第16話「怪物は誰?」
俺達は北側の山脈に到着した。
俺は思わず足を止め周囲を見回す。
そこには神秘があった。
標高がそこそこ高いためか、魔法の影響下は分からないが、銀世界とは言わないものの、薄く地面を雪が隠している。
土や木までもが苔むしていのだ。
木の根元からは紫や青など様々な色の花が咲き、そしてごくたまに謎の卵が木からキノコの様に生えている。
見た瞬間分かる異様な空間。
俺はその異様さに若干の恐怖心と神秘を感じているのだ。
苔が生えるには相当な時間がかかる。
そもそも、これほどまでに苔が大量発生する事は気候や気温的に有り得ないだろう。
時間と空間がゴチャゴチャになっている感覚だ。
「凄いですね...。」
「まあなあ...クルトは初めてだったか?」
「そうですね。外界って言うのは大体こんな感じなんですか...?」
俺達が依頼の時、倒す魔物は基本的に例外的に発生し、町の近くまで降りて来た個体であり、ここまで魔力が充満している場所までは行かないのだ。
「まあ...場所によるだろうなあ」
「女の子がいっぱいいるとことか、あると良いんすけどね。」
「気持ちわるいねー。」
そう言いながらリーシャは少し笑った。
「あー!男の夢を笑ったっすね!」
ガルドが冗談ぽっく怒っている。
勝手に男全体の夢にするのはどうかと思うが...。
「.........」
ふと見るとロイスが少しだけニコリとしていた。
もちろん彼がムッツリという訳では無く、単純に空気感が楽しいのだろう。
「もう、分かったら...行くぞ?」
そう言いながらアランは地図を広げながら歩き出す。
「うーっす。」
ガルドはそう言いながら追従した。
俺もまた歩き出す。
ちなみに、あのアランが持っている地図はブレントさんから貰った物である。
これを見ながら白紙にどこが変わっていないのか、どこが変わったのかを書き込んでいく。
そうして数日かけて、白紙を埋めきれば探索成功となる訳だ。
「ホントに気持ち悪いわ......ねえ?」
リーシャが少し冗談めかしながらロイスに絡んでいる。
「.........」
彼は何も言わず眉間にしわを寄せている。
ちなみにこれは怒っている訳では無い。
彼はガルドが気持ち悪いかどうかを、自分の中で真面目に審議しているのだ。
よく言えば真面目。
悪く言えば癖のある奴である。
悪人では無いんだがな。
「二人とも行きますよー?」
「はーい」
「......ああ。」
そう言うと二人はついてきた。
俺達の探索が始まったのだ。
命を掛けている。
村が滅んだにしては緊張感が無いが、いつもこんな感じだ。
もちろん事の重大さを理解してないと、そう言う事ではない。
人死にはたまにある。
俺達の中では無いが、依頼主の友達が殺されただの、親が殺されただの。
それで一々暗くなっていては仕事になりはしない。
それ故、振りだけでも楽しそうにするのだ。
別に心から楽しんでいる訳でも無い。
だが、それでも気は少し楽になる。
もちろんこれは、俺達の中でそう取り決めた訳では無い。
このメンバーの誰しもが、それが良いと各々で判断したのだ。
――――
そうして捜索が始まり数時間が経過した。
ふと見ると日が落ちかけていたので、これ以上冷える前に山脈を少し降りようと、俺達は今下山している。
「いやー...何にも居ないっすねー...。」
「まあ...良い事じゃない?」
「そうっすけど...。」
ガルドとリーシャが後ろの方で喋っている。
ガルドは他愛ない話をしながら目だけキョロキョロと、周囲を見ている辺り流石に慣れているなと思う。
ふとガルドと目が合った。
「今更っすけど...寒くないんすか?」
「大丈夫ですよ」
俺は結構薄着だ。
これは感覚が鈍くなったというより、俺の体が本当に寒さを感じていないのだろう。
手足はかじかんだりしないし、体も震えない。
まあ...断り切れず一枚羽織っているが...。
それでも薄着と言えるだろう。
こちらの方が動きやすいのだ。
ちなみに俺以外は結構温かい服装をしている。
鎧は来ていない。
今日は探索メインだからな。
アランは手斧。ロイスはデカい剣。ガルドは短剣を装備しているようだ。
