# 49. 異変の兆し
翌朝、皆がエントランスゲートに集合する。
「今日は重砂まで一気に行く。
トランスポーターに乗って、そこで夜を明かすつもりだ」
了解と、皆がフィンガーサインを出す。
一行は、北へ向かって走り始めた。
2時間ほどが経過しただろうか、目的地まであと30キロほどで到着するはずだった。
ネイトはあることに気づく。
「エネルギー消費が激しい。
普段はこんなこと無いんだが…。
エヴィ、ちょっと見てくれないか!」
「了解だぜ!」
一旦停止して、エヴィはランドクロウラーを丁寧に見回す。
「ここだな!
ちょっと亀裂が入ってる。
多分、メタルアントがかじっていったんじゃないかな!」
「メタルアントか。
直せるか?」
「もちろんだぜ!」
メタルアントは、主に鉄成分を主食とする生き物である。
蟻酸で鉄を溶かし、団子状にして巣まで運んでいるのである。
1時間ほど経過しただろうか。
「よし、これで直ったぜ!」
とエヴィがガッツポーズをする。
「助かった。ありがとう」
「ネイト、大きめの竜巻が迫ってきている。
あたしたちのコースとぶつかる。
ここは動かずに、やり過ごそう」
「わかった。
バイクは俺のM.A.C.S.に載せる。
キャシーはドクターのバギーに乗ってやり過ごしてくれ」
「わかったよー!」
砂と塵を舞い上げ、竜巻がネイトらに向かって進んでいる。
徐々に視界が奪われて、次第に視界ゼロとなった。
太陽の光も半分くらいしか通らないため、あたりは薄暗くなっている。
ゴゴゴゴ…という轟音が響く。
いくらM.A.C.S.とはいえ、ここまでの暴風では、流石に揺れる。
「キャシー、エヴィ、ドクター、大丈夫か?」
「大丈夫だよー!」
「問題ないぜ!」
「こちらは大丈夫だよ」
砂柱が中央付近にまで到達し、一瞬の静寂が訪れる。
「もう一度くるぞ!」
再びゴゴゴゴ…と轟音が響く。
M.A.C.S.が揺れ、自然の脅威を感じる。
キャシーは生身で外にいたら、呼吸不全を起こしていただろう。
バイクも砂で埋まってしまっていたかもしれない。
やがて、竜巻は過ぎ去り、ネイトらは外に出た。
「結構すごかったな―!」
とエヴィ。
M.A.C.S.とバギーが30センチほど埋まっていた。
「よし、皆で掘り出そう」
ランドクロウラーはともかく、駆動系が車輪であるストライカーやバギーはこのままでは走らすことはできない。
全員で除雪ならぬ除砂を行った。
30分後、ようやく掘り出して先へ進み始めることができた。
修理と竜巻で思わぬ時間を食ってしまったが、目的地まではあと1時間と言ったところだ。
ネイトのM.A.C.S.からバイクを取り出し、キャシーはそれにまたがる。
「行こうか!」
一行は慎重に進んでいく。
その後ほどなくして、ハプニングもトラブルもなくトランスポーターの発着場に着いた。
【トランスポーター発着場
おひとり200ヴェル(子供は100ヴェル。6歳以下及び200歳以上は無料)。
M.A.C.S.は2,000ヴェル(クルーザー、キャリアーは載せられません)。
バギー、バイクは1,200ヴェル】
「妥当な値段だな」
とネイト。
「200歳以上?」
とドクターは反応する。
今から200年前といえば、まだ旧現代文明の時代であり、当時はアンチエイジング技術が未発達なこともあって、せいぜい100年が限界だった。
その倍の200年とは、果たしてそんな人物が存在しているのだろうか。
興味は尽きないが、トランスポーター運営者の軽いジョークだと受け取っておくことにした。
そして、合計7,200ヴェルを支払い、トランスポーターに搭乗した。
トランスポーターの駆動系の仕組みは、無限軌道でも車輪でもなく、スパイラルドライブと呼ばれる、螺旋状の駆動機構を回転させることで砂粒の流体を押し出し、推進力を得るシステムになっていてる。
「こんな駆動系もあるんだな!」
と今度はエヴィが反応した。
初めて見るその駆動系に、思わず見とれていたのだった。
このあたりはさすがメカニックである。
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拙い文章ですが、一生懸命考えて書いたつもりです。
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