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過酷な世界で生きる  作者: バトルマスター幸恵
第二章 ブルグの町編
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第17話「仲間思いの狂人」


そうこうして俺は数十分ほど歩きアラン達と合流した。


「クルト!」


アランが叫ぶ。

見るとロイスも居た。

ガルドとリーシャは寝かせてあるようで若干唸っているが、まあ、大丈夫そうだ。


「は...はい...今戻りました...。」


俺言いよどむ。

アランは平静を保っている。

恐怖しているようでも、今後の活動を憂いて居る訳でも無い。

普通、なのだ。

見ると彼の右腕は止血されていた。

傷口を焼いたらしい。


「大丈夫......何ですか...?」


「んな訳ねえだろよ。腕ねえんだぜ?」


アランは少し笑った。


違う...そう言う事を言いたいんじゃない。

アランが魔物に腕を飛ばされた時、俺はアランに恐怖心を感じた。

腕だぞ...?

俺の様に感覚が鈍くなっている訳でも、何度も腕が生えてくる訳でも無い。

俺は結構理性的で、冷静な方だとは思うが、それでも体が欠損した時怖かったし、パニックになったのだ。


そもそも人間には自分の体が欠損する事に本能的に恐怖を感じる。

なのにアランは一ミリに動揺も困惑も無かった。

さも当然と、そう言いだしそうな表情である。

そんなの覚悟の範疇を超えているだろう。


俺とアランと魔物。

精神だけで考えればあの中で一番化け物じみていたのは、アランだ。


「まあ、俺は置いといてよ。お前は......。」


アランはそう言いながらこちらを見ると言い淀んだ。


「大丈夫......じゃないよな。」


「まあ......。」


大丈夫かと言われれば、そうじゃない。

心身ともにボロボロである。

だがそれはみんなそうなのだ。


「ロイス。二人を頼んでも良いか?」


アランは思い出したかの様にそう言い、ひょいと立ち上がった。

彼は右手をかばうようにしていない。

痛みだって相当な物のはず、それに人間は反射的に欠損した部位やケガをした箇所を守るように動く。そのはずなのに、アランは平然としている。


「行こうぜ。」


「どこに...ですか...?」


「あの魔物の間所までだよ。出来れば体の一部を持って帰る。探索所に提出しないと、発見した証拠にならねえだろ?」


「ああ......。」


「ッ...!」


俺がアランと移動しようとした瞬間。

強烈なめまいに襲われ、思わず膝を付く。


「大丈夫かよ...ここで休んでても良いんだぜ」


「いえ...。そもそも僕が居ないと、あの魔物の切断もままならないでしょう?」


アランだけでは魔物の硬度的に一部を切り取ったりはできないはずだ。

俺が行かねば。


「まあな...おぶってやろうか?」


「流石にそれは...。」


俺はアランの右手をチラリと見る。

その時だった。

ロイスが俺達の間に割って入ってくる。


「......俺がいこう」


俺もそっちの方が良いと思う。

アランが平然とし過ぎており気にならないが、彼は大怪我をしているのだ。

その瞬間だった。

アランはまた、あの冷徹な表情で口を開いた。


「だめだ。あいつのところへは俺が行く。」


「.........!」


ロイスは驚愕の表情を浮かべている。

アランのこんな様子を見た事が無いのだろう。


すると彼は歩きだした。

それは何処か死地に向かう軍人のような形相であり、かなり異常に見える。


「アラン......」


正直俺はアランが何を考えているか分からない。

俺から彼への印象は、基本的に粗暴だが、どこか繊細なところもある、良い奴。

それだけだった。


なのにここへ来てから、彼は何処か異常性を帯びているように感じる。

