2.
それはそうと、私は今畏れ多くも王太子様と同じ輿に乗って移動をしているの?それってすごく贅沢…じゃなくて不敬なんじゃ…?
と、輿から降りようとした私をジルが引き止めた。
「まだ本調子ではないので、その体でこの銀世界を行くのは自殺行為です」
元気だとしても、着の身着のままで銀世界に追放する我が家の人間もなかなか殺人チックだと思うけど?
「ジェラード様は何故こんな寒い王国に?」
「この国の王太子のサミュエルとは結構仲が良くてな。最近、ある家のお嬢様との縁談が持ち上がっているらしい。そのお嬢様のスキルが『炎創造』」
ああやっぱり。我が家のお姉様。元かな?
「でもなぁ、王太子はなかなか気が進まないらしいんだ。というのもそのお嬢様の性格に難がなぁ。なんでも使用人の手にアカギレがあるのが気になるらしいんだよ」
細かい所見てるなぁ。
「あの…。察しているかと思いますが、その方元・お姉様ですわ」
「やっぱり性格に難ありだな。スキルはいいけど、実の妹を極寒の外に追い出すのはなぁ」
着の身着のままです。
『炎創造』が我が家で重宝されて、お姉様がチヤホヤされているから余計なんでしょうね。昔はそうでもなかったんですけど、スキルが発現してからかなぁ?周りがチヤホヤするもんだからドンドンと傲慢になっていったなぁ。
「ところで、レイカのスキルは?」
「恥ずかしながらも『氷創造』で。我が家では氷なんて外にいくらでもあるから、わざわざスキルで出すまでもないと、私はごく潰し扱いを受けていました」
「そのわりにはよく今まで生きながらえたな?」
「あ、私に使用人達が炎の差し入れをしたりしていたので。その見返りに私が食事を抜かれた時にもこっそりとパンを私の部屋に持って来てくれたりしたんです。有難いですよね」
「ふむ。君の性格は使用人に好評だったんだな」
「そうだとなんだか嬉しいです」
「レイカのスキルなんだか…我が国で役立ててくれないだろうか?我が国は万年水不足。氷は解ければ水になる。しかも、我が国は熱い。氷は心トキメクものがある」
これにはジルも首肯した。真実なんだろう。
「私のスキルでよろしければ、役立たせてください!アイスノースでは散々役立たずとか無能とか言われていたので!」
「了承してくれるかぁ!」
「きゃぁ!」
「殿下、恐れながら未婚の女性にいきなり抱きつくのはどうかと思います」
「あ、そうだな。レイカ、すまない」
「頭を上げてください。減るものじゃありませんし。驚いて声が出てしまっただけです」
こんな3人を乗せた輿は極寒のアイスノース王国から灼熱のサンドサウス王国へと進むこととなった。
途中で輿から馬車へと乗り換えた。その方が移動速度が速いから。
レイカのスキルが役に立ちそう!というか、レイカを必要としてくれそうで一安心。