# 46. エスケープ
次の日の朝。
出発準備を済まして、それぞれ皆搭乗する。
このあたりの手順はもう慣れたもので、30分もあれば完了する。
「今日はここからキャンプまで120キロだ。
少し急ぎ目で行くぞ!」
そう、今日は久しぶりの100キロ超え走破なのだ。
4、5時間もあれば到着するだろうが、途中何があるかわからない。
皆、わかったというフィンガーサインを出し、ネイトはそれを確認して出発したのだ。
出発して2時間ほどが経過しただろうか。
太陽は真上に上がり、タイヤのバーストが心配なためスピードを落とす。
「もう少し先で昼休憩を取ろう」
気温も高い。空調の付いているM.A.C.S.やバギーとは違って、キャシーのバイクは外気温を直接受ける。
ゴーグルや防塵マスクをしているとはいえ、相当大変だろう。
少し小高い丘、その頂上で休憩を取ることにした。
ここなら見渡せられるので、敵を発見しやすくなるだろう。
M.A.C.S.を警戒モードにして、各自それぞれ食事を取りながら、
「次のキャンプにキュリィあるかな…」
とエヴィ。
よほど好きなのだろう。
彼自慢のキュリィサーバーは空になりかけていた。
「そういえばドクター、ランクはシルバーランクって言ってたな。
シルバーランクになるとどうなるんだ?」
「ああ、それは、クエストの報酬額がぐんと上がるんだよ。シルバーランクの場合だと、下限でも600,000ヴェルくらいだね。一般的に、ランクが上になるほどその数は少なくなると言われているんだ。探索者全体を100とすると、アイアンは50、ブロンズは20、シルバーは15、ゴールドが10で、プラチナが5くらいの割合になる。ランクが上がると報酬も飛躍的に良くなるんだよ。でもこのランキングピラミッドの上位へ行くほど試験の難易度も難しくなっていくから、プラチナランクなんて、あたしでも見たことがないね」
ドクターはさらに続ける。
「シルバーランクになると、ハウジングが開放される。つまりアシストグループ専用のハウスが用意されるわけね。そこにはM.A.C.S.を格納する車庫が付いていたり、素材などのかさばるアイテムを置いたり、内部を綺麗に彩ったりオブジェを置いたり、ゲームを設置したりしているところが多い。
まぁ、実際問題、シルバーランクで家を持てるところなんて数えるくらいだよ。ハウジングライセンスが必要だからね!」
「家持つのにそんなライセンスが必要なのか…」
「そう、他にも色々ある。素材からアイテムを生成するためのクラフトライセンス、農園を展開するためのファームライセンス、鉱床を掘りに抜いて鉱石を収集するギャザリングライセンスなどだね!
特にアイアンランクの場合、ファームライセンスを取得して収集クエストを行い、月1回の活動報告をしたりするところもある」
なるほどとネイトは頷く。
通りで「ボーンズ」は活動を続けられているわけだ。おそらくはコックはファームライセンスを持っており、ビッグフットの産業区の一部を買い取って自分の土地として植物を育てたり牧畜を行い、それを収めているからなんとか成り立っていたのだろう。
アイアンランクで、またグレート・ワイルドボアでアライアンスを申し出てくるくらいだったから、普段どの様に活動をしているのかずっと気になっていた。それが今解消された。
などと話していると、あっという間に時間になった。
「よし、休憩は終わりだ。行こう」
一行は再び進み始める。
荒涼とした大地だが、人々はそれでも残された数少ないセーフティーゾーン(安全地帯)で生活をしている。
そういった場所に物資を届けたりするのも探索者の任務のひとつである。
最も、キャリアーなどの大きなM.A.C.S.でないとそういった事はできないので、もっぱらキャラバン隊がその任を受けていることが多い。
「シルバーランクか…」
ネイトは呟く。
探索者全体の15%を占めるそのランクは、探索者のひとつの到達点と言っても良い。
それ以上になるとかなり厳しく、その任務の重さに負けてランクダウンを求める探索者もいるらしい。
しっかりとした実績と準備、調査が必要だとネイトは考えていた。
「ピピピピピッ…!」
と警告音が鳴った。
「2時の方角から敵対反応。
距離200メートル。この反応は…」
「ブロウビーストだな!
5体くらいいる」
倒しても良かったのだが、急いでいるので戦闘で時間を取られたくない。
「煙幕を張る。エスケープ(逃走)するぞ」
シュンという音とともに煙幕弾がブロウビーストの集団に向かって投げられる。
接地後、ブハッという音がして瞬時に広範囲に煙幕が張られる。
あっという間に数十メートルほどの範囲に煙幕が張られた。
この時代の煙幕は視界を奪うという目的もそうだが、匂いを遮断することもできる。
なので嗅覚の鋭いモンスターに対しては効果が絶大なのだ。
「10時方向へ全速力でエスケープだ!」
初のエスケープである。
本来なら迎え撃ちたかったが、長距離移動中なので、とにかく時間が惜しい。
一行は煙幕を張ったところから数キロほど離れたところを走行していた。
「これだけ離れておけば大丈夫だろう」
「そうだねー!」
ブロウビーストは、煙幕によってネイトたちを見失ったのか、追いかけてくることはなかった。
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