# 32. HLNM
次の日の朝、スパークルスプリングスのメンバーは、「きらめき泉の水遊び場」に集合した。
「今日は何するのー?」
とキャシー。
「そうだな、エヴィのM.A.C.S.で火力が増えたところだし、ちょっと大物を狙ってみようと思う」
「大物?」
「そうだ、詳しくはHoMEのクエスト受注対話式パネルに行って話す」
一行はカポカーに乗り、HoMEへと足を進めた。
ここは相変わらず賑やかで騒がしい。しかし、この状況に慣れ始めていた。
空いている対話式パネルに陣取り、クエスト一覧を表示した。
「今日はこれをやろうかと思う!」
「わお!これは!」
「え、なになにー?」
ネイトが指さしたのは、ハイレベルネームドモンスター(HLNM)の討伐だった。
ブロンズランク+(プラス)で受けられる上限ギリギリの討伐クエストとなる。
場所はビッグフットから南に30キロほど行ったところにあるダンジョンだ。
「こいつは、腕がなるぜぇ!」
「いいね!」
「満場一致だな。受領するぞ」
ネイトはパネルを操作して、クエストを受けた。
「皆、準備してスフィアエントランスに集合だ!」
数十分後、それぞれ身支度を整えてスフィアエントランスに集まった。
M.A.C.S.とバイクは搬入出用パレットに積み込んである。エレベーターも下に着いているので、あとはこれに乗り地上に出るだけだ。
「よし、行こうか」
「ワクワクするねー!」
一行はエレベーターに乗ると、ゴッという音とともに、エレベーターが上昇を始める。
地上まで30分。この時間にも慣れたものだ。
「HLNMかー!初めて戦うぜ!」
「敵の名前は何ていうの?」
おっと説明しないとなという表情でネイトは話し始めた。
「エ・ギン異形種なんだが、ミッドナイトレイザー(闇夜を切り裂く暗殺者)という名前らしい。少し調べてみたんだが、どうやらクマの一種のようだ」
やがて上に到着したのか、エレベーターの上昇は止まり、ゴゴゴゴ…という金属が擦れる音を発しながらゲートが開いた。
「行こう、南へ30キロ、1時間も掛からないはずだ」
一行は進み始める。
HLNMは、これまで戦ってきたどの敵よりも強い。
下手すれば全滅の可能性もある。そうならないためには綿密な作戦を練る必要があり、移動中の時間を使って、ネイトはその説明をした。
そして…
ひときわ異様な雰囲気を醸し出すダンジョンというか巨大な穴が現れた。
「サーマルセンサーに反応あり。1体だけだよ」
「エコロケーター(超音波の反射による周囲の索敵方法。イルカやコウモリが使う)には部屋がひとつしか無いぞ!おそらくミッドナイトレイザーだけだ!」
アナウンスが流れる。
【ブロンズランク討伐クエスト】
ハイレベルネームドモンスター:ミッドナイトレイザー(Midnight Razor。闇夜を切り裂く暗殺者)
タイプ:エ・ギン異形種
討伐推奨ランク:ブロンズ+(プラス)
討伐賞金:400,000ヴェル
他報酬:無し
「よし、最大限の警戒をして奥へ進もう」
ジリジリジリ…、M.A.C.S.の駆動系が地面を噛む音がする。
やがて、奥から咆哮が聞こえ、すぐにでも交戦しそうだった。
少しずつ距離を詰め、
「目標、視認で確認。作戦開始だ!」
エヴィが特殊砲で酸弾を発射。ミッドナイトレイザーはそれを振り払おうとしたがそれが逆に酸弾の破裂を招き、酸が体に降り掛かった。
グォー、とミッドナイトレイザーが叫ぶ。
「よし、いいぞ!
遠隔で攻撃する。キャシーは追撃の準備を!」
「了解だよ!」
ドォーン!とランドクロウラーの主砲が炸裂。ミッドナイトレイザーに直撃した。
酸と砲撃でダメージを負ったが、そこはハイレベルネームドモンスター、逆に冷静になり、キャシーを迎えた。
「回転する力のき…」
言い終わるか終わらないかのタイミングでキャシーは横へぶっ飛んだ。
「キャー!」
とキャシーの悲鳴が聞こえる。壁に激しく激突して動かなくなった。
ミッドナイトレイザーの強烈な振り下ろしをモロに受けたのだ。
「キャシー!大丈夫か?」
返事はない。しかし今は確認しに行くとこちらも危うい。
「エヴィ、副砲で攻撃、隙を見てチャージアタックだ!」
「承知した!」
ネイトも主砲での攻撃を続け、ディスプレイでキャシーのバイタルをモニターし続ける。
「やばいな。早く倒して手当しないと」
「荒ぶる弾薬の連砲!」
エヴィのスキルが発動する。ミッドナイトレイザーを的確に捉え、確実にダメージを与えていく。
「よし、俺もチャージアタックだ。炸裂する大砲の震撃!」
ネイトが放った砲弾が、ミッドナイトレイザーの胴体を貫通し、それが致命傷になったようだ。
グフ…と、その巨体は床に倒れた。
「ピピッ…エ・ギン イギョウシュ 1タイ トウバツ シマシタ」
よし、と、ネイトはM.A.C.S.から降りてキャシーのもとに駆け寄る。
「キャシー、大丈夫か?キャシー!」
キャシーは口から血を吐いて、はぁはぁと浅く呼吸をしていた。
「まずいな…」
「これを使ってくれ!」
と、エヴィ。緊急医療キットだった。
「これはメディカルライセンスを必要としない応急手当用の医療キットだ。ここで簡単な手当をして、ビッグフットに戻ってしっかりとした治療を受けさせろ!」
「エヴィ、助かる!」
エヴィから医療キットを受け取り、キャシーのバイタルチェックを行った。
「意識はあるようだ。右腕前腕部骨折、胸骨が数本折れて肺に刺さっている。呼吸、脈拍ともに低下!
ショック状態を引き起こすかもしれない。サーマルマントでくるんで体温低下を防ぐ!
ここからビッグフットまで防塵マスクでは困難だ。酸素マスクを装着する!
…っく、出血がひどい。間に合うか…。
キャシー、急いでビッグフットに戻るぞ!大丈夫、助かる!」
「ネイ…ト……」
ネイトは慎重にキャシーの体を持ち上げ、M.A.C.S.に乗せた。
「エヴィはバイクを頼む。全速力で戻るぞ!」
急いでその場を離れ、ビッグフットへ急ぐ。
それと同時に、負傷者が出たとHoMEにエマージェンシーコールを送った。
メディカルキットで計測したバイタルスキャナーの情報を送り、ビッグフットに着いたらすぐに対処できるように準備してもらった。
30分後、ビッグフットのエレベーターゲートに到着した。
昇降台は上に着いており、ゲート付近に何やら人影が見える。
「医療班だ!助かった!」
ネイトは、キャシーを医療班に預け、ストレッチャーに寝かせた。
すぐに点滴と、いくつかの装置が取り付けられた。
「的確な応急処置のお陰で、なんとか一命は取り留めそうです」
「よかった、後を頼む」
と、緊張の糸が切れたのか、ネイトはその場に崩れた。
ランクアップ試験での怪我に対する対処の講座が役に立った。
医療班にすべてを任せ、エレベーターは下降していった。
読んでいただき、ありがとうございます!
拙い文章ですが、一生懸命考えて書いたつもりです。
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