「それならいいっすけど...。」
ガルドはそんな事を言いながらまた周囲を警戒しだす。
その瞬間である。ガルドは真剣な顔で再び口を開けた。
「なんか......血の臭いがしないっすか?」
「えー鼻血とかじゃないのー?」
リーシャが茶化すように言った。
ガルドは小さく首を横に振る。
それは緊張と焦りが入り混じった、ジェスチャーだった。
俺達の足が咄嗟に止まる。
それと同時に俺の背中に嫌な汗が滲んだ。
なんとなく嫌な予感がしたのだ。
「そう。どこから?」
リーシャはガルドの言葉が本気だと気づいたようで、低く、そして小さく言った。
ガルドは目線で方向を示す。
俺達は自然と隊列を組んだ。
アランとロイスが前衛。中衛にガルド。後衛にリーシャ。
そして最後衛に俺である。
「どう......するっすか?」
ガルドはアランに聞いた。
可能性としては魔物か、人間か。
まず魔物であった場合。
それは負傷しているか、同士討ちをしている可能性がある。
だとするなら強力な魔物がその周囲に居る訳であり、かつ魔物は日が落ちると活性化する。
もし魔物であるなら相当危険と言えるだろう。
だが、人間である可能性もある。
だとすれば、当然負傷している訳であり、助けなければ危険な状態なるだろう。
死ぬ可能性もある。
いや、気候的に考えてもほぼ確実に死ぬ。
どうする...?
ふと俺の視界にアランの横顔が少しだけ映る。
「ッ...」
その顔は異常なほど平然としていた。
冷静と言うより、冷徹で、何を考えているか分からない。
動じていないのだ。
覚悟の決まった目という奴なのか?
彼は粗雑ではあるが、どこか精神的に繊細な男。
それが俺から彼への印象である。
こんな顔は見たことない。
俺はなんとなく、アランのその顔がとても恐ろしく感じた。
瞬間彼はこっちを向いた。
そこには粗雑で繊細な男が居た。
「決まっているだろ?【気になったなら、行け】ってよ。」
アランはニヤリと笑って言った。
アランの方針もあり、俺達が選択に迷わないように、一つだけ取り決めがある。
それが【気になったなら、行け】なのだ。
「うす」
ガルドはその言葉を聞き、覚悟を決めたように、小さくそう言った。
見るとリーシャもロイスも目の奥が座っている。
行くと言うのが全員の総意のようだ。
正直俺にはどちらが正しいか分からない。
アランだって別に行くのが安全だとそう判断した訳では無い。
この場の誰にも正しい判断なの出来無いのである。
だったら俺はリーダーに従いたい。
――――
そうして俺達は血の臭いのする方向へ移動した。
数十分ほど歩いただろうか、少し開けたところに俺達は出た。
その瞬間。
俺達は沈黙に支配されていた。
それは気まずい沈黙とは違う。
警戒と恐怖に満ちた沈黙である。
俺達はその開けた場所。
その中心にはメチルドレドラット、そのメンバーの死体が存在した。
死体は縦方向に正方形に積まれている。
そしてその上には装飾をするように様々な色の花が置かれていた。
俺はその特徴的な死体の山から、子供が滅茶滅茶な物を作り、それをアートと言いはっているような、何の意味の無くただの好奇心で行ったような、そんな雰囲気を感じた。
瞬間、刺し貫くように俺の鼻に錆びのような臭いが入り込んで来る。
「これは...何なんすか...。」
ガルドが声を漏らした。
これはメチルドレドラット、そのメンバーの死体。
だが、俺達は数時間前、確かに彼らとすれ違った。
俺は逡巡する。
その瞬間ある物がかたまに浮かんできた。
黒の神である。
あいつならリーダーのあの金髪の男に化ける事が出来るのかもしれない。
俺の額に汗が滲んだ。
これは...まずい。
見ると全員が固まっている。
目の前の物。あるはずの無いメチルドレドラットの死体について理解できていないのである。
「危険で...」
俺は彼らに『危険です、戻りましょう』とそう言うつもりだった。
俺はふと振り返る。
「......え?」
そこには居た。
巨大な二足歩行の生命体である。
その足は骨ばっており、皮膚が垂れて下がっており、髪の毛のような靄が全身を覆っており全身は良く見えない。
だが、体の中心。胴体のある場所に人間の顔のような物がある。
