# 39. 南進200キロ
「アイネリンド・タワーまでは南へ200キロ、途中に補給地点は無く3日で到着予定だ。日中以外は急ぐが、キツそうなら言ってほしい」
二人は大丈夫というフィンガーサインを出し、それを確認したネイトは、
「よし、行こう」
と言ってリンドベルを後にした。
現在時刻は午前11時くらい。走行距離200キロは、1日で行けそうな距離ではあるが、悪路もしくは道なき道を進み、時には巨大なクレパスを大きく迂回もするため、M.A.C.S.という決して速くはない、むしろ遅い部類のビークルを操縦するということもあり、敵対生命体との戦闘も発生する可能性もあるので案外進めないものだ。
それに、夜間の移動は危険を伴うため、ベテランの探索者以外はテント泊する事が多く、それを考えれば200キロを3日で進むという距離感は至って平均的な移動なのだ。
今は太陽が真上に登り始めている。
タイヤのバーストが心配なため、速度を落とし、途中途中で休憩を挟みながら南下していく。
「午後5時くらい、日が落ち始めてきたらスピードを上げる」
「わかったよー!」
「了解だぜ!」
最後の休憩が終わり、一行はスピードを上げて更に南下する。
このあたりはモンスターも生息しにくいのか、エンカウントすることはなかった。
やがて、見渡す限りの荒野になり、太陽はいつの間にか沈んでいた。
ブロロロロ…というエンジン音のみが聞こえている。
「よし、今日はこの辺でテントを張ろう」
一行は停止し、それぞれのテントを張った。
もちろん、M.A.C.S.は警戒モードにしてある。
3人は焚き火を囲み、簡単ではあるが食事を取った。
「今日は70キロほど進んだな。あと130キロ。順調に行けば明後日には着くだろう。問題は…」
「問題は?」
「アイネリンド・タワーがどういう外観をしているのかわからない。『タワー』と名が付いているからなにか高い建物なのかもしれないが、想像がつかないんだ」
「行けばハンドヘルドコンピューターがきっと教えてくれると思うぜ!」
確かにそうだなとネイトは思い、残りの食事をかき込んだ。
そしてキュリィを飲んで寛いだ。
「やっぱ、キュリィはうまいぜー!」
とエヴィ。
彼はキュリィのためだけに、M.A.C.S.の格納庫を少し改造して冷蔵機能付きのキュリィサーバーを作っていたのであった。
「私そろそろ寝るねー!おやすみー!」
ネイトとエヴィもそれに続くようにそれぞれのテントに入っていった。
テントの中は、外がどんな気温であれ、23度くらいの室内気温を保つ。
非常に快適でよく眠ることができた。
翌朝。
朝8時くらいだろうか、無事に皆起きてきて出発準備を進める。
「みんなおはよう。今日も70~80キロほど南下する。岩盤地帯を抜け、荒地に入る。モンスターとのエンカウントが予想されるため、各自最大限の警戒をしながら進むぞ」
この時代の荒地は半砂漠と言っていいほど荒涼としている。
限られた湿った大地に乾燥に強い植物が根を下ろし、その朝露を求めて小動物や昆虫がやってくる。
それらにとってはオアシスのようなものであろうが、そういったものを狙うモンスターが出現しやすいのもこの荒地の特徴だ。
「気をつけていこうー!」
「おう、任せろ!」
一行は出発した。
まもなくして、岩盤地帯が終わり荒地へと変わっていった。
わずかに残った湿った箇所に、植物と思われるものが根を下ろしている。
初めて見るその光景に目を奪われそうになったその瞬間、アラーム音が鳴り響く。
「ピピピピピッ…!」
「レーダーに反応あり。1時の方向より接近中、距離50メートル!
インターセクトまで8秒!
タイプはベルノイド、頭数は1体のようだ。
ドレッド・バイパー(Dread Viper)と表示されている。
キャシー、頼めるか?」
小さめのベルノイドのようで、M.A.C.S.の副砲では狙いにくい。
「わかったよ―!」
キャシーはバイクを降り、ジェットハンマーを構える。
数秒後、ドレッド・バイパーと交戦状態になった。
「えい!」
とキャシーはジェットハンマーを振りかざす。
しかし、ドレッド・バイパーは俊敏でキャシーの攻撃を避ける。
「ようし、こうなったら!
回転する力の軌跡!」
キャシーのスキルが発動する。
くるくると回転し、遠心力による攻撃力が増すのがわかる。
その高速回転にドレッド・バイパーは翻弄され、一瞬だが動きが停止した。
ドガッという音とともに、ドレッド・バイパーは倒れた。
ちょっと苦戦したが、倒すことができたのだ。
「ピピッ…ベルノイド 1タイ トウバツ シマシタ」
「よし!キャシー、よくやった!」
「ふぅ、倒せたよー!」
時間は昼くらい。
太陽は真上に位置している。
M.A.C.S.を警戒モードにして昼食を食べた。
「レーションにはキュリィが合うぜ!」
とエヴィ。
自慢のキュリィサーバーをこれでもかと見せつけている。
「飲みたいときは言ってくれ!」
とエヴィは言うが、移動中の炭酸飲料の摂取は結構「来る」。
水で十分なので、今は必要ないとネイトが言った。
「よし、行こうか。残りはあと40キロほどだ。夕方くらいにはキャンプ地につくはずだ」
一行は更に南進を続ける。
読んでいただき、ありがとうございます!
拙い文章ですが、一生懸命考えて書いたつもりです。
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