表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
過酷な世界で生きる  作者: バトルマスター幸恵
第一章 過疎村編
13/23

第12話「前を向こうよ、どこまでも」


俺が開けたのは、宿の廊下へ続く扉...のはずだった。

そこで俺が見たのは、俺が使っていた寝室だった。


俺はカーミラと会った時を思い返す。

状況が似ているな。

これをやったのはカーミラか。

まあ......どうせ逃げられないんだろう。

俺はそう思い中に入った。


俺は周囲を確認する。

壁の一部や床の一部に穴が開き白い何かが見えている。

後は...なんだろう。

この部屋は俺が居た寝室より大きく感じる。

家具が大きくなったというより、全体的に部屋が広くなったと言うべきだろうか。

誰もいない...。


「ふう...」


俺は一息つく。

俺はふと先ほどの状態を思い返した。

まるで自分が自分では無いみたいだった。

あれは何だったんだ?分からない。

だが、良い物でない事は分かる。


俺は相当精神を消耗しているようだ。

自分でも分かるくらいには。

だが、どれほど精神的に来ていたも、あんな風にはならないだろう。

意味が分からない。



正直怖い。

自分が何者か分からなくなってくる。

頭がおかしくなりそうだ。

だが、不幸中の幸いとも言えるだろう。

今は自分の事もアリアの事も全て思いだせる。

大丈夫だ。いや、大丈夫ではないが。

少なくとも先ほどのように、体の主導権を失っている感じはしない。

俺は俺だ。そう確信できる。


でも...それでも。

俺は感情を消す必要がある。

黒の神に勝つために。

もう二度と知能で負けないために。

神を殺すために。

いや、違うな。

それくらいしか今の俺には生きる目標が無いのだ。


アリアは死でしまった。

正直もうどうして良いのか分からない。


俺は平和に生きたいのだろうか、戦争を止めたいのだろうか。

それすら今の俺には分からない。

平和な世界にアリアも父さんも母さんもいないのだ。

確かに黒の神に対して怒りもある。

だが、仮にあの神を殺害してもアリアは戻らない。


仇を討ちたいのか、復讐をしたいのか、そう問われると別にという感じだ。

だが、死ぬ訳にもいかない。

それは両親とアリアの犠牲を無駄にしている気がする。


だったら、まあ...ゴールぐらいあった方が良いよな。

それが達成可能か、やりたい事なのかはともかく。

もう......割とどうでも良いのだ。

全ての事が。



「おい。」


俺のすぐ後ろから声が聞こえてきた。

後ろを振り向く。

そこには肩で息をしている白髪の老婆がいた。

椅子に座ってぐったりとしているが、その振る舞いに若干の粗暴さを感じる。


そして、その老婆は一般的な甲冑に、一部綺麗な黄金の装飾と、花の刺繍がなされたフルプレートアーマーを着ていた。

だが、ボロボロで甲冑のほとんどが消しとんでいる。

体も傷だらけだ。

状況からみて、多分この人?がカーミラだろう。

今来たという事で良いのだろうか。


「血が足りねぇ...ああ...クソ...」


「大丈夫ですか...?」


まあ見た感じ大丈夫では無さそうだが、神の基準では平気なのかもしれないので一応聞いておく。


「大丈夫な訳ねぇ...だろ...おい、こっちに来い...」


そう言いながらカーミラは手招きをする。

俺はそれに応じカーミラに近づいた。

今までなら警戒していた。

もしくは動揺していたかもしれない。


だが今の俺なら何とでもなる気がする。

なぜだろうか...根拠も無いのに出来ると確信してしまうのは。

俺の体内から力が溢れてくる感じがするのだ。

あの灰と液体を飲み込んだからなのかもしれない。



「血を......くれ。」


カーミラは言った。

肩で息をしている。

今にも死にそうだ。


「どうぞ...。」


俺はカーミラへ手を差し出した。