腰は直角に曲がってるようであり、顔は靄で見えない...というより顔らしき部分が見えない。
だが、俺は瞬間的にその魔物と目が合った気がした。
そしてほぼ反射で気づく。
こいつだ。こいつがメチルドレドラットを殺し、村を壊滅まで追い込んだ魔物であると。
「「......」」
全員が動かない。斬りかかる訳でも、逃げる訳でも無い。
それがなんとなく意味の無い行為だと頭が理解してしまったのだ。
ここに居る全員が恐らく思っただろう。
こいつには勝てないと。
動けば死ぬ、動かなくとも死ぬ。
不思議と直感した。
そんな威圧感だった。
魔物からはクジラの鳴き声のような、声を漏らしている。地面に響く重低音だ。
「っう......あ...っはあ......」
ガルドは上手く呼吸が出来ていない。
「あ.........。」
リーシャは放心状態で鼻血と血涙を流している。
恐らく魔物による精神汚染による物だ。
「ロイス。二人を頼む。」
アランは言った。
「ッ......。」
ロイスは俺の方を見る。
どうする、と。問うているのだ。
俺は世界がゆっくりになって行くような感覚に襲われた。
アランは多分ここに残る気だ。
魔物を足止めするために。
そして、それは可能かと言えば無理だ。死ぬ。
だったらどうすれば良い?
瞬間俺は理解した。
【俺だ】
俺がやればいい。
俺は首を横に小さく振った。
やるんだ、俺が。
「.........。」
ロイスは俺を信用したのか、納得したのか分からないが、一瞬頷いた。
「「.........」」
場はまた沈黙が広がっている。
動かない。
誰かが動かなければならないのはみんな分かっているだろう。
だが動いた奴が死ぬ気がして動けないのだ。
ふと目だけで周囲を確認すると、アランはこちらを見ていた。
なんだ...?俺は彼の顔がまた、冷徹で覚悟の決まりきった顔になっている。
例えるなら狂気だ。おれは彼の顔から狂気を感じたのである。
俺がそれに疑問を感じたその瞬間。
アランはゆっくりと口を開けた。
「会わせろよ。」
アランはそう言った。
アランの事は今は良い。
集中するんだ。
そして俺は一瞬頷いた。
その瞬間、彼は魔物の目の前に立ちはだかった。
「ッ...!」
俺は全力でアランの後ろに飛ぶ。
それとほぼ同時ロイスはその強力な腕力で、二人を抱え走った。
俺は反射的にアランの方へ振り向く。
そこには仁王立ちをしたアランがいた。
ふと見ると魔物は腕を上に伸ばすように構えている。
髪の毛のような靄から、垂れた皮しかない腕を伸ばし、その腕の先に誰の物か分からない剣を装備しているのだ。
まずい。
俺は反射的にそう感じ、叫んだ。
「アラン!!」
俺の声と同時。
魔物の腕が振り下ろされた。
それとほぼ同時に轟音がなる。
その瞬間。
もう既にアランの右腕は消し飛んでいた。
アランは仁王立ちの状態で動かない。
ほとんど動揺していないのだ。
何も無かったように、さも当然であるように佇んでいた。
「怯むと...そう思ったのか?ええ?」
アランはそう静かに言った。
斬り飛ばされた右手からは血が絶えず吹き出ている。
「アラン......?」
その瞬間である。
魔物は一瞬よろけた。
俺と同じく、アランの醸し出す覇気のような物に気圧されたのだ。
【今だ】俺の中の何かがそう浮ぶ。
「アラン避けろ!!!!」
俺は喉が壊れる程の大声でそう叫んだ。
アランは右へ思い切り飛ぶ。
それとほぼ同時に俺は右手を構え、【握り込む黒炭】を使用した。
「ッ...!」
俺の右手は焼けただれる。
だが、まだ機能するのだ。
問題ない。
見ると魔物は若干よろけている。
「逃げろ!!!」
俺はアランにそう叫んだ。
「良いんだな!!!」
「ああ!!!」
俺は自分の緊張をほぐすように叫んだ。
アランはロイスが逃げて行った方へ走った。
魔物は土煙の中からゆっくりと顔をだす。
そこには無傷の魔物がいた。
俺の心臓はとてつもない速度で波打っている。
怖い。
死ぬかもしれない。
だが、それでもやらなければならない。
俺だ。俺なんだ。俺しかいないんだ。
やってやるさ。
魔物は動かない。俺も動かない。どうする...?
