# 71. 悠生郷・コロニーの夜
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南の風・ダイナーにて。
4人は合流した。
「クエストはどうだったのー?」
「ああ、無事に終わらせたよ。
依頼人と直接やり取りしてたから、いつも以上に頑張った」
「ゲームをもらったんだぜ!」
キャシーとドクターは、ふーんという顔つきだった。
ゲームにはあまり興味がないようだ。
「キャシーとドクターは何をしていたんだ?」
「あたしたちはコロニーの散策よ。
主に市場を見ていたわ」
「そうか、なにかめぼしいものは見つかったか?」
「そうねぇ、市場は特になかったんだけど、水耕農園を見てきたわ。
そこの管理人と少し話をして、野菜を食べさせてもらったの。
甘くて美味しかったわよ」
キャシーのニューラリングが黄色に光る。
「キャシーはもうお腹空いているんだな」
「もう、腹ペコだよ―!」
一同は注文用タブレットを囲み、それぞれ注文する。
「幽霊河豚、夢うなぎの炭火焼き、月影明太子パスタ、静寂の水炊き、雷鳴豚骨ラーメン、人工ホタルイカの夜光寿司、千年梅の梅ヶ枝餅…。
パスタ以外よくわからないな」
「あたしは幽霊河豚にするよ。
『刺し身』っていうんだが、これが美味しくてね…。魚には白ワインが合うんだよ。それも付けておくれ」
「オレは夢うなぎの炭火焼きにするぜ!キュリィもな!」
「私は…静寂の水炊きにするー!」
皆それぞれ注文した。
ここのコロニーでは、海産物の養殖をやっており、海へ出ること無く食材を得ることが可能である。
だが、高い養殖の技術を必要とし、それが値段に反映されているので若干高めになっている。
ここで捕れたものは冷凍処理されて三鼎・キャンプに輸出しており、そこから世界各地へと運ばれているらしい。
合計3,200ヴェルを支払い、料理が運ばれてきた。
「さすが高いだけあるぜ!うまい!」
「美味しいねー!」
「これは…」
皆口々に感想を言いながら料理を食べていた。
「ネイト、あたしたちはまだ行っていないんだけど、こんなチラシをもらったよ」
と、一枚のチラシをネイトに見せる。
「サーカス団『エノドロア一座』、ただいま公演中!」
「エノドロア…?」
「そう、覚えていない?
名も無いキャンプのバーの名前よ」
「ああ、言われてみれば…」
ネイトは、サハル・リージョンの名も無きキャンプのことを思い出した。
ビッグトップでひとつのキャンプとして成り立っていた。
確かに、ビッグトップはサーカス団が好んで使う巨大なテントだ。
そこのキャンプがエノドロア一座の誕生した地であることは間違いないだろう。
「ネイト!私サーカス見てみたい!」
「わかった、食事を終わらせたら行ってみよう」
「やったー!」
ニューラルリングが淡いピンクに変化した。
食事を終えた一行は、ダイナーとは逆方向、普段は広場と思われる場所に来ていた。
そこには巨大なビッグトップが張られていて、中から歓声が聞こえてきている。
「もう始まってるね―!」
「大盛況だな…」
テントの中に足を踏み入れると、目の前に広がるのは、一面の不思議な光景だった。
色とりどりの衣装をまとった人々が、舞台上で見事な芸を披露していたのだ。
それを見つつ、空いている席に腰を下ろす。
今丁度空中ブランコの披露中で、熟練したアクロバットが空中で旋回し、観客の息を呑むような瞬間を作り出していた。その動きは、まるで空をかけ巡る星々のように自由で美しい。
そして、舞台の中央に大きなピエロが登場し、その奇妙な動きが観客の笑いを誘い、また涙を誘うような不思議な力を放っていた。彼の顔には厚い白塗りの化粧が施され、目の周りには赤いラインが引かれている。動きは笑いを誘うものの、その評定はどこか寂しげで、笑顔と涙が交差しているように見えた。
更に、次の舞台では奇跡的な存在が現れる。
もはや絶滅したと思われていた野生の猛獣たちが、獣使いの手によって驚くほど穏やかに、そして堂々と舞台を歩き回った。
やがて台の上に乗ると、その目の前には炎をまとったリングが降ろされた。
皆固唾を飲んでどうなるのかを必死に見ている。
数秒の静寂の後、猛獣はそのリングに向かってジャンプした。
向かい側の台に着地した途端、これまで以上の観客の歓声が巻き起こった。
「すごいね!」
「格好いいんだぜ!」
ネイトはその歓声に圧倒されていた。
そして、サーカスというものの凄さを実感したのだった。
その後、大道芸や子供たちのラインダンスなど、次々と演目が消化され、公演が終わったようだ。
団長らしき人物がマイクを持って現れる。
「本日は、当サーカス団『エノドロア一座』の公演にお越しいただいて、誠にありがとうございます!
まだ数週間はここのコロニーにいますので、まだ見ていないお友達がいましたら是非お声をかけてきてください!
本日はありがとうございました!」
ワーと、拍手と歓声が起こって、ネイト達は混まないうちにテントを後にしたのだった。
「すごかったね―」
「そうだな。
まさか絶滅していたと思っていたライオンや象が出てくるなんてな」
「あれはおそらくクローンね。
高額なお金を払ってゲノムコピーしたんだと思うわ」
まだあの歓声が耳に残っていて、少しキーンとしている。
「今日はもう遅い。
明日朝からヤマトへ向かおうと思う。
今日はゆっくり休むんだ」
皆了解というフィンガーサインを出して、それぞれの部屋へと入っていった。
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