すると彼女は無言で俺の指先を少し切る。

そして血を一滴だけ指で取り、口に含んだ。

すると次第に傷が治り老婆はほとんど無傷の状態になった。


凄いな...。

とんでもない治癒力だ。

血一滴でそんなに回復するのか...。

どうなってるんだろう。

俺の前世で言う吸血鬼か、それに準ずる生き物なのかもしれない。

まあ、この人?が何者でも、どうでもいいよな。



「ああ...6000ちょいってところか...結構頑張ったんだがなあ...」


6000...何の事だろうか...。


「今更ですけど、普通に喋れたんですね」


「ああ...あいつが私の事を先に喋ってくれたからな」


うーん、返事になっていない。

あいつとは黒の神だとは思うんだが...。

俺の予想通り何か契約のような物があったんだろうか。


「それで...なぜここに読んだんですか...?助けて欲しかったんですか?そうなら返してくれませんか?」


「ダメだ、それは出来ない」


「どうして...?」


「ここがお前の人格の分かれ道だからだ...」


うーん...。毎度の事ながら何を言っているのか分からない。

まあ神の言っている事は分かることの方が少ないんだがな。

実は俺が思っている以上に、彼女は何も考えていないのかもしれない。

そろそろ頭を使うのが面倒になってきた。


「本当に先ほどの場所に帰してはくれないんですか?」


「ああ」


うーん...。どうしたもんか。

俺は少しだけ考える。

もし今この神に攻撃すれば殺せるのだろうか...。

そうすれば戻れるのだろうか。

俺がそんな事を考えた瞬間だった。


「もう......演じなくても...良いんじゃねえの?」


カーミラはそう言った。

俺の頭が一瞬真っ白になる。

演じてなんかいないのだが...。


「目。」


カーミラは言った。

俺は目を手の袖で拭う。

どうやら俺はまた泣いていたらしい。

俺の心が少しだけざわめいた気がした。


「これは...失礼しました...」


人前?で泣くのはいつぶりだろう。

まあいいか。


「なあ...お前はそうやって逃げて...前を向かないのか?」


カーミラはポツリと言う。

おもわず俺の体が強張った。

少しだけカチンと来てしまったのだ。


俺は全てに向き合って来た。

解決して来た。

何とかして来た。

頭を精一杯に使い、自分なりに必死にやって来た。

だが、それでも負けたのだ。


確かに慢心が無かったとは言えないだろう。

だが、全てを完璧にするのは俺には無理だったのだ。

だから、もう負けないために、次は出し抜かれないために。

黒の神を殺すために。

合理的に感情をなくすのが必要だと思ったのだ。

十分向き合っていると言えるだろう。


そもそもこいつとは何も関係が無いはずだ。

責められる筋合いはない。



「僕は...」


「お前は逃げている、それを正しいと思いたいんだろ?」


したり顔でカーミラは言った。

その言葉に俺の心がまたざわめいた気がした。

こいつの、私はなんでも知っている。

お前は知らない、気づいてないから、教えてやろう。


そう言いたげは、振る舞いに無性に腹が立つ。

人間でも無い化け物のくせに...。

何も知らないだろうに。


「主観で物を語るのはとても愚かですよ」


俺は平静を装ってそう言った。


「かもな。だが、私にはお前が考える事から逃げているように見えるぜ」


「.........」


俺は思わず黙り込む。

なんとなく察したのだ。

多分こいつは議論をしたい訳でも、俺を言い負かしたい訳でもないのだろう。

ただ、言いたい事を言っているだけ。思った事を言っているだけなのだ。

落ち着け。

俺は自分に言い聞かせた。


その瞬間だった。

カーミラは最も言ってはいけない言葉を放った。



「全く...一回負けた程度でくよくよしやがってよ。」


その一言で、俺の中の何かが切れた気がした。

ふざけるなよ。

一度失敗したくらいだと?

