった。

 この新作は家庭用版の発売が告知されていなかった。

 いつかもしれない発売日を待つのか?

 答えはノーだった。

 私は週末、掲示板の書き込みを頼りに、車を走らせた。

 週末は『穂積レジャーランド』に出没するという書き込みがあったのだ。

 私は毎週の金土日に車を走らせ、一人プレイをしながら乱入を待った。

 結果はことごとく振られる形になった。

 私は叫びたかった。

 どんな美女よりプレイヤーと出会いたかった。

 そんな、私の願いがかなえられたのは、翌月に入ってすぐのことだった。


 2014年8月1日。

 その金曜日、私は仕事が終わると穂積に向かった。最早習慣化していた。

 何か予感があったわけでもない、今日もどうせダメなんだろうなと半ば諦めながら、それでもアクセルを踏んだ。

 それは閃光だった。

 いつもガランとしている五台並んだAPM2筐体。

 そこには列ができ、ギャラリーが立ち、みな恋姫をやっていた。

 私は本気で天井の照明が強いのではないかと疑うほどに、夢にまでみた、その光景を見た。

 私はすぐに1000円札を崩し、恐る恐る開いている台に座った。

 直後、向かいに座るプレイヤーとマッチングし、私はアケ童貞を失った。

 手がガタガタと震えて、まともにレバーも握れず、流れ出る汗がそれに拍車をかけた。コマンドもろくに出せず、ぎこちない動きのまま、あっという間に対戦は私の敗北という形で終わった。

 とにかく場数を踏まねば。

 私は緊張を払拭するように、100円玉を筐体に投入した。ようやく操作に慣れてきたころ、今度は金銭感覚がマヒしていることに気付いた。

 たった100円とは言え、100円は100円だ。それを湯水のごとく流し込み、足りなくなれば1000円札を崩す。勝てないと言うことは、それだけ金がかかる。

 実際、ゲーセンの空気に慣れても、私は勝てなかった。

 頼りの『遠B>大剣』はどうゆうわけか、ダッシュをして当てに行く途中に、相手の牽制技にことごとく潰され、逆に出ていくのをためらっていると、その瞬間には相手に走りこまれている。なんとか『遠B>大剣』をガードさせても、相手はそれがどうしたと言わんばかりに、攻めに転じてくる。

 その場には10人を超えるプレイヤーがいたし、様々なキャラクターを相手にしたが、結果はどれも同じだった。

 私は思い知った。私の40%は、所詮、同レベル帯を相手取った時の40%であり格上相手には、そんな数字になんの意味もないのだ。

 日夜ゲーセンで100円玉を入れながら戦っている者たちによる、アケの洗礼。

 私はそれを痛いほど味わった。

 散財し、椅子で打ちひしがれていると、一人の男が私に話しかけてきた。

「こんにちわ。今日は何見て来たの?」

 これがシドとの出会いだった。

 何の誇張もなく、このときシドが私に話しかけなかったら、私の人生は大きく変わっていただろう。

 シドは当時25歳だった。すがすがしいくらいの金髪に、仕事終わりのつなぎ姿をよく見た。

 私よりも5つも下だが、シドは終始タメ口だった。

「したらばで、週末穂積にいるらしいって」

 その風貌に気圧されながら私は答えた。

「ツイッターやってる? 情報は基本そっちだから」

「やってないっすね。検討します」

「今日は名古屋から遠征来ててやってる感じ」

「そうすか」

 会話は長く続かなかった。

 対戦会は、一台の筐体の様子を、皆が見守る形になっていた。

 その台では名古屋から来たらしい男が、呂布というキャラクターを使って30連勝という数字をたたき出していた。

 私も何度も挑んだが、相手にもならなかった。

 閉店時間が来て、その日は解散となった。

 私は帰宅するとすぐにツイッターを検索した。

「穂積」や「恋姫」と言った単語で検索をかけると、今日はお疲れさまでしたといったツイートがいくつか見つかった。

 お疲れさまでしたを言う文化はあるのだなと、私がゲーセン界隈に対するイメージを更新していると、その中の一人がこんなことをつぶやいていた。

『どうも悪い呂布使いです』


 なにはともわれ、私のゲーセン人生は、今日この日、惨敗の中からスタートした。

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