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過酷な世界で生きる  作者: バトルマスター幸恵
第二章 ブルグの町編
18/23

第15話「特別外界探索任務、開始」

改訂しております。


俺は旅をして一年と数か月が経過した。

めでたく八歳である。

アリアと一緒にやっていた筋トレをずっと続けているので、ある程度筋肉質になってきた気がする。

未だ若干中性的に見えるものの、まあ、男の子だなと分かるくらいには筋量がついただろう。

体も大きくなったしな。


思い返せば、この一年で四人とは相当仲良くなれた気がする。

出自や経歴もみんなバラバラでその話を聞くのも結構楽しかったな。


特に興味深かったのはロイスだろうか。

俺は彼の事を寡黙で筋肉質な男だと思っていた。

それはまあ...間違いないのだが...。

どうやらそれだけでは無かったらしい。


彼が傷を負った時に手当のため彼の服の下を見ようとした時があるのだが、その時ロイスに見るなと怒鳴られてしまったのだ。

俺の驚いた顔に罪悪感を感じたらしくある話をしてくれた。



それは灰肌の民という話である。

その民族はどうやら普通の人間より多くの魔力を大気から吸収する事ができ、その影響で生まれ持った魔力が多い。

そして、幼少のころはその魔力量に耐えきれず、結果としては成人した時に巨大な火傷跡のような傷跡が残るという特徴的な民族らしい。


まあ...これはどうやら都市伝説レベルの話である。

一部の陰謀論者のような人間以外誰も信じていない。


ロイスは服の下を見られるのを異様に嫌っていた。

まあ......つまり【そう言う事】である。

彼らは魔力が多く吸収する。

それはつまり単純な力が強いとい事だ。

そして見た目が特異的...。

そして今は冷戦中であり、帝国と王国は戦力を求めている。

どうなるかは目に見えてるよな。


実際ロイス曰く「差別された歴史もあるそうだぞ。」と白々しい演技をしてくれた。

つまり、かつては差別され迫害を逃れるために隠れ住んだ結果、今では都市伝説扱いされていると、そう言う事なんだろう。


もちろん俺は「貴方の事ですよね」と追及はしないが...。

そんな事喋って良かったのだろうか。

8歳の恐怖に歪んだ顔...。

罪悪感で言わせてしまったか。

正直少し申し訳ないな。


ちなみにこの話は宿五人部屋でしたのだが、リーシャは爪の手入れをしており聞いていなかった。

ガルドは「かけぇっすね!」と空気の読めない言っていたし、アランは寝ていた。

どうでも良いらしい。

思い返せばその日のロイスは少し饒舌だった気がする。



そして俺の経理の仕事だが、あの日探索者登録を済ませ宿に帰って来た時。

チームの財布を渡され、銀貨三枚と銅貨五枚(一人で宿を一泊出来無い程度)だった時は宿事燃やしてやろうと思った物だが、何とかやれている。


本当はもっと早くブルグの町に移動する予定だったが...。

町へ移動、金が無くなる、死ぬ気で金を稼ぐ。

町へ移動、金が無くなる、死ぬ気で金を稼ぐ。


このサイクルで俺達は移動しているため時間がかかったのだ。

一応俺が財布を握っているが、アラン達が勝手に借金を作るため、余り意味を成していない。


まあ...とは言え実際なんだかんだ楽しんではいたんだがな。

若干遅れたとは言え数か月程度。

問題ない。

俺がもしあのタイミングに戻っても俺はこのチームに入るだろうと思う。



ちなみに金を稼ぐ方法として基本的に魔物討伐だ。

体躯に優れたアランと、何故だか力が異様に強いロイスが受け。

元犯罪者の剣士、といういう異色の経歴を持つ男ガルドが攻撃。

女性の魔法使い、リーシャがサポートする事によって倒すという戦略である。

一度受けてからしっかりと反撃するという、反撃型のバランスのいいチームだ。


依頼は基本的には群れない、中等級の魔物(大抵第六等級)を倒している。

第五等級をチャレンジするのはかなり稀だ。


探索者の命はとんでもなく軽い。故に命大事にで動くのである。

もしかすると、俺が居る事も関係しているのかもしれない。


俺は通常戦わない。

というか戦わせてくれない。

まあ考えて見れば、8歳の子供を戦いの頭数に入れるなど正気の沙汰では無いだろう...。

そのため戦闘時は一番後ろで退避している。



俺は自分が固有魔法を使える事を知らせてはいない。

今は帝国と王国が冷戦のような状態にあり、核兵器の役割を人間に求めているのだとしたら、固有魔法を使える人間の確保は最優先事項のはずだ。

俺がもしそれを使用できるとしれれば、権力者の介入も考えられる。

アリアを生き返らせた後なら別に良いのかもしれないが、今はダメだ。

西の砂漠に行く道中で妨害にあったら洒落にならない。


無論みんなが壊滅しそうなら迷わず使うつもりでいるが、なにぶん俺の魔法は使い勝手が悪い。

適当に使用したなら周囲は焼け爛れ、アランの丸焼きが完成することになる。

俺の体も分かっていない事が多い。

むやみに使うのは避けた方が良いだろう。