アリアが死んでしまったんだ。

みんな死んだんだ。父さんも、母さんも...。


それを失敗したくらいで、だと?。

目の前が真っ赤になるのを感じる。

ああ...だめだ。頭が働いていない。

いや、もう良いかもしれない。


【殺そう。】


ふと俺はそう思った。

別に頭がおかしくなった訳では無い。

ただ、俺は今怒っているだけだ。


こいつにとってはたった一回。

でも俺にとってはその一回は全てを失った一回なのだ。

許せない。殺すしかない。

こいつを殺せば元も世界に戻れるだろう。

何より俺はこいつを殺したい。



その瞬間俺の頭に言葉が浮かぶ。

【火を使え】と。

魔法の教本で見た。火の固有魔法。

なぜだか俺はそれが使えるとそう思った。


それは不思議な確信。

生まれてすぐ呼吸が出来るのと同じような。

誰にも教えてもらっていないのに、声の出し方が分かるような。

それに近い出来て当たり前だと言う不思議な確信だった。

あの太陽のような物体を生成した時。

あの時と同じような感覚である。



「死ねよ......!」


俺は【握り込む黒炭(ゴ=ロア)】という第四等級の魔法を使用した。

その刹那。

俺の目が焼ける程の光と熱に包まれた。

やってやった。やってやったんだ。


俺がそんな事を考えた瞬間。

俺の後頭部に衝撃が走った。

周囲を確認する。

どうやら俺は壁まで吹き飛んでいたらしい。



ふと俺は違和感を感じ右腕を見る。

そこに右腕は無かった。

関節から先が吹き飛んでいる。

恐らく自分の魔法で消し飛んだのだろう。



不思議と痛みはない。

なぜだろう。

ただ俺はこいつを殺したい。


そんな事を考えていた瞬間だった。

俺の右腕はゆっくりと、だが確実に再生していく。

肉が新しく生まれるように、吹き飛んだ位置からモリモリと再生していったのだ。

なんだ...これは......。

いや、今はそんな事どうだっていい。


「クソガキが...。やるじゃないか。ええ?」


煙の中から若干怒りの籠った声が聞こえてくる。

そこには頬を若干焦がしたカーミラがいた。

そんな事だろうと、思っていた。


俺はまた太陽をイメージし、あの時の魔法を使用しようとした瞬間だった。

カーミラが俺に突進して来たのだ。

俺の背に嫌な汗が滲む。


【死】

俺の頭に浮かんだ。

死が質量を持って突進してくる。

俺はそう直観したのだ。

俺は【握り込む黒炭(ゴ=ロア)】で右手を犠牲に無理やり避ける。


「チッ...!」


カーミラの舌打ちが聞こえて来た。

本気だ。

こいつは本気で俺を殺す気だ。

ああ...そうだよな。俺だって殺す気なのだ。

いいだろう。やってやるさ。

そうして俺とカーミラの戦いは始まった。



カーミラの動きは鈍重で直線的だ。

アリアのように戦いに慣れている訳でも、武に精通している訳でも無いのだろう。

確かにカーミラの鉄拳は直撃すれば死ぬと直感出来るほどの攻撃だ。


だが、それは俺に直撃すればの話である。

それに避けられない訳では無い。

俺は【握り込む黒炭(ゴ=ロア)】で腕を犠牲にしながら避け、着実に魔法での攻撃を当てていく。


俺が黒の神に行った強力な攻撃にはイメージする時間がいる。

今は使えない。

だから俺は全力で動いたのだ

かく乱するために必死で懐に潜り込み、危なくなれば魔法で逃げる。

避けきれずカーミラの攻撃が掠る事もあった。



その強力な攻撃により、俺は何度も壁まで吹き飛ばされたし、骨が折れて、肉が剥き出しになった。

痛みはない。

それに俺の体は再生する。

なぜだかは分からない。

意味が分からない...。



頭の中はおもちゃ箱をひっくり返したように、グチャグチャだ。

それは怒りと、疑問である。


こいつのムカつく顔を思い切り殴りたい。

なぜアリアは死ななくちゃいけなかった?

父さんと母さんは結局どうなった?

こいつのムカつく考え方を訂正したい。

俺の体は一体どうなっている?

こいつに謝らせたい。

俺はどうして失敗した?

なんで!なんで!なんで!なんで!



