# 55. イースタン・リージョン
乗船して8時間ほどが経過しただろうか。
アナウンスが流れた。
「ポーン!
まもなく、リージョン境界をまたいて、イースタン・リージョン海域に進入します。
航海は順調で、あと6時間ほどでトランヴィニア・コロニーに到着予定です。ポーン!」
時間は午後11時を回ったところである。
外は暗く、何も見えない。
「遂にイースタン・リージョンに入るのか。
6時間後というと、朝5時か。
ちょっと仮眠したほうが良いな」
と、雑魚寝ではあるが寝る場所があったので、そこで仮眠を取ることにした。
エヴィはOEPPし過ぎて疲れたのか、いびきをかいて寝ている。
キャシーとドクターはあの後おしゃべりを続けていたが、今は二人仲良く並んで寝ていた。
何が起こるかわからないこの世界では、休めるときに休むのも、探索者の勤めである。
そして、皆は眠り、時間が過ぎていった。
5時間ほど経過しただろうか。
エヴィが起きてきた。
「少しは慣れたぜ!」
それもそのはず、この海域は大陸が近く比較的穏やかだからだ。
まだ少し揺れていたが、エヴィは頑張って何かを食べるためにレストランへ向かった。
「クライオ・キュアード・サーモン(Cryo-Cured Salmon)を頼む!」
エヴィは310ヴェルを支払い、出された料理をガツガツと食べ始めた。
「半日ぶりの食事だぜ!」
船が揺れていることはもう忘れているようだ。
未だ揺れに慣れてはいないが、食欲のほうが勝っているようであった。
やがて、料理を食べ終わったエヴィは、展望デッキへと足を運ぶ。
外は既に明るくなっており、東の方から朝日が登ってくるのが見えた。
「太陽ってあんな感じで登るんだな。
知らなかったぜ!」
船はスピードを落とし岩礁地帯に入った。
座礁しないように、右へ左へ上手く舵を切る。
ここのあたりの地理データを見て、現在の気象や潮の流れも加味してAIが自動操縦をしているのだろう。
他の皆も起きてきた。
「…もう着くのー?」
キャシーは寝ぼけながらそう言った。
進路前方に大地が見えてくる。
「あれがヌサンタラ大陸か」
大地の一箇所で、なにか人工的な構造物が見える。。
「あそこがヌサンタラ大陸の南の玄関口、トランヴィニア・コロニーよ」
ヌサンタラ大陸は、昔は海だったが何かの作用で広大な範囲が隆起してできた大陸である。
東西に1,500キロ、南北に1,700キロ。ビッグフットのあるソララ大陸の半分より少し小さいくらいの大きさを誇る。
時間にして到着まで後20分程度だろうか。
しばらくしてアナウンスが流れる。
「ポーン!
まもなく、トランヴィニア・コロニーに到着いたします。
お忘れ物、お間違えの内容にお願いいたします。ポーン!」
「別リージョンに来たっていうのに、実感わかないぜ!」
エヴィのその一言に、皆が頷いた。
しかし、若干ではあるが、風は弱まっているようではある。
「ネイト、ここからヤマトへはまだ3,000キロ以上あるわ。
進むのも結構だけど、そろそろクエストもやったほうが良いんじゃなくて?」
ドクターの言うことは最もだった。
ここのところ移動ばかりで、クエストの受注をしていなかったのである。
資金が足りなくなりそうだし、M.A.C.S.の改造もしていきたい。
「そうだな…、しばらくはトランヴィニア・コロニーに滞在して、いくつかクエストをクリアしようか」
「やったー!
久しぶりにジェットハンマー振り回せられるよ!」
「キメラ VX シーカーが火を吹くぜ!」
「ドクター、もしものときは頼む…」
「了解したわ」
やがて、ウェーブランナーはゆっくりと入港した。
「よし、行こうか。
まずはHoMEへ行ってクエストを受けたい。
ドクター、受けるクエストはブロンズランクのものになるが構わないな?」
「ええ、構わないわよ」
ドクターのライセンスカードを使えばシルバーランクのクエストを受けることができる。
しかし、実際に戦闘するのはブロンズランクのネイト達だ。
一般的にランクがひとつ上がると、対応するクエストの難易度は10倍程度に跳ね上がる。
ハイレベルネームドモンスターのミッドナイトレイザーで苦戦していたことを考えると、それの10倍は流石に無理なのだ。
一行は、HoMEの対話式パネルへと向かった。
「ライセンストカードヲ カザシテクダサイ」
ネイトはライセンスカードをかざす。
パネル上部にあるスキャナーカメラがそれを検知した。
「カクニンシマシタ。ブロンズランクノ クエストヲ ヒョウジ シマス」
クエストがずらずらと表示される。
このクエストリストは、「ターゲットの種類と名前(複数なら個体数も)」「推奨ランク」「ダンジョンもしくは任務地の場所」「期間」「報酬」「その他報酬」がセットになって表示される。
それらの情報を見ながら、今の自分達で受けられそうなクエストを選んでいくことになる。
ネイトは、しばらく悩んだ後、候補をふたつまで絞った。
「ひとつ目は、『デッド・エコーナイン(Dead Echo-9)』。推奨ランクはブロンズ-(マイナス)。大昔まだ海だったときにこの付近の海域に通信衛星が着水したそうだ。大陸が隆起して長年行方不明だった通信衛星からの信号をキャッチしたらしく、その衛星からブラックボックスを回収してきてほしいという依頼だ」
「もうひとつは、『フォッグ・ウォーカー(Fog Walker)』。推奨ランクはブロンズ(無印)。ターゲットは不明だが、砂漠地帯に出現するらしい。これはその他報酬としてM.A.C.S.パーツを得られるみたいだぞ」
「ネイト、ふと思ったのだけど、いつもひとつずつ受けているの?」
「そうだが…、なにか変か?」
「アシストグループの規模にもよるんだけど、クエストは一度に複数受けるのが常識なんだよ。
行って戻ってを繰り返す時間が惜しいからね。
だから、ふたつとも受けてもいいと思うのよ」
「なるほど…」
ネイトは、ビッグフットでの収集クエストである「ボーキサイト200キログラム」を思い出した。
たしかにあのクエストは別のクエストを終わらせた帰りについてにやっていくことが多いと聞いていたからだ。
「では、ふたつとも受けよう。位置的にデッド・エコーナインを終わらせた後にフォッグ・ウォーカーの討伐に移る。期間はふたつとも4日だ」
「ピピッ…ジュリョウシマシタ。
エクスプローラーズ・オブリュージュ!」
読んでいただき、ありがとうございます!
拙い文章ですが、一生懸命考えて書いたつもりです。
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