そのため今のところ戦闘に参加できていないというのが実情だな。


なので俺は野宿時の諸々の家事や装備の手入れを行っている。

特に頼まれては居ないがそれくらいはやろう。



まあそうこう色々な事ありつつも、俺達はコイルという町までたどり着いた。

この町を超えるとブルグに到着するのだ。

旅ももう少しである。

毎度の事ながら、金が無くなったため、この町でひと稼ぎしてブルグの町に行こうという算段だ。

そこまでは良かったのだが...。


俺達はある問題に直面している。

アランが前に言っていた、人間と外界の境目。

それが押し戻される現象が起きてしまったのだ。

通称【特別外界探索任務】である。



そうして俺達は今。

全員で外探に居る。

任務の詳細を聞くためだ。


「なあ...見てみろよ『子連れのアラン』だぜ」


「うわ...ほんとに子供連れてんのか...」


探索者たちが口々に話しているのが聞こえてきた。

当たり前だが、二メートルを超える大男と8歳の子供と言うのは目立つようで、アランに『子ずれのアラン』という不名誉な通り名がついてしまった。

申し訳ない...。


「毎度思うのですが、僕は宿で過ごして、その間に四人が依頼を聞くで良いんですよ?」


別に依頼を受ける時メンバー全員が揃っていないといけないという規則は無い。

後から俺に依頼内容を説明するで不便は無いんだが...。


「何言ってんだよ、仲間じゃねえか。それにな言われる度に思うんだが、『子連れのアラン』って言う程悪口か?事実なんだからしゃーねーだろ?」


アランは言った。

本当に何とも思って無さそうである。

まあ...言われてみれば、子連れだからなんだという話なのかもしれない。


「まあ...実際、通り名がついたおかげで、指名依頼が増えたんすよ?」


ガルドが、そばかすを煌めかせながらそう言った。


「そ...そうですか...。」


外探には二つの依頼方式がある。

緊急性が低い依頼なら依頼主が外探に依頼し想定している等級のチームを待つ、こちらが側が仕事を選ぶ入札型。

そして特定のチームに依頼をする、指名型の依頼方式が組まれている。


簡単に言うなら前者はローリス、クローリターン。

後者はハイリスク、ハイリターンという感じだろうか。


ふと周囲を見ると、続々と外探の中に厳つめな人達が入ってくる。

この人たちも特別外界探索任務に呼ばれたのだろうか。

ふとアランがこちらをチラリと申し訳なさそうに見て、言った


「すまねえな...周期的に、お前がいる間くらいは任務は起きねえと思ったんだがなあ...」


「別に問題ないですよ」


そもそも義務なのだから仕方が無い。

実際あの俺の名前が刻まれたプレート。

あれにより町ごとの移動がかなり楽になっているのは事実だ。


本来なら手荷物検査や素性の調査などで数日町に入るのに止められるのだが、それがほぼ完全にパスできのは大きいし、税がかからない。

恩恵だけ受けて、義務を放棄する訳にはいかないのだ。


ふと見ると二階に初老の男性が居た。

確か名前はブレントさんだっただろうか。

吹き抜け構造になっており、そこから見下ろしている。


するとブレントは周囲を見渡し俺達が揃っている事を確認したのか喋りだした。


―――――


俺達はブレントさんの話を小一時間ほど聞いた。

話をまとめると、どうやらここより南の山脈。

その麓の村数日間に壊滅したらしく、痕跡からみて山脈で発生した魔物だろうと結論付けられたそうだ。

俺達の最終目標は村の復興だろう。


作戦としては、正体不明の魔物の討伐、周囲の探索、村の復興の三つに分かれ、段階的に人間と外界の境界を押し上げて行くのが概要だ。


実際もう既に第一陣として【メチルドレドラット】が今回生まれた魔物を討伐に向かっているらしい。

メチルドレドラットとは、総勢17名から形成されており、第四等級が一人、第五等級が六名、第六等級が十名の大規模なチームである。


探索者として憧れの的で、国からの特別な指名依頼だって受けたことがあるらしい。

ここら辺で一番強いと言えるだろう。

魔物の詳細は分かっていないが、推定は第四等級程度。

そのため、まあ...このチームなら大丈夫だろくらいの空気感だった。



村が壊滅させられた。

ラルド王国の領地が一つなくなった訳である。

俺は騎士たちは動かないのか?と思ったのだが、そうでもないらしい。


俺は知らなかったのだが、魔力が大量にある場所というのは環境そのものが変質しているそうだ。

見た事もない植物や、訳の分からない生物の卵など...。

毒性があるのか、危険なのかすら分からない。

要するに危険と言う事だ。

そのため探索者を悪く言えば雑兵として使用するのだと。



まあ...それは良いのだが...。

魔力による環境の変質。

何となく覚えがある。カーミラと会った場所だ。

あれは、もしかすると魔力にる変質なのかもしれないな。

次合った時、聞いてみるか...。



そして俺達の役割としては山脈北側の周囲の探索である。

村の復興は別のチームだ。技能も無いしな。


