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放浪【アテナ日本橋】

 冬の時代は相変わらず続いていた。

 私はこのころ、地方の大会や対戦会に顔を出すことで、その飢えを凌いでいた。

 KSBに参加したことで、関西方面へのアクセスも泊りなら車でなんとかなるとわかったので、大阪の『アテナ日本橋』の対戦会へも何度か参加した。

 対戦会を仕切るスマさんは、笑顔が素敵な長髪の兄ちゃんで、彼は私を見つけると「すぐ来る~」と言って笑った。私は彼に会いたいがためにアテナに顔を出しているところがあった。

 これまでの遠征や、家庭用大会などの蓄積から、私の知名度は『名前は聞いたことのあるプレイヤー』程度のものになっていた。

 アテナで15名ほど参加した紅白戦に出させていただいたときなど、いきなり副将に抜擢されて、私は慌てた。

 対するは二連勝中の夏侯惇使いだったが、相手のミスもあって私は彼の連勝を止め、なんとか与えられた仕事はしたとほっと胸をなでおろした。

 このときの相手であったシベリア氏が、私の格ゲー人生の岐路に関わってくるのはまだ先の話だ。

 大阪はいつ来ても活気づいていた。私はどれだけ楽しく遊んでも、最後には嫉妬と郷愁でいっぱいになって帰っていった。


 いつだったかある大会に出たとき、参加者で集まってラーメンを食べに行く機会があった。

 鍵さんがいたので私は、鍵さんと、鍵さんと仲良く話しているその人について行った。

 その男こそエマ。私の知る限り最強の男だ。

 かつて関東から選りすぐりのメンバーが彼を倒すためだけに関西まで遠征し、返り討ちにされたエピソードは有名である。

 私はラーメン屋でたまたまエマの隣に座った。

「いやあ、全然敵わなかったすわ」

 私は彼に話しかけた。野試合で散々やられたからだ。

 するとエマは

「えー全然強かったっすよ」

 と言った。

 世辞でもうれしかった。

「いやいや。なんにもできなかったすよ」

 私が言うと、彼は

「びびったら負けっすよ」

 と言った。

 当たり前のことのようだが、金言だった。

 Gと対戦したときなにもできなかったことを思い出した。差し返しを習得していなかったとしても、もっとびびらず自分なりの我を通していたら少しは結果も違っただろう。

 びびったら負け。

 私は格ゲーに置いてこの言葉を座右の銘にしている。

 びびって攻めない、びびって攻めてしまう、びびって動けない、びびって動いてしまう。格ゲーのシーンの中でびびって出た行動に正解はない。

 びびらずきちっと相手とゲームに向き合う。

 ひとつひとつの行動に責任を持って、読みが外れたとしてもそれと向き合って、思考を次へ次へと移していく。

 びびっているひまなどないのだ。



 2016年12月27日。

 ついに待望の恋姫†演武の新作が稼働した。

 その名も『恋姫†演武~遼来来~』

 新キャラクターと軍師サポートキャラクターを一名ずつ追加したこのバージョンは前作よりも、より硬派、より良バランスを実現していた。

 登り中段やコパグラップといったテクニックが廃止され、舞台はより地上戦の読み合いに重きを置かれた。

 これまで培ってきた努力が水泡と帰すこともなく、まさしく正統進化と言えるバージョンだった。

 私の使用している夏侯惇はいつものことだが大きな調整はなく、そのかわりに調整された他キャラクターへの対策に時間を割くことができた。

 これでゲーセンにも人が戻ってくる。

 安堵のまま迎えた年末だったが、年が明けてそれは幻だったと気付かされた。

 確かに人は増えたが、定着する者は少なかった。

 良くも悪くも恋姫は恋姫のままであり、そこに目新しさはなく、現状プレイしているプレイヤーには刺激になったが、一度離れたプレイヤーはまたすぐ離れていった。

 私はトモカのように喫煙所にいる時間が増えた。

 対戦会の時間に張り切って新規を刈り取って、人が来なくなっては、結局自分の対戦相手を減らすことになる。ks美濃加茂の二の舞だ。

 偉そうなことを言うようだが、三年間がむしゃらにやってきた私と、新作に集まってきた新規層では勝負にならない。

 タバコの本数ばかりが増えていった。


 そしてこのあと、私の恋姫人生の中で最大の衝撃が、私たちに襲いかかった。

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