それらの醜い考えが、俺の頭の中でグルグルと回転していた。



「うあああああ!お前のせいだ!お前の!」


俺は喉が枯れるまで、叫び続け、戦った。

叫んでいる内容自体に意味はない。


ただ、今持っている俺の全てを出し切ったのだ。


全力で殴り、走り、魔法をぶつけた。

俺は怒りと疑問で無茶苦茶になった頭で、必死に考える。

上手く動かない体で、必死に攻撃をする。

汗と、血と、肉と、怒号が飛んだ。

もしかしたら、俺は泣いていたかもしれない。


それでも、全身全霊で戦い続けたのだ。

数分だっただろうか、数十分だっただろうか。

分からなくなるほど、戦った。


正直、それは戦いとは言えなかっただろう。

子どもの癇癪に近かったかもしれない。

でも、それでも、俺は全力だったのだ。


しかし、決着は突然ついた。

地面が血液でグシャグシャになっており、それに滑ったのだ。


その瞬間をカーミラは見逃さなかった。

カーミラの攻撃が俺の顎先に直撃したのである。

その攻撃は俺の意識を刈り取るには十分だったのだ。


俺の意識が落ちる。

その最後に目に入って来たのは、泣きそうになるほど悲しそうな顔をした、カーミラだった。

その顔はある種の慈悲を感じさせる物であった。





――――


「ッ......ああ......」

俺は情けない声を出しながら、目を開けた。

周囲を見る。

そこはまだ、寝室にだった。

横には、ぐったりとした様子で、椅子に座っているカーミラが居た。

重度では無いだろうが、全身にやけどがある。


体がとても重い。

全身が熱い。

どうやら俺は大量に発汗しているようだ。

疲れた...。

全身が脱力しているのを感じる。



でも...なぜだろう。

端的に言うなら、俺の頭はとてもスッキリとしている。


俺はカーミラを殺すつもりだった。

動機は彼女の一言による怒りである。


それが、今はほとんどない。

だが、気分は晴れ晴れとしている。


子供の頃。遊び疲れて、ヘトヘトになりながらベットに入る感覚。

疲れているがとても気分が良い。

とてもスッキリとした気分だ。


多分、俺がカーミラを殺そうとしたのは八つ当たりに近い。

確かに怒りは感じたが、殺そうと本気で決意する程じゃない。

容易では無いだろうが、いつもなら受け流せた。


俺は自分の持っていた黒の神に対する怒り。

何も出来無かった自分に対する怒り。

理不尽に対する怒り。

それをカーミラから受けた怒りに混ぜ込んで、文字通り、思い切りぶつけてしまった。

最低だ。とても申し訳ない事をしたと思う。

でも、それでも、気分は晴れやかだ。


後悔もある。

悲しみもある。

やるせない気持ちある。

だが、少なくとも俺は理不尽に立ち向かっていこうと思えているのだ。


よく考えればこの世界には神様がいる。

人を生き返らせる魔法もあるかもしれない。

いや、確実にある。

根拠は薄い。

だが、可能性があるなら向かって行ける。

今の俺なら。


「気分は...少し落ち着いたか?」


カーミラは問いかけてくる。

さっきまでほとんど動かなかった頭が回り始める。

ああ...なるほどな。

カーミラは俺をたきつけていたのか。


ピリピリとした空気がゆったりとした物に変わっていた気がする。

カーミラは分かっていたのだ。全て。

よく考えればこの部屋俺の寝室と同じ形状だが、確実に寝室より大きい。

最初から俺の憤りを何とか解消するためだったのか。

それに思い返せばカーミラは相当俺に手加減してくれていたのだと思う。



「とても......良い気分です」


「そりゃあ...よかったぜ......」


カーミラはぐったりとしているが、

表情が少し柔らかくなった。

安堵しているようだ。

その時だった、少し躊躇しながらカーミラは俺の頭の上に手をのせた。

ゆっくりと俺の頭を撫でている。


「どう......しましたか......?」


「いや......なんでもねえよ。ただ......少しだけ、このままで居てくれ。」


カーミラは言った。

彼女の顔は何処か、友人を懐かしんでいるような様子だ。

俺としては、別に問題ない。

頭を撫でられるのは、好きではないが、嫌いでもない。


「ごめんなあ......」


カーミラは呟いた。

その声はとても苦しみを帯びていたと思う。

俺と誰かを重ねているのだろうか。

するとカーミラは俺から手をどけた。


今更ながらあの手が沢山ある状態より、感情が読みやすい。

というか、俺と最初にあったあの多腕の姿は一体何だったんだ?

