# 5. 「外」へ
二人共準備が終わり、集合場所であるスフィアエントランスに向かっていった。
ネイトは、キャシーを守りつつ地上を探索するという使命に燃えていた。
キャシーから何度も突かれなければ、一生日雇いの身だっただろう。
キャシーは、憧れの「外」で活動できるという喜びを感じていた。
亡き父親から「外」の話を聞いて、いつか見たいと思っていたのだ。
「準備は終わったか?」
「ええ、もちろん!」
二人は初めて見るスフィアエントランスを前に、深く息を吸い、深呼吸した。
ついに「外」へ行ける。ここまで長かった。
もしかしたら一生「外」に行けなかったかもしれないのに。
それぞれの思いを胸に、ここ、スフィアエントランス(球体部入口)に集合した。
レンタルM.A.C.S.とバイクは既にエレベーター入口の搬入出用パレットにある。
あとは上昇して「外」に出るだけだ。
地下約4キロに位置しているビッグフットは、エレベーターで地上まで移動するのに30分ほどかかる。
今、ちょうど上から下降してきている状態だから、往復1時間の計算だ。
ネイトはM.A.C.S.の状態を再確認し始めた。
レンタルしたあと、HoMEのシミュレーターを使って少し練習したのだ。
いくらシルバーランク相当と言われたとはいえ、初めて乗るM.A.C.S.だ。
多少の故障は許容されているものの、戦闘で手間取っては元も子もない。
少しでも実戦へ向けての経験値が欲しかった。
キャシーは、整備屋に寄ってバイクの最終調整を行っていた。
自分好みに多少改良したかったのだ。
おかげで乗りやすいバイクに仕上がっているはずだ。
そして、ゆっくりとエレベーターのゲートが開く。
プシューという排気音のあとに、かすかな匂いを嗅いだ。
「外」の匂いだ。少し焦げたような、カラった乾いたような、そんな感じだ。これがそうなのか。
搬入出用パレットがエレベーター内へ移動する。
もうここまで来たら後戻りはできない。
しばらくは生声での会話はできない。お互いに決めておいた通信周波数に合わせ、
意を決して、ネイトはM.A.C.S.に、キャシーはバイクに乗り込んだ。
「いよいよだね・・・」
「そうだな・・・」
ゴッという音とともに、エレベーターが上昇を始める。
今から30分後、「外」に出る。
どんな光景が見れるのだろうか。
死の世界と言われているが、生き物はいるのか、
さっき嗅いだ「外」の匂いの正体は何なのか、
敵に勝てるのだろうか。
期待と不安で胸が一杯になる。
「つい数日前の嘘のよう」
「そうだな、「外」に出るなんてな」
「でも、私がしつこく言わなきゃ、こうならなかったでしょ?」
「俺も「外」には興味があった。だから感謝してるよ」
などと他愛もない会話を交わす。二人共緊張していて、とにかく落ち着きたかったのだ。
そして30分後・・・。
ゴゴゴ・・・という鉄がこすれる鈍い音がして、ゲートが開き、視界が急に明るくなった。
「眩しい!」
「まさか、ここまでとはな・・・」
二人はついに、「外」に出たのである。
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