# 58. 砂漠の疾走
翌朝、一行は準備を整え、M.A.C.S.とバギーに搭乗した。
「トランヴィニア・コロニーに向かおう」
夜を過ごしたキャンプ地から、100キロほど先にあるトランヴィニア・コロニーへと戻る道のりだ。
時刻は午前9時を回ったところ。砂漠の朝はまだ涼しさが残っているが、日が高くなれば容赦ない暑さが襲ってくる。
M.A.C.S.のエンジンが低く唸り、バギーもそれに続いて動き出した。時速40キロの巡航速度で移動すれば、多少の迂回を考えても3時間ほどで到着する見込みだ。
時間が経つにつれ、太陽が昇り、砂の大地を焼き付ける。気温がじわじわと上昇し、体力を削り取っていく。
「バイクじゃとてもじゃないけど無理だよー!」
ドクターがバギーのハンドルを握りながら笑い混じりに言う。
「そうね、ここから先、北半球になると雨季が始まるわ。
雨の中でバイクはもっと厳しいかもね」
その時、バギーに突然の衝撃が走った。
「きゃっ!」
「ネイト、タイヤが穴に埋まったようだわ!」
急停車したバギーの前輪は、砂が柔らかくなっている箇所に突っ込み、半ば沈み込んでいた。
「くそっ、こんな場所に砂の溜まりか……」
M.A.C.S.を操るネイトの通信が入る。
「そっちは、大丈夫か?」
「ちょっと埋まった。ランドクロウラーで引き上げる」
「了解、しっかり固定しろよ」
ネイトはバギーに牽引ロープを繋ぎ、M.A.C.S.の前方ウィンチに結びつけた。
「いくぞ、引っ張る!」
M.A.C.S.がゆっくり前進し、バギーの前輪が砂の中から引きずり出される。エンジン音が砂の上に響き、少しずつ車体が浮き上がってきた。
「もう少し…よし、出た!」
3分ほどの作業で、バギーは砂地からの脱出に成功した。
「また嵌まってしまうかもしれない。多少遠回りになっても、比較的地面の硬いところを進んでいこう」
「うん、そうしてちょうだい。助かるわ」
その時、ネイトはバギーのスピーカーから微かに音が流れていることに気づいた。
「そういえば、俺達以外の声がバギーから聞こえるんだが、何だ?」
「これね、ラジオよ」
「ラジオ?」
「ええ、探索者が移動中に聞くものよ。でも1局しかないの」
M.A.C.S.の中にいるエヴィも会話に加わる。
「そっちはラジオ付いてんのか?こっちは無いぜー!」
「貴方がたのM.A.C.S.にはラジオは無いの?」
「無いな。トランヴィニア・コロニーに着いたらラジオの取り付けを考えてみるよ。
エヴィ、それを頼めるか?」
「了解だぜ!」
この時代のラジオは、電波塔ではなく、衛星回線の余っている帯域を使って音声を送受信する。
広くはアシストグループの会話機能に似ており、モンスターが出現しないセーフティーゾーンではよく聴かれているものだ。
「放送時間が限られているけど、以前のあたしのように一人で移動するには最適の相手よ」
砂漠の熱が次第に強くなり、一行の車両は再びコロニーへ向けて進み始めた。
しばらく進んだ後、空気の変化に気づいたドクターが、バギーのメーターに目をやった。
「気温がもう35度を超えているわね。
そろそろ水分補給をしたほうがいいかもしれないわよ」
「よし、トランヴィニア・コロニーまではもう少しだが、昼の時間だ。
M.A.C.S.を警戒モードにして水分補給も兼ねて昼食にしよう」
「よっしゃー、メシだぜ!」
「レーションだがな…」
「キュリィさえ飲めればなんでもいけるぜ!」
「エヴィ、あたしにもキュリィをもらえるかい?」
「もちろんだぜ!」
ドクターは、キュリィの入ったコップを貰う。
「俺のM.A.C.S.にはキュリィサーバーがあって、いつでも冷たくて美味しいキュリィが飲めるようになっているんだ!」
「そういうのいいわね!」
流石、キュリィ仲間である。
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