いや、もしかすると最初から、彼はこうだったのかもしれない。

それが少しだけ怖い。

俺がそんな事を考えているとアランが、こちらを振り返った。


「どうした?疲れてんなら本当におぶってやるぜ?」


その顔は安堵と少しの心配で構成された、優しい、仲間を思う顔であった。


「それは別にいいですけど...。」


俺はアランの後ろを歩き出す。

俺はアランが分からない。


だが、彼から感じる仲間への心配や信頼という感情は本物だろう。

繊細なところも粗暴なところも彼の本物で、何も演じてはいない。

それは正しい。

そう確信できる。


だが、あの異常な部分も彼の一部である。

俺はそれが分からないのだ。

アランはチラリと俺を心配そうな顔で見る。

ふと俺がアリアと話した時を思い出した。


頼れ、と。

そうだ。彼は俺の仲間である。

聞きたい事があるなら、聞いて良いはずだ。

少しは信頼しよう。


「アラン...貴方は何を...考えているんですか?」


俺がそう言うと歩きながら、アランは俺の方をチラリと見ると、重々しく口を開いた。

どこか顔には決意が籠っているように思う。


「俺はな全ての物事に必要だと思うんだ。犠牲って奴が。」


分からなくはない。

俺も前世では明確に時間と人間性を犠牲にしながら勉学に励んでいた。

それとはレベルが違うだろうが、全ての物ごとに犠牲は必要と言うのは分かる。


「俺はこのアイルライドのリーダーだ。言い換えれば俺は選択をする立場な訳だろ?」


「まあ...そうですね。」


「ああ。だから選ばなくちゃいけねえのさ。誰の、何を、犠牲にするのかをよ。」


俺は全身が強張るのを感じた。

アランの言葉が全て真実と、俺は不思議とそう感じたのだ。

すると彼はとんでもない事を言った。


「俺はあの魔物と出会った時、ガルドとリーシャを捨てて逃げるつもりだった。ロイスも優しいから残るだろうな。俺とお前、二人だけなら確実に生き残れる」


「......本気で言ってますか...?」


「ああ、本気だぜ。それが一番『生き残る人数が多い』選択だったからな。……だが、お前がいた。お前なら魔物を倒せる。なんとなくそう思ったのさ」


「だから……自分を犠牲にしたと?」


「ああ。俺と、お前を犠牲にした訳だ。結果として右腕だけで済んだのは運が良かっただだな。魔物がビビってくれなきゃ死んでただろうぜ」


俺の背筋が凍る。

俺は一瞬アランが保身的な人間で、自分可愛さに仲間を犠牲にする。

そのつもりだったのかと思った。


だが、違う。

彼にとって自分も他人も等価であり、自分だからとか、年齢とか、性別とか、そんな物関係無いのだ。

アランは本気で仲間を信用しているし、大事に思っている。

もちろん自分も大切だろう。


それはそれとして、捨てる。

二人を助けるために、一人を捨てる。


本気で彼は死ぬ気だったし、仲間を捨てるつもりだった。

一瞬の迷いも無く決断したのだ。


「決断ってのは残酷なもんだ。大抵、どちらを選んでも失敗に終わる。それでも俺は選ぶ立場にあるのさ。」


「......。」


俺は思わず黙り込んだ。

空気はいつもと同じ、雑談のような雰囲気すら感じる。

それなのに話している内容は致命的に重い。

その乖離がまたアランの異常さを際立たせているように俺は感じた。


「どっちを選んでも犠牲はでる。だったら犠牲が少ない方を選ぶのは当たり前の事だろ?」


確かに言っている事は真っ当であり、筋も通っているだろう。

だが、そんな事人間の精神では到底不可能なのだ。


母親と父親。片方しか助けられないなら、どちらを助けるか。

特殊な家庭環境で無ければ同士も迷ってしまう問い。

それをアランはほぼノータイムで選んだのだ。


それは人間の精神じゃない...。

言うなれば、彼は狂人の域にいる。

その時、俺の中にあったのは、なぜそう思うようになったのか?という疑問だった。