そしてこの姿は第二等級の姿で、あの多腕の姿が第一等級の姿という事なのか?

その二つに一体なんの差がある?

そもそも神とは...?


俺の中に疑問が溢れてくる。


「どうして...こんな事...したんですか?」


俺は咄嗟にそう聞いた。


「んー?何の事か分からねえな。」


白々しく言う。

カーミラは嘘が下手くそらしい。


「そうですか...。ありがとうございます」


俺はペコリと頭を下げた。

状況は何も改善していない。

たが、それでも俺は今、前を向けている。

それはきっと彼女のおかげだ。



「ただ私は決着をつける必要があるってだけだぜ。そのために、私はお前を利用するために、助けただけだ。善意でもお前のためでもねえ。」


「そうですか......でも。ありがとうございました。」


「.........おう。」


カーミラは沈黙の後、少し照れた様子で言う。

その瞬間だった。

カーミラはとんでも無い事を言い放った。



「言い忘れてたがよ。アリアちゃんを生き返らせる方法はあるぜ」


「ッ...」


俺の肩が跳ねる。

俺の頭が一瞬真っ白になった。


「そんな方法があるんですか?!」


俺は言った。

気づけば自然と声が大きくなっていた。

その瞬間である。

世界が割れた。俺の居る寝室がガラスが割れるように崩壊していったのだ。


「時間がねえな」


「なッ...!」


時間制限のような物があるのか。

俺の体の事や、アリアの事。

聞きたい事は山ほどあるのに...。

すると、カーミラが少し焦った様子で口を開いた。



「砂漠に来い。ボルネオって国だ。来る途中でブルグを救うんだ。やれるな?」


「もちろんです!」


俺は反射的にそう答えた。

正直この答えは、ほとんど頭を使っていない。

思考をしていないのだ。

ほとんど感情だけの返事だ。

だが、俺はこの返事を一生誇りに思うだろう。


カーミラは微笑む。

その微笑みは優しい、母親のようだった。

俺はそれと同時に意識が落ちた。





―――――


俺はゆっくりと目を開ける。

どうやら俺は床で倒れてしまっていたらしい。


物凄い疲労感だ。

全身が汗ばんでいる。

だが、とても気分がいい。

スッキリとしている。


俺はふと宿の机の上を見た。

そこには革袋に入った灰があったのだ。


中には手紙。

走り書きの汚い字で書いてある。

焦っていたのだろうか。

単純に字が下手なのだろうか。

多分書いたのはカーミラだ。


内容は


『このアリアちゃんの遺灰をボルネオまで持って来い。助ける。』


若干言葉が変だ。

俺はふと革袋越しに灰に触れてみる。

俺は思わず息を呑む。


温かい。

その温かさは生命の息吹を感じる、勇気を貰える、温かさだった。

俺はふとアリアと初めて握手をした瞬間を思い出した。

あの温かさに似ていたのだ。


「ああ......アリアは、そこに居るんだね。」


俺の目から勝手に涙が溢れて来た。

今はじめて俺は、アリアを復活させる事が可能など実感したのだ。


悲しいのではない。

安心しているのだ。

まだ、希望が残されている事に安心しているのだ。


カーミラはアリアを助けると言った。

図々しいのは分かっているが、もしかしたら父さんと母さん、村のみんなだって生き返らせる事が出来るかもしれない。


「行こう、ボルネオへ」


俺はそうして再び前を向き直した。



もし良ければ☆☆☆☆☆から評価。

感想をお願いいたします。

作者が喜びます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