黒の神に使ったような威力のある魔法は溜めがある、使えない。
かと言って、第四等級の魔法を何発当てても殺せないだろう。
しかし、第三等級の魔法では避けられる可能性がある。
俺達の後ろを取った時の圧倒的な速度。
あれが脅威なのだ。
どうする...?
第三等級の魔法とは基本的に攻撃範囲が広い。
だが、この魔物の硬度的に掠っただけでは殺せない可能性がある。
出来れば直撃させたい。
いや、直撃させなければならない。
第三等級の魔法。
それは圧倒的な威力があるのだ。
ここで使えば砂埃があがるだろう。
俺の視界は遮断される。
この魔物は恐らくそれを見逃さない。
つまりだ、俺は第三等級の魔法。
それを確実に直撃させなければならない。
失敗すれば死ぬ。
やるしかない
「「.........」」
場は沈黙だけだ。
俺は魔物を一撃で殺せる。
魔物も俺を一撃で殺せる。
それを恐らくあいつも理解しているのだ。
それ故動かない。もしかすると、先ほど動かなかったのもそれが理由なのかもしれない。
俺はそんな事を思いながら魔物と睨み合う。
そうして数分が経過しただろうか、もしかすると数十分だったかもしれない。
もう分からないのだ。
攻撃されないし、攻撃できない。
そんな数分間だった。
俺の心臓はまだ鳴り響いている。
頬に汗がつたう。
その瞬間だった。
魔物が俺に背を向け、ゆっくりと帰っていったのだ。
「.........え?」
俺は思わず困惑の声を漏らす。
魔物とは人間に対する憎悪と悪意を持っている。
通常、こんな簡単に引く訳が無いのだ。
一体何が...。
俺がそんな事を思って居ると、ついにあの魔物の体は完全に見えなくなった。
俺が疑問に思った、その刹那。
俺はアリアの木刀を空に置くようにして攻撃する、あの不意打ち。
そしてこの魔物と初めて邂逅した時の記憶が俺の中によぎった。
あの時は気配も無かったし、音も無かった。
もし......だ。
この魔物に【能力】そう呼べる物があったとしたら...。
それがもし、俺達の背後を取るような物なら...。
その瞬間俺の全身が強張り、緊張が走る。
来る...!!!!!
外れれば死ぬ。
失敗すれば死ぬ。
だが、ここしかない!
