# 48. それぞれの過ごし方
名もなきキャンプで、補給と食事を済ませた一行は、明日朝の出発まで特にすることがなかったので、皆それぞれ時間を潰していた。
――ネイト
ネイトは、パーソナルハンドヘルドコンピューターで重砂について調べていた。
訪れたことのないバイオームということもあり、十分な調査をしておきたいと思ったからだ。
「重砂はトリリウム反応が起こらず、圧縮水素を利用したジェネレーターで動くビークルで移動することがほとんどで、主に『トランスポーター』を使って渡ることが多い。モンスターも多く生息していることから、『トランスポーター』の迎撃システムはそれなりにある、と」
などと独り言を言って調査を続けていたのであった。
パーソナルハンドヘルドコンピューターの資料は最初から全て内蔵されているわけではない。
欲しい情報を音声入力することで関連データをダウンロードする仕組みになっている。
ひとりM.A.C.S.に向かい、ランドクロウラーに手をかける。
「これからも頼むぞ」
と、機械相手に話し始めた。
他の皆は今頃なにしているだろうか。
キャシーはもう寝ているかな?
エヴィは食べ歩きしているだろう。
ドクターは…、医療行為をしているのかな、と考えを巡らせて宿へと向かっていった。
――キャシー
キャシーは特にすることはなかったので、ふらふらと歩いていると、広場で子どもたちに呼び止められた。
「お姉ちゃん、遊ぼうよ!」
「うん?良いよー!」
と、キャシーは子どもの両脇を掴み、高い高いをしてあげたのだった。
「わーい!高いー!」
キャシーは、ふふっとにこやかに笑い、子どもたちと遊んでいた。
「昔、お父さんにしてもらってたなー」
と、亡き父親を思い出すのであった。
「お姉ちゃん、もしかして強いの?」
「ん?まぁ、そこそこね!」
「じゃあ、ボクたちと腕試ししようよ!」
そう言って、少年は広場の隅にいる老人を指さした。
「あのおじいちゃんが先生なんだけどね、今日は『拳法道場チャレンジ』をやってるんだ!」
「面白そうね!」
拳法道場チャンレンジとは、板を殴ったり蹴ったりして割れるかどうかを競うものである。
子どもたちが次々と挑戦するが、なかなか割れない。
キャシーの番になり、大人ということもあってか、出されたのは結構分厚い板であった。
「え?これ?まーいいか!」
キャシーは腕まくりして、せぇのっ!と拳を振り下ろす。
バキォォォン!
と板は見事に真っ二つになった。
「わぁ、すごい!」
と子どもたちは大歓喜。
キャシーは胸を張って得意げに笑った。
――エヴィ
エヴィはキュリィを調達して満足していた。
バー「エノドロア」に入り浸って、飲み食いをしていた。
「やっぱうまいぜ!」
料理をガツガツと頬張り、美味しそうに食べるのであった。
「キュリィも最高ー!
マスター、おかわりだぜ―!」
補給代より食費のほうが高く付いていそうではある。
食事を終えて外に出ると、道端でホバーバイクを蹴飛ばしている少年を見つけた。
「チクショウ!また動かねぇ!」
「おいおい、そんな乱暴にしたダメだぜー!」
エヴィはしゃがみ込み、バイクをじっくり観察する。
「ふむふむ、なるほど。
これはコイルの焼付きだな!」
「お兄さん、わかるの?」
「当たり前だぜ!俺はメカニックだからな!」
エヴィは肌身離さず持っている工具を取り出し、器用にエンジンを分解し始めた。
「ここの、導線が焦げているな。
これじゃエネルギーが流れないぜ!」
手際よく配線を接続し、エンジンを組み立てる。
「よし、試してみな!」
少年がスイッチを入れると、ホバーバイクは力強く浮き上がった。
「動いた!すげぇ!」
「機械ってのはな、ちゃんと手入れすれば、文句言わずに動いてくれるもんだぜ!」
エヴィは満足そうに頷きながら、その場を後にした。
――ドクター
ドクターは、医療施設にいた。
医療活動を行っておきたいというのもそうだが、キャンプの医療技術を高めておきたいと思ったからだ。
「旅の医者か?
このキャンプじゃ、そんなに診るものもないさ」
しかし、ドクターは微笑みながら言った。
「明日の朝には出発するけど、それまで少し時間があるの。
なにか私にできることはある?」
「じゃあ、これを見てくれ。
医療AIなんだが、最近どうも納得のいかない診断が増えていてね」
「ああ、なるほど。
データの統計バイアスがかかってるわね」
医療AIとは、膨大な医療データベースを参照・学習し、それに基づいて診断を下すAIのことである。
多くはメタルセルやコロニーで使用されているが、キャンプでの使用は稀で、この地域特有のデータが欠落しており、誤診断が増えていたようであった。
「ちょっと修正するわね」
「たのむ。
それにしても、あんた若いな」
「ふふ、よく言われるわ」
ドクターは、AIの学習アルゴリズムと、彼女が装備しているパーソナルハンドヘルドコンピューターを接続してデータをアップロードした。
「これで大丈夫なはずよ。
AIは確かに便利だけど、地域ごとの違いを学ばせないと誤診することがあるの。ちょっと手を加えれば、もっと役に立つはずよ」
「何から何まですまない。
助かった」
「良いのよ」
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