「どうして...そう...思うんですか...?」


「あー?むずいこと聞くなあ...元々じゃねえか?」


「そ...そうですか...。」


まあ...そりゃあそうか...。

余り意味のない質問だったかもしれない。

俺がそんな事を思っていた時である。

アランが足を止めた。

こちらを、あの冷徹な目で見ている。

その瞬間空気が重苦しい物に変わった。


「俺はよ。どちらかといやあ非道な人間なんだろうな。だが...何を犠牲にするか、選ばなきゃいけえ時は来る。その時......お前は選べるか?」


「それは......分かりません。」


正直、想像がつかない。

俺がそう言うとアランは俺と同じ目線まで膝を折り、口を開いた。


「違う。お前は選ばなければいけねえ。どちらかを選ぶんだ。選ばない事、それ以外は全て正解なんだからよ。」


ドスの聞いた低い声だ。

かなりの威圧感を感じる。


「敵を殺すんだ。絶対に。誰にも奪わせるな。奪われたのなら奪い返すんだ。」


「ッ......。」


アランがそう言った瞬間、俺の頭の中に黒の神とアリアの顔が浮かんだ。

俺が奪われた大切な人である。


そうだ...。

確かにそうかもしれない。

俺は奪い返さねばならないのだ。

何をしても。


その刹那、俺は彼の言っている事を理解し、納得出来た気がした。

黒の神には目的があったようだ、敵と前では言わない。

だが、邪魔をするなら殺さなければならない。

俺は俺の味方だ。

やりたい事をやるだけなんだから。


「犠牲を許容しろ。」


「......はい。」


俺の声は意外にスルリと出て来た。

出来る根拠など無かったが、出来ると、不思議とそう思ったのだ。


アランはまた歩き出す。

不思議と俺の中にあった不快感や、自分の体に対する恐怖心は無くなっていた。

なんとなく戻れないところまで来てしまった。

そんな感覚がある。


だが、それでもやらなければならない。

選択の時。俺はきっとためらうだろう。

それでも、やらなければならない。

それが必要なら必ず。


俺は今日、この日アランという男を知ったのだ。




――――


そうしてあの戦いから数か月が経過した。


俺はアランと一緒に魔物と場所まで移動し、俺の魔法で魔物の首を取った。

それを外探に提出した訳である。


そして俺はあの後仲間に黒の神について、俺の能力について彼らに話した。

もちろん全て真実を話したわけでは無い。

黒の神については出来るだけ警戒するようにと、そして俺の能力に関しては第四、第三等級の魔法を使えますよという事にしておいた。


正直、山の一部を消し飛ばした件について、どうしても誤魔化しがきかなかったのである。

恐らく今回の一件は黒の神が関わっているようだし、それに対しての警戒をしてほしかったのもあるし、

俺が喋りたかっただけな気もする。



ただ、アラン達は別に何とも思って居ないようで、リーシャは爪をいじって「へえ...。」と言っていたし、ガルドは「なんかカッコイイっすね!」と言っていた。

アランは「こんな事出来るなら先に言えよー!」と笑っていたし、ロイスは何も言わない。


まあ...いつもと一緒である。

お世辞にも彼らは頭の良い方では無いし...余り理解出来ていないのかもしれない。

信じていないというのもあるかもしれない。


アランは理解しているだろうが...。

彼の考えは良くわからん。


まあ、良い奴ではあるので、言いふらしたりはしないだろう。

俺達は仲間ではあるが、友達ではない。

助け合うが寄り添っている訳では無いのだ。

それが強く出たと言えるのかもしれない。

俺も持ち上げられたり、警戒されるよりそちらの方が楽だ。



ちなみにあの魔物はメチルドレドラットが倒したという事にしておいた。

俺が倒したことにすると、貴族や国家相手に目立ってしまう。

