# 38. 南西へ
次の日の朝、一行はダーファス・コロニーのエントランスゲートに集合した。
暴風季が近いのか、段々と風が強くなっているのを感じた。
「昨晩も言ったが、距離は60キロほどだ。2時間もあれば着くだろうが、慎重に進むぞ!」
「わかったよー!」
「了解だぜ!」
ネイトのランドクロウラーが、キャシーのバイクが、エヴィのストライカーが、南西のキャンプへ向かってゆっくりと進み始める。
キャンプとは、メタルセルやコロニーに住居を移すことができなかった人々が、比較的安全と思われる土地に集まって作られた居住区である。キャンプの名前は特に決められておらず、主にその土地の名前で呼ばれることがほとんどだ。
砂岩地帯に差し掛かる。
しばらくすると、キャシーのバイノクスに反応が出る。
「サーマルセンサーに反応ありだよ!
前方200メートル。反応個体数はふたつ!」
「ランドクロウラーでも確認した。
インターセクトコースを取り、交戦するぞ!」
待ってましたとばかりに、エヴィが前線に出る。
「ちょっと俺にやらせてくれ!」
そうだ、キャシーがビッグフットで入院していた間、何やらやっていたのだった。
詳しくは聞けなかったが、おそらくはM.A.C.S.の改造だろう。
交戦状態になってすぐに、ズガガガガッとストライカーの副砲が唸る。
「これが俺の新しい副砲、キメラ VX シーカー(Chimera VX Seeker)だぜ!
どんなもんだい!」
驚いたことに、敵群衆全体への攻撃ができる副砲のようだ。
あっという間にベルノイド2体を始末した。
「ピピッ…ベルノイド 2タイ トウバツ シマシタ」
「すごーい!」
「俺達の出番無かったな…」
キャシーは構えていたジェットハンマーを下ろし、ネイトはトリガーから指を離した。
「あの程度のベルノイドなら、ストライカーの副砲で一撃だぜ!」
キメラ VX シーカーは、高速自律誘導弾を発射する副砲で、ターゲットの熱源や電子信号を追尾し、ほぼ確実に破壊するというかなり高性能な副砲である。
「まぁ、ちょっと弾代が高いけどな!」
あれだけ高性能なのだから、それはそうだろう、とネイトは思った。
やはりどこかバランスが悪く、少し抜けている。メカニックとはそういうものなのだろうか。
「戦闘終了。クリアーだ。
先を急ぐぞ」
一行は再び進み始めて、1時間と少し経った頃、前方に人工物が見えてきた。
「あれがキャンプだな」
キャンプ周辺は開けていて見通しが良い。
しかも地面は岩盤なので、地中に潜るタイプ…ブロウビーストやデザートセンチビートなどは寄り付かない。立地的には好条件と言える。
また、数台のタレットが設置してあり、24時間体制で敵対生命体への対処もしっかりとなされているようだ。さながら、規模の小さいコロニーと言ったところか。
一行はM.A.C.S.、バイクを停め、キャンプの中へ入っていく。
コロニーとは違い、ゲートキーパーの執拗な質問攻めに合うことはなかった。
ゲートの上には、「リンドベル(Lindbell)」と書かれていた。ここのキャンプの名前だろう。
「すぐ入れたね!」
「そうだな、あれこれ詮索されないのは助かる」
時間は正午を少し過ぎたあたりだ。
お腹が空いてきたので、目に止まったダイナー、ラスティ・スプーン(Rusty Spoon)に入った。
ドアを押し開けると、オイルとスパイスの香ばしい香りが鼻をくすぐる。
店内はカウンター席とテーブル席がいくつかあり、壁には古びたホログラム広告がチラついている。
ラジオからはノイズ混じりの音楽が流れ、奥のキッチンからジューという肉を焼く音が聞こえてきた。
「よっしゃ、食事だぜー!」
「ええと、メニューは…」
品揃えは多くはない。
キャンプに多くを求めるのはあまり良くない。
「バトルフィールド・バーガー(合成肉パティ+特製ソース)、ラブタ・ステーキ(ラブタの肉)、スモークド・ラグナーラップ(燻製肉のホットサンド)、ギア・ブレンドコーヒー(カフェイン爆裂仕様。おかわり自由)」
「俺はバーガーだ!3個は行けるぜ!」
「私はスモークド・ラグナーラップをお願い」
「俺はそんなに空腹じゃないので、ギア・ブレンドコーヒーで良い」
皆口々に注文する。
「いらっしゃい。お前たち、戦場帰りか?」
「ま、そんなところだな」
とマスターと簡単な会話をした。
数分後、皿の上にはジューシーなバーガー、ホットサンド、コーヒーが並べられる。
香辛料を栽培しているのか、どこかから仕入れているのかわからないが、スパイスが効いている。
この時代、こういうスパイスはとても貴重なものだ。
「戦争が終わっても、いい飯が食えるとは限らねぇ。でも、せめてここでは美味いもんを食わせてやりたいのさ」
とマスター。
戦争は…、昔あった。WW3のことだろう。100年以上前の話だが、当時の爪痕は未だに残り、そして地球の環境汚染を確実に進行させていた。かの戦争により、すべての国家機能は停止、気象兵器や地殻変動兵器による深刻的なダメージが蓄積し、海面上昇・大規模地殻変動によりかつての世界地図は意味をなさなくなったのだという。一部では核が使用され、その汚染が今も尚消えていないというのだ。
戦争が終わった後に、復興支援を目的としたWUC(World Unification Conference。世界統一協議会)が樹立され、現在では思想の違いからみっつに別れているが、支援のためにまだ機能しているのだ。
自分たちもクエスト消化という形で復興の手伝いをしていると思えば他人事ではないとネイトは思った。
そしてマスターにドクターマッセイのことを聞いた。
「マスター、数日前にドクターがここのキャンプに来たと思うんだが、何か知らないか?」
「そうだなぁ、バギーに乗ったピンク色の髪の若いねぇちゃんなら来たな。なんでも急いでいたらしく、補給と食事だけ済ませてすぐに何処かへ出かけたみたいだぞ」
「わかった、ありがとう。
その情報で十分だ」
ドクターマッセイは確かにここのキャンプに来たようだ。
そして急いでアイネリンド・タワーに向かっていったらしい。
「今日は日没まであと数時間程度だが、キャンプへは泊まらずに先へ進みたい。少しでも早くドクターに会っておきたいからだ」
「わかったよー!」
「了解だぜ!」
「マスター、美味しい料理をありがとう。また来る」
「いつでも歓迎だぞー!」
キャンプの人たちはとても暖かく接してくれる。
コロニーに住むことができなかったか締め出されたかで、メタルセルと言うよりはコロニーに敵対心があるからだ。
補給を済まし、一行はここから南へ200キロ行ったところにあると言われるアイネリンド・タワーへ向かうのであった。
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