# 3. シミュレーター
翌朝、二人は「きらめき泉の水遊び場」に集合した。
ただ、ネイトはちょっと遅れたようである。
「ネイトー!ちょっと遅いよー!」
「すまん、パーソナルハンドヘルドコンピューターの資料を夜通しでずっと読んでいたんだ」
「そっかー、それで何かわかったの?」
ネイトはキャシーに、フロンティアライセンスだけではほぼ何もできないこと、他のメタルセルに行くためには、リンカーンという移動機構があるが座標登録のために一度は現地に赴くこと、メタルセルの他にも、地上にはコロニーやキャンプなどがあること、世界の脅威や、人類が地下に住むようになった理由などを話した。
おそらく半分も伝わってなかったであろう会話だったが、ネイトが自分で調べたことに間違いがないことを確認するのに十分だった。
昨日と同じくカポカーに乗って、HoMEへ向かった。
カポカーの賢いところは、毎回同じルートではなく、常に最適かつ最短な移動ルートを検索することである。
最高時速80Kmほどで移動するため、ビッグフット程度の規模のメタルセル全域への移動は、20分もあればどこへでも行けることになる。
ほどなくして、二人はHoMEに到着した。
相変わらずの賑やかさだ。ここはいつもこんな感じなのだろうか。
「コンニチハ タンサクシャノ ミナサマ」
エチャリーが声をかけてきた。
昨日はエチャリーの存在を知らなかったので焦ったが、今日はそんなことは無い。
「ライセンス取得のためのシミュレーターをお願いしたい」
「ワカリマシタ アチラデス」
また羽のようなものがぴょこっと出て、シミュレーター受付の方を指した。
「わかった。ありがとう」
「ありがとねー!」
昨日はわからなかったが、上部に液晶のようなものがあって、表情が変わるようだった。
必要なものなのだろうかと思いつつ、二人はシミュレーターに向かった。
「『シミュレーター室』、ここか」
中に入ると、係員から声をかけられた。
「ようこそ!本日はどのライセンスの取得ですか?」
「俺は、ドライビングライセンスとメカニックライセンス、こっちはファイティングライセンスを頼む」
「一度に受けられるライセンス試験はひとつまでですので、ドライビングライセンスかメカニックライセンスの
どちらかになります」
「なるほど、わかった。ではドライビングライセンスで」
「承知しました。ではシミュレータを起動しますので、中の装置に入ってください。
入るとオートアシスタントが手順などを教えてくれますので、ご心配なさらずに」
「わかった」
シミュレーター室には、装置がずらりと並んでいる。20台くらいだろうか。
何台か稼働していて、他の探索者もライセンスの取得に奮闘しているようだ。
「じゃ、あとでねー!」
とキャシー。
無垢に聞ける性格もそうだが、こういう時に楽しみながら挑戦できる性格も大したものだと思う。
ネイトとキャシーは適当なシミュレーターに乗り、ライセンス取得に望んだ。
「ドノライセンスヲ シュトクシマスカ?」
「ドライビングライセンスで頼む」
「ワカリマシタ ソウジュウセキニ スワッテ クダサイ」
操縦席に座ると、ホログラムだろうか、いくつかのレバーや計器が表示され、M.A.C.S.の操縦席を再現している。
「すげぇ・・・」
感心しているとアナウンスが聞こえた。
M.A.C.S.の基本的な操縦に関してのことで、移動や戦闘など一通りの訓練を受けた。
そして、シミュレーター上ではあるが実戦である。
移動に関してはレバー2本とフットペダルで行える。
戦闘も、ターゲットを指定すればどんなに動いても常にエイムしてくれる。
操縦自体は簡単だが、慣性やGなどは耐えなくてはならない。
なので耐えられない以上の操作は難しい。そのあたりは操縦者の生体反応を見てリミットをかけられるようだった。
40分ほどが経過した頃だろうか。
シミュレーターでの試験はようやく終わり、二人共出てきたところだった。
「どうだった?うまく操縦できた?」
「なんとかな、そっちはどうだ?」
「バギーやバイクの運転と、人間装備での戦闘をやったよ!楽しかった!」
キャシーは、まるで戦闘民族のように、喜びながら感想を言っていた。
程なくして、係の者が出てきた。シミュレーターの結果が出たのだろう。
「おまたせしました。まずは、キャスリン・ウェスレイさん。
シミュレーターの結果…適性ありと判断。合格です。ブロンズランク+(プラス)くらいの技能を持っているようです」
「次にネイサン・バーグウェルさん。
シミュレーターの結果…適正ありと判断。合格です。シルバーランク-(マイナス)くらいの技能を持っているようです」
ランクは、プラスとマイナスと無印の3種類に分けられている。
ランク自体は変わらないのだが、同じランクでも簡単なクエストなら―(マイナス)でも受けられるし、+(プラス)ならより難しいクエストに挑戦できる技能があるということになる。
つまり、5つのランクが更にみっつに別れているということだ。
「やった!」
「ふぅ、合格か」
二人は安堵した。ここでコケたらお先が真っ暗だったからだ。
「ライセンスカードを更新しましたので確認してください。他ライセンスの付与は1ヶ月後になります。
それでは、エクスプローラーズ・オブリュージュ!」
ネイトには「ドライビングライセンス」が。キャシーには「ファイティングライセンス」が付与されていた。
二人共、ランク表記が-(マイナス)から「アイアン+(プラス)」になっていた。
これでやっと「外」に行けると二人は喜んでいたのだが・・・。
読んでいただき、ありがとうございます!
拙い文章ですが、一生懸命考えて書いたつもりです。
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