# 40. 残り70キロ
太陽が沈みかけて、あたりが暗くなってきた。
荒地を抜け、再び岩盤地帯に変わっていた。
昼のドレッド・バイパーよりエンカウントはない。いい感じで移動することができている。
「残り70キロ地点に着いた。今日はここでテントを張ろう」
M.A.C.S.を警戒モードにして各自テントを張る。
いつものように焚き火を囲んで晩御飯のレーションを食べる。
「ネイト、今追ってるドクターに会ったらどうしたいんだ?」
「そうだな、言ってなかったと思うんだが…」
ドクターを探しているとは言ったが、その理由までは言っていなかった。
「キャシーの負傷で痛感したんだが、俺達には医療技術が無いと言ってもいい。
戦闘中に大きな負傷をしても、それを治療する術がない。緊急医療キットは一時的な応急処置で、手当とは違う。
この前は、ビッグフットに近かったこともあり、エマージェンシーコールが間に合ったが、今みたいな周りに何も無いところでそれを期待することはできない。
だから、不測の事態に備えてドクターを仲間に迎え入れようと思っている」
「なぁるほどね!その人、キュリィ好きなら良いんだがな!」
とエヴィ。
キャシーは、どこか申し訳無さそうに力無くうん、うん、と頷いていた。
「で、仲間にした後はどうするんだい?」
「ビッグフットに戻ることも考えたんだが、距離にして1000キロ以上もある。リンカーンの使えるダーファス・コロニーへ戻るのもまた200キロ北上しないとならない。だから、先へ進もうと思う。
まだどこへ向かうとは考えてはいないが、戻っちゃ駄目な気がするんだ」
「船に乗るのも良いかもねぇ。船旅はしたこと無いけどな!」
「船か…、良いかもしれない。そうなると、本格的にビッグフットからさよらなすることになる。それなりの覚悟が必要だが、それでも大丈夫か?」
「俺はオッケーさ!何でも来いだ!」
「私も大丈夫だよー!」
「わかった。考えておこう。
先のことは取り合えずおいておいて、ドクターを仲間にするところから考えていこう。
ドクターは、元探索者だがドライビングライセンスもファイティングライセンスも持っていない。メディカルライセンスのみを取得してバギーで拠点間を転々として医療行為を続けているという話だ」
ネイトは更に続ける。
「昔どこかのアシストグループに所属していたらしく、クエストもそれなりに経験しているはずだ。だけど、ある日を境にアシストグループを抜けて、探索者を引退し、ふらりとひとりで放浪するようになったようだ。何があったのかはわからないが、引退するということはよほどのことがあったんじゃないかと俺は考えている」
「声かけたくらいじゃ仲間になってくれないってことだな!」
「そうだ。変わり者って言うわけではないとは思うんだが、再び戦前に引っ張り出すのはかなり骨が折れると思う」
「何があったんだろうねー!」
「わからない。が、彼女がそれを自ら話し出すとは考えにくい。でも腕は確かなようだ」
「仲間になったら大助かりだね!」
「そうだな、なってくれたらの話だがな…」
ネイトはドクターに執着している。
自分の予測の甘さや作戦失敗によるメンバーの負傷が原因で半壊ないしは全滅する可能性がある。
しかし、ドクターがいてくれればその場で治療が行うことができる。
だからといって無茶をしても大丈夫というわけではないが、それでも心強いことには変わりない。
ヒールパッドやメディカルカプセルは有効だが、それでも限度はあるのだ。
自分の心の弱さを、会ったこともないドクターで補完してしまっているのかもしれない。
「ともかくだ、メディカルライセンスは命を取り扱うため他のライセンスより取得が難しい。だから、アシストグループにドクターがいるのは珍しい。中にはモグリのドクターもいるらしいが、正規のドクターは引く手あまただそうだ」
「だろうな!
俺が以前ちょっとお世話になっていたシルバーランクのナイト・スティールズにもドクターはいなかったぜ!」
彼は、「ドクターがいればまだ先を目指すことができる」とナイト・スティールズのメンバーが言っていたのを思い出した。それだけドクター貴重でそして需要が大きいのだろう。
「キュリィ、飲んでくれるかな…」
とエヴィがぽつりと言いこぼす。
彼は、キュリィの良さを語り合える仲間がほしいようだ。
ボーンズはどの様にしていたのだろう。彼らのアシストグループにもドクターはいなかったはずだ。
しかも、食材のために危険なエ・ギン異形種を相手にしている。
ネイトたちに共闘を求めるくらいだから、そんなに強くはないだろう。
アイアンランクで、しかもレストランを経営できるくらいの食材の仕入れをしている。狩りが全てではないと思うが、それでも貴重食材はクエストなどで調達しているはずだ。
ウッドメーカーは…。キャラバン隊はクエストをやらない。
その代わり、戦利品を買い取ったり、品物を売ったりして生計を立てている。
多くは元探索者でそこそこの腕はあるはずだ。
あの大きなキャリアーに、リペアサージを載せているのだろうか。
と、いろいろと考えながら時は過ぎ、そして夜が更けていく…。
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