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三人の夏侯惇使い【ネオアミューズメントスペースa-cho】

 2015年は序盤こそ大会だ遠征だと走り回っていたが、それ以降は相変わらずアリババと一社の往復に奔走していた。

 5月に『KSB』という大きな格闘ゲームイベントがあり、恋姫の大会も開かれていたが、私は持病の群発頭痛の発作で参加できず。春を棒に振った。

 私は地元でひたすら自らの牙を研いだ。

 そして、冬。第二回覇王決定戦の予選が始まった。

 私は自身の成長を試すため、三度a―choの門を叩いた。

 

 予選大会は午後からのなのに、私は午前中には現地についてしまった。そこにはすでに二人のプレイヤーがいた。私はツイッターで彼らがすでに到着していることを知っていた。

「はきわと言います。夏侯惇使ってて、今日はよろしくお願いします」

 並んで台に座る二人に、私は話しかけた。

 彼らは忠氏とミノル。関東でも屈指の夏侯惇使いの二人だった。初対面の私に二人は素っ気なかった。

 そして、まだ到着していないようだが、今日はジーコも参加を表明していた。曰く『覇者』。非公式全国大会でもっとも多くの優勝経験を持つ、生ける伝説的な夏侯惇使いだ。

 続々と人が集まりだすと、私は野試合に身を投げた。勝てる試合は少ないが、勝てる相手には勝てる。私はいま自分がいる地点を嚙みしめるように一試合一試合を臨んだ。

 しばらくすると、一際ギャラリーの厚い台が出来ていた。

 ジーコだ。

 ジーコは襲い掛かる猛者をばっさばっさと切り倒し、連勝を重ねていた。

 私もその輪に加わった。

戦ってみると、感動的なほど、きれいな夏侯惇だった。

 何かに突出しているわけではなく、すべてのステータスが高かった。ただただそのキャラクターの行える最善を選択し続ける、まさにお手本のような夏侯惇だった。

 戦って負けると、自分がなぜ負けたのか、驚くほどわかる。相手の弱点を映す鏡のようなまっとうさ。それほど癖のないきれいさ。きれい、きれいとしか言いようがない。

 何度目かの敗戦ののち席を立つと、私は突然後ろから肩を掴まれた。

 ミノルだった。彼は私よりだいぶ年下に見えたが、私のことをいきなり叱りつけるように

「大剣の打ち方が違う」

 と言った。

 私が驚いているあいだに、彼は頼んでもいないのにレクチャーを始めた。

「大剣の派生を連打で出してる、三段目まで全部派生にディレイかけて、相手のとの距離離さなきゃダメでしょ。遠B届かない距離まで離さないと大剣打つ意味ない」

 詳しく説明すると、夏侯惇の大剣こと『魏武の大剣』は計4段からなる派生を持つ技だ。→↗↑+Cと入力して一段目。そこからもう一度Cを押して二段目。さらにCを押して三段目。ここまでなら確定反撃を受けずらい。そしてヒット時のみ使う出し切りのCで四段目。

 私は確定反撃を受けないからと言って、相手のガードの上からこの派生を適当に押していた。だが各派生のボタンを押すタイミングを少しづつずらすことによって、相手との距離がより離れていく。

 すると相手の牽制技のリーチの外まで相手を押し出すことが出来て、反撃のリスクを減らすことができる。

 この大剣三段の遅らせ入力を『ディレイ大剣』と呼ぶ。

 私はそれが出来ていないため、大剣をガードされたあとの状況が悪く、相手に攻め込まれやすくなっているのだと、ミノルは説いた。

 私はジーコの試合を見た。確かに同じ大剣でもジーコと私のものではまるで違った。

私の大剣がカンカンカンと素早いリズムで相手のガードの上から刻んでいるのに対し、ジーコの大剣はカン……カン……カン……と明らかに遅いテンポで繰り出されていた。

 目から鱗とはこのことだが、初対面の相手にいきなり講釈を垂れるのは一部の格ゲーマーの習性なのだろうかと、Gのことも思い出しながら少し不気味だった。実際ミノルと言葉を交わしたのは後にも先にもこれ一度っきりだった。

 大会の方はというと下馬評通りジーコがこれを制し、本戦への進出を決めたのであった。

 私の夏侯惇は荒々しく、攻めているときに真価を発揮するタイプだったが、これを機にそのきれいさを意識するようになった。


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