「うああああああ!!!」
俺は第三等級の火魔法【佇む星の大火炎】を背後に使用した。
周囲は昼になったかと錯覚するような光と、鼓膜が消し飛ぶかのような轟音に襲われた。
それは全てを消し飛ばす、光その物である。
「ああああ!」
俺は咄嗟に両手で自分の頭を守った。
体が思い切り前に吹き飛ばされる。
「う......ああ...」
光と轟音が直ぐに収まった。
俺は情けない声を漏らしながら周囲を見回す。
「ッ...!」
そこはもう、山では無かった。
周囲の木々、土、雪など全ての物と言う物が吹き飛ばされていた。
いや、そうじゃない。
無くなっていたのだ。
初めからそこに無かったような、そんな様相を呈している。
ふと見ると、そこにはあの魔物が居た。
黒い靄は消し飛んだのか、二足歩行の骨ばった貧相な体が露出していた。
この魔物と初めて邂逅した時、頭らしき部分は見えなかったが、存在自体はしていたようであり、骸骨のような顔をしている。
体には人の顔のような物がいくつも埋め込まれていた。
どうやらこれが、靄の中に浮いているように見えたらしい。
「ああ......?」
俺は体に違和感を感じふと視界を降ろす。
「ッ......!」
俺の心臓がドクリと大きくはねた。
そこには下半身が無くなった俺の体があった。
腰から先が綺麗サッパリ消え去っている。
「ああああ!!」
思わず俺の声が漏れた。
呼吸が荒くなっているのを感じる。
落ち着け、落ち着け、落ち着け。
大丈夫だ、大丈夫なはずだ。
火で焼かれたためか大きく出血はしていない。
俺の意識もはっきりとしているし、まだ死んではいない。
落ち着いて、状況を確認するんだ。
俺はそう自分に言い聞かせた。
俺は両腕を確認する。
やはりと言ってはおかしいだろうが、両腕は根元から無くなっていた。
大丈夫。落ち着け...。
俺はそう言い聞かせながら体をしっかりと確認する。
左の脇腹はえぐれている。
下顎も無い。
先ほどから上手く喋れないのはそう言う事なのだろう。
俺が動揺していた、その時である。
俺の体は虫が蠢くように、肉が新しく産まれるように、俺の体は再生していく。
すると再生は止まり、俺体は完全な物になった。
「は......はあ...?」
気分が悪い。
なんだ......これは。
俺はずっと自分の体について考えないようにしていた。
考えても分からないだろうし、カーミラに会えば解決すると考えていたからだ。
つまり余り重大な事とは考えていなかった訳である。
だが、これはなんだ?
俺の体はまるで人間ではない。
怖い。
俺は一体何なんだ?
本当に生き物なのか...?
俺は本当に俺なのか...?
頭の中に数々の疑問が生まれては消え、そしてまた生まれてくる。
それが意味の無い事だとは分かる。だが、どうしても考えずにいられない。
俺の体は一体何に成ろうとしているんだ...?
吐きそうだ。
ふと魔物を確認する。
骸骨のような巨大な顔はニヤりと不気味な笑みを浮かべていた。
動いたのか、最初から笑みを浮かべていたのかは分からない。
俺の中でその笑みが、悪夢のニヤニヤとした顔を重なった。
その瞬間、俺の中の何かが切れた気がする。
「何がそんなに面白いのか教えてくれよ...なあ?」
こいつらは容易に人を殺す。
悪意と憎悪を持って...。食べるため、自分の縄張りに侵入して来たため。
そんな理由があるなら共感は出来無くとも理解は出来る。
だが、こいつらは人里を意味も無く襲うのだ。
「一体どれだけの理由があれば無条件に人を襲えるんだよ。」
俺は念のため、魔物に向かて【握り込む黒炭】を使用した。
轟音と共に俺の手が焼けただれるが、直ぐに再生する。
俺は何度も何度も魔物に向かって魔法を使う。
手の中に違和感はあるが、痛くはない。
痛覚は前よりずっと鈍っている。
思い返せば再生する速度もずっと速くなっているだろう。
「気持ちの悪い...人間もどきが...。」
見ると魔物の顔は爛れている。
これだけやっても原型を保っているのか...。
まあ、俺が攻撃をしても動かないという事は死んでいるという事で良いんだろう。
「何やってるんだ...俺は...。」
俺はため息の様に言葉を放った。
頭が痛いな...。
耳鳴りもする。単純に疲労だろうか、それとも体の半分以上が消し飛んだせいだろうか。
まあ...体調が良いはず無いよな。
自分でも心身ともに疲労しているのが分かる。
俺の体は何なんだ...?
怖い。
考えないようにするつもりでも、頭の中に浮かんで来てしまう。
「はあ......。」
思わずため息が出る。
辞めよう。
今は自問自答を繰り返している暇はない。
アラン達の安否を確認しなければ...。
そうして俺は若干の恐怖の中、そうしてアラン達が移動した方へ歩き出した。




