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喉元【PORT24一社店】

 2016年2月13日。

 その日『第二回覇王決定戦一社予選』が行われた。

 当日は東西から数多の名だたるプレイヤーが、決勝トーナメントへの切符を狙いにやってきていた。

 私は正確には地元民ではないのだが、アリババで対戦が起きなくなり、実質ホームと化した一社から、切符の流出を防ごうと一人息巻いていた。

 どうせ隠すほどの腕前もない。私は大会前の野試合に積極的に参加し、腕を温めに温めた。

 勝ったり負けたりしながら、私は自分の実力では優勝などできないことを悟っていた。しかし、ここをホームとしている人間が一人でも多く上位に食い込まなくては、人の減った一社の沽券に関わると、青臭いことを考えていた。

 一回戦の相手はイカイカ。数多く来た大阪勢の一人だ。キャラクターはまたしても呂布。私は大会のたびに呂布や趙雲といった、夏侯惇の苦手とする長リーチキャラと当たるのがもはやお約束となっていた。

『気炎万丈 第一刻 勝負』

 第一ラウンドが始まった。

 夏侯惇での呂布対策は相場が決まっている、まず相手の長い牽制技をガードで受けて、そこで得た有利な時間を使い近接戦闘を仕掛ける。しかし、それでは受け身になりやすく、呂布側に自由に動かれてしまうという弱点もある。

 大会の緊張の中で、自分が相手の攻めを受けきれるか。私は分が悪いと判断した。

 私は極めてセオリー通りに戦った。いま自分の持っている技術を、大会の場で何パーセント発揮できるのか、そのチェックだった。

 私は切り返しの乏しい呂布に対してコパン(5A)でまとわりついて、そこから投げと暴れ潰しを迫った。

 相手は某戦時後ろ下がりが多かったため、私はよく投げを空振った。

 反してオフェンスの面では、よく前に出てくる呂布だと感じた。

 それに対し、私は置き技の『2B』を立ち回りに多く混ぜた。するとそれはそこそこヒットし、加えて2Bを空振っても相手が差し返しをほとんどしてこないことに気が付いた。

 これなら躊躇なく技が置ける。

 これはかなり大きな情報だった。

 結果、1ラウンド目は僅差ではあったが私が負けた。

 だが得られた情報は大きい。なにより呂布を相手にここまで持ち込めたのならまだ勝機はある。

 2ラウンド目、私は今度は果敢に攻めた。そして、相手が走りたくなるところではきっちり2Bを的確に刺した。

 投げ抜けをしてくるタイプだともわかったのでシミ―も多用した。シミ―とはダッシュをして投げると見せかけて、寸でで後ろ下がりをし、相手の投げ抜けを暴発させるテクニックだ。

 私は冷静だった。

 的確に論理的な文脈で相手の「できること」と「できない」こと「したいこと」「したくないこと」を分析し、それに対する回答を用意した。トモカ流の考え方だ。

 そうして2ラウンド目は、体力を7割近く残し、危なげなく勝利。

 そして最終ラウンド。

 私の取った戦法はヒット・アンド・アウェイ。

 まず攻めて、少しでも不利になったらバックステップで読み合いを拒否し、立ち回りに戻る。相手は攻撃を空振るストレスから強気に前に出てくるはずだ、それを刈り取る。

 普通、リーチが長く立ち回りの強い呂布相手に取る戦法ではないが、正面から戦ってはまぎれが起こる。大会の場で崩れた精神のリカバリーは難しいとの判断だった。それに大会なのは相手も同じだ。

 私は逃げに逃げた。バックステップをやりすぎると画面端に追い詰められてしまうが、それを防ぐために安全に走れるところだけはしっかり走った。

 相手が攻めあぐねていているのを感じた。

 私は石から石へ飛び移るように攻撃をやりすごし、そして攻めれるところだけを攻めた。決して深追いはせずローリスク、ローリスクにだ。

 私の方が冷静で、頭を回転させている。それを信じて立ち回った。

 最後は私の唐突な垂直ジャンプに、相手が反射で遠Bを振ったのを、かぶとわりのJCで文字通り叩き潰し、勝利を飾った。

 今まで学んできことの集大成のような試合だった。

 大会は続く。

 続く二回戦も大阪から来た『周泰』使い。周泰はスタンダードな性能を持ちながら、無敵のコマンド投げを搭載したキャラクターだった。

 私はエンジンがかかっていた。

 大剣で相手をコマンド投げの間合いまで近づけさせず、攻められたら徹底した防御に転ずる。

 私は相手のコマンド投げを何度も後ろ歩きやバックステップで交わし確定の反撃を入れ、これまた勝利を飾った。

 気が付くとベスト4まで上がって来ていた。

 遠征勢を打ち倒すという目標は半ば達成したが、そうすると欲が出てくる。

 準決勝の相手は忠氏だった。京都で出会った三人の夏侯惇使いのうちの一人だ。

 同キャラ戦は終始ゆっくりとした試合展開だった。

 試合は守りに勝る忠氏に、私がしびれを切らせて攻めていき、それが通るか、通らないか、といったものだった。

 じりじりとした地味な試合を制したのは忠氏だった。

 何かを通したかというより、よりミスを犯さなかった忠氏に軍配が上がった。

 忠氏はそのまま決勝も制し、見事切符を手にした。

 まだ超一流には届かない。

 だがその喉元をにらみつける感覚をしっかりと胸に刻んだ。

 あと二つか三つ強くなれば、私はそこへたどり着けるだろう。

 私は強くなっている。

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