ちなみに周囲の探索とは具体的に言うと、正体不明の魔物に追いやられてきた弱い魔物の発見と討伐だ。

まあ...比較的安全と言えるだろう。

周りを見てみても、俺達以外のチームも余り真剣に聞いていなかった。

良い稼ぎ時くらいに思って居るのかもしれない。


正直、崩壊した村というのに思う所はある。

同情と言う奴なのだろうか。

それをしても意味が無いのは分かるが、それでも少しだけ気分が悪い。

とは言え、俺達に出来る事があるかと言われれば、くまなく探索し、魔物を討伐する事だけ。

何もできない。



――――


そうして俺達はブレントさんの話を聞き終わり、外探の裏手に移動した。

周りには俺達以外にも4台ほど馬車が見える。

どうやら東西南北で四つの探索エリアに分けるらしく、俺達は北側で、他の探索者達は東側、西側、南側に当たるようだ。


ちなみに俺達の馬車にはブレントさんが乗っている...。

というか逆だ。

ブレントさん達の馬車に俺達が乗っていると言った方が良いだろう。


ブレントさん達は壊滅した村に復興のための調査しなければならない。

村は魔物の脅威もあり、まだ完全に探索しきれていない。

残った生存者の発見、救命も兼ねているのだそうだ。


俺達の目的地は山脈の北側という事で、村から近い。

そのため村まで乗せてもらい、そこから歩く事にしたのだ。

というか俺達は移動用の馬車を持っていない。

基本的に徒歩である。

たまに相乗りをさせてもらうくらいだろうか。

理由は金が無いからだ。


 

―――――


俺達五人は馬車から降りる。

目の前に広がっていたのは、崩壊した村だ。

ほとんど全ての建物は破壊され、ついさっきまでそこに死体があると、そう思わせる血だまりがある。

畑には荒らされたような跡が見えた。


その時、俺の鼻に腐敗臭が入り込んでくる。

腐臭という奴だろうか。

肉や魚の腐った臭いに、アンモニアと人間の便の臭いが複雑に混ざりあった強烈な臭いだ。

息をする度に自分の体に入ってはいけない物が入り込んで来るのが分かる。


多分どこかの瓦礫の下に死体がまだあるのだろう。

人間は死ぬと溶けるらしい。

きっとその臭いだろう。

この臭いは当分忘れそうにないな。


「ふう......。」


俺がため息をつく、するとガルドがハッとした顔し気まずそうに口を開いた。


「大丈夫...っすか...?」


どうやら俺に気を使ってくれているらしい。ガルドは粗雑に見えて、周りが良く見えてる。


「まあ......大丈夫ですよ...。それに仕事なんで、ちゃんとやらないとですしね...。」


大丈夫ではあるが、気分は悪い。

胃がひっくり返りそうだ。

何かがこみ上げてくるのを感じる。

だが、これくらいは予想の範囲内だ。

それに個人的にだが、この村のために尽力したいという思いもある。

根を上げる訳には行かないだろう。


「僕は良いですけど...皆さんは大丈夫ですか...?」


「問題ねえよ。」


「私はちょとキツイかも...。」


「...」


「俺は大丈夫っすよー」


口々に言った。

リーシャが少し辛そうに見えるがそれ以外は問題ないだろう。

リーシャも大袈裟なところがあるし、顔色もそこまで悪くない。

大丈夫だと思う。


「では行きましょうか......。」


そうして俺達はブレントさんと分かれ、村を移動した。

会話は無かった。

俺は口を開いたら吐いてしまうような気がして話したくなかったのだ。

みんなはそうでも無いらしい。


リーシャは爪をいじっていたし、ガルドは周囲を警戒してくれていた。

彼らは死に慣れているようだ。

多分だが、このような任務を何回かこなしているのだろう。


俺がそんな事を考えていた瞬間だった。村の奥から地鳴りのような物が鳴りびいてくる。

俺はふとその音源の方を見ると、そこには数台の馬車があった。

見る見る内に俺達に近づいてくる。


「あれは...。」


俺の声が漏れた。


「ああ。ありゃあメチルドレドラットだろうなあ」


アランが言った。

もう倒して来たのか...。

流石だな。

これが第四等級という奴なのか...。


俺がそんな事を思っていると、馬車は俺達の横を通り過ぎた。

一瞬。長い金髪で、端正な顔立ちの青年がいた。


若そうに見えるが、一体どれ程の物を経験して来たのか、目の奥が暗い。

焦点が合わず虚ろで遠くを見つけているような眼差しだ。

感情が麻痺しているのか、無表情である。


俺と青年の目が合う。

その刹那、彼は目をそらした。


「.........?」


「どした?行こうぜ。」


アランは不思議そうな顔をしている。


「ああ。すいません。今行きます。」


俺はそう言いつつ、歩き出す。

なんだろう。

痛覚が鈍く、寒さなどしっかりと感じないのだが...。

今日はとても、肌寒い気がする。

悪寒という奴なのだろうか。


そんな事を思いながら、俺達の外界特別探査任務が始まったのだ。



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