アラン達がやった事にすれば到底彼らでは達成不可能な難易度の、指名依頼がきかねない。もし相手が貴族や国なら断れないからな。


まあ...問題はある程度片付いたように思う。

あとはメチルドレドラットのリーダーと俺達がすれ違った事だろうか。

あれはまず、間違いなく黒の神だ。

警戒しなければならないが...。

正直どう警戒しても、裏を取られる気がする。

何しろこちらには情報が無さ過ぎるのだ。

悔しいが、仕方ない。



アランは「まあ...もし接触してきたら、その時考えるさ。」と言っていた。

多分彼の考えるとは、誰を犠牲にするか考えるという事なのだろう。

もちろん自分含め。


ちなみに俺はブレントさんから未発見の魔物を討伐、回収した功績、そして特別探索任務を達成した報酬が上乗せされた金額を報酬として頂いた。

大体贅沢をしなければ、数十年は何もせずとも暮していける金額だ。


メチルドレドラットが討伐したという事になったのだが...どうして俺に報酬を渡すのだろうと思ったのだが、ブレントさんが腰を低くしながら「今後ともよろしくお願いします」と言っていたところを見るに、

何かあった時に手を貸せという事だろう。

裏金である。


まあ...外探に戦争行為を依頼するのはNGらしいし、とんでもない依頼をされることはないだろう。

俺は個人的に出来る限り答えていきたい。


そうして俺はブルグの町にたどり着いた。




――――



「じゃあな、クルト!」


アランが言った。

今はブルグの外、その城門前にいる。

城門は石造りでてきており、跳ね橋や門扉が見える。


「はい。今までお世話になりました」


俺はペコリと頭を下げる。今日でみんなとはお別れである。


「頑張ってくださいっすね。」


「......。」


「じゃーねー」


みんなが口々に言うと、彼らは本来の目的地、城塞都市ライケスに歩き出した。

俺は手を振る。


探索者の別れは基本的に淡泊だ。

何か宴会のような物がある訳ではないし、特段感動的な物ではない。

それをしてしまうと、もう二度と会えないのではないかと感じてしまうから。


別れは寂しい事ではない。

死ななければきっとどこかで会えるだろう。

そんな共通認識が探索者の中にはあるのだ。


基本的に探索者の隣には死がある。

踏み間違えれば死ぬ。

それ故に、生きているだけ運が良い。

そう捉える訳である。


別れは淡泊。また会う事を前提に。

正直少し寂しいが、俺はこの感じが好きだ。


俺は適当に手続きを終わらせ、ブルグに入った。



俺は周囲を見回す。

この町は俺が訪れてきた町の中で恐らく一番大きいだろう。

道路はレンガで舗装されているし、街並みも華麗だ。

ガヤガヤと喧騒が聞こえ、ここからでも沢山の人間が見える。

中には妊婦や子連れも見えるな。

明るい雰囲気を感じる。


「さて...あと半年か...。」


俺の口から漏れる。

この町が戦火に包まれるまで、あと、大抵あと半年程度なのだ。


もう相手は戦争の下準備を進めているだろう。

さて、ここからだ。

ここからが俺の勝負である。


何とかして戦争を止めたい。

そのためには情報を集める必要がある訳だが...。


俺は町中を適当に歩き出す。

正直言って情報を集める方法...その検討は未だついていない。

一応この町にも領主がいるはずだ。

戦争となれば通常領主が指揮をとることになる。

それに会う事が出来れば、ある程度の情報は得られるだろうが、ではどうやって会うのかと言われれば難しい所だ。


まあ...時間的な猶予はある訳だし...ゆっくりやろうか。

そうして俺はブラブラと町を歩く。


「あれ......。」


その瞬間俺はある事に気づいた。

兵士がいないのだ。


なんだ...?半年後とは言え、戦争だ。

もちろんこの町の領主、もしくはラルド王国の方へ情報は届いているはずだ。


誘い受けの姿勢。

攻撃を受けてから、軍を形成する、そう言うつもりなのか...?

だとしても町全体が平穏過ぎるように感じる。


よく考えれば俺はよそ者だが、この町には容易に入る事が出来た。

もちろん俺が持っている探索所のメンバーであるというプレート、これの影響もあるだろうがそれにしても容易過ぎないだろうか。

スパイや密偵は最初に警戒して然るべきだと思うのだが...。


この町はラルド王国に近い。

攻められないとでも思っているのだろうか...。

それとも戦争の準備期間というのは、こういった感じなのだろうか。

正直分からないな。



そんな事を考えながら、俺は適当に町をウロウロとしていた。

どうやら町の外れまで歩いて来てしまったようで、人通りが減ってっくる。


ふと見ると、日も暮れているようであった。


そろそろ本格的に今日止まるところを探さねば...。

そう思い周囲を見渡していたところ、俺は宿を見つけた。

いや正確に言うと、宿に入る二人組を見つけたと言った方が良いだろう。


一人は老人、いや、ホームレスのような風貌でボロボロな黒いローブを着ている。

そしてかなり年配なようで、ローブの隙間から見えた髭は白髪だった。

直言って臭そうだ。

一言で表すなら浮浪者と言う感じだな。剣を装備しているようだが、錆びついており、抜けるかすら怪しいように感じる。


そして二人目は15歳くらいの暗い茶髪の少女だった。

その所作のせいだろうか、どこか高貴さを感じさせる。


まあ...それは別にどうでも良いのだが...。

問題は手だ、一瞬見えただけだが、そこには特徴的な日焼けがあった。

いくつかの指の付け根が円状に日焼け跡がないのである。

これは指輪を長時間していた人間の日焼け跡だ。


つまり、ずっと付けていた最近外したと、そう言う事である。

貴金属は貴重だ。

俺の様に半分偶然で大金を手にしない限り、平民では購入する事など不可能なのだ。

それから考えるに恐らく彼女は貴族か、それに準ずる地位の人間だろう。


そして彼女は指輪を外していた。

この町の情勢から鑑みるに、貴族だと思われないようにするためだ。

俺は未来を知っているアリアからブルグの情報を得た。

それ以外に情報を得る手段は、領主、またはラルド王国の関係者だけだろう。


「やるか...。」


俺の口から漏れた。

貴族であると隠すため指輪をつけないが、日焼け跡は放置。

何かしらの狙いがあるのだろう。


乗ってやるさ。

俺はそう思い二人組と同じ宿に向かった。



――――


場所は変わり、ブルグと城塞都市ライケスの中継地点、宿場町エルケット。

クルトと分かれた後、アランは宿に泊まっていた。


今現在は一人である。

無理を言って、他のメンバーとは別の部屋を取ったのだ。

アランは椅子に座り、扉を無言で凝視している。

待っているのだ。


するとその扉がガチャリと開いた。

そこに居たのは、長い金髪と端正な顔を備えた男。

メチルドレドラットのリーダーである。


「来たか......。」


「驚かないんだね。」


その体はドロドロと溶けだしていき、12歳程度の中性的な、少年とも少女とも言えない姿に変わっていく。

クルトが黒の神と呼ぶ者である。


「用件はなんだ?」


「.........」


黒の神は黙り込む。

考えていたよりもずっとアランが動揺していないのである。


「君さ...イカれているよね。」


「そうか...?」


「ああ。イカれているとも、危険すぎるほどにね。」


黒の神はそう言った瞬間、空間が歪む。

その歪みから宇宙色としか形容できないような液体が身体に纏わり、未だ中性的であはあるものの、幼さは消え大人の姿に変化した。


「君はさ、知りたいんだろう?世界を端から端まで。僕が教えてあげるよ。そのためにさ。君は...一体何を捨てれる?」


黒の神はそう言いながらアランに手を伸ばした。

気になる。

それはアランの中に在った、旅をする理由であった。


彼は仲間思いであり、大切に思っている。

だが、彼の気になるは、仲間の命、自分の命、その他一切より、優先されるのだ。


その顔はとても冷徹な物である。

そしてその手をアランはつかみ取った。


「全部だ。」


アランはそう言い切ったのだ。


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