# 19. 峠を超えて
翌朝、目覚めたネイトは身支度をして一階の食事テーブルについた。
キャシーはどうやら二日酔いのようで、
「あだまいだいー」
と、飲みすぎたことを後悔しているようだった。
マスターから、「これを飲め」と、ショットグラスに何やら紫色の液体が入っているものを渡された。
ぐいっと飲むと、
「まずいー。おいしくないー」
とキャシー。
「ガハハ!
それを飲めば二日酔いなんてブッ飛ぶぞ!」
飲みすぎたときに飲むものらしい。
朝食は、いわゆるベーコンエッグだ。
ベーコンは、ラブタと呼ばれる豚の亜種の肉で、エッグは、コールと呼ばれる鶏のような動物が生む卵を使っている。
「美味しいね!」
「ああ、香ばしくて美味しい。
特に卵はビッグフットだとこんなに美味しいのは食べたことがないからな」
キャンプでこれだけ美味しいものが食べられるのなら、コロニーではもっと美味しいのだろう…。
と言いそうになったネイト。
ハッとして、ベーコンエッグをガツガツと食べるのであった。
「マスター、世話になった。近くを通ることがあったらまた寄るよ!」
「おう、いつでも歓迎だ!」
二人は停留所へと向かった。
そしてM.A.C.S.を起動、バイクのエンジンを掛け、次の目的地である約100キロ先へと進み始めた。
小さいキャンプは、離れるにつれより小さく、やがて見えなくなっていった。
よくよく考えれば、「外」で出会った最初の人間であったが、あまりにも自然な展開だったので、それを忘れていた。
二人は「外」の空気にも慣れてきたようで、いつしか「外」から「地上」と呼ぶようになっていた。
特に敵襲に合うこともなく、順調に進んだ。
やがて道路は上り坂となり、峠に差し掛かったのがうかがえる。
「結構登るなぁ」
「そうだねー!」
曲がりくねって峠の頂上が見えない。
見通しが悪いということは、戦術的に不利ということで、ここで敵と出会うと厄介なことになる。
それでも頑張って登って頂上が見えてきたなというところで、若干先を走っていたキャシーから、
「動態反応検出!種別はわからないけど敵だよ!」
「こっちも確認した。4…5体かな?
しかし、この反応は…?」
そう、今までの敵と反応が違う。
ベルノイドでも、ゾ・ミ進化種でも、エ・ギン異形種でもない。
頂上付近に居るそれらは、近づくとその正体がわかってきた。
「人間だ…」
「サーマルセンサーでも、人間って判断出たよー」
人間なのに敵対反応。
一体どういうことだと、彼らに近づくと…、
「よう、兄弟!
景気はどうだい?
ちぃとばかし、金貸してくれねぇかい?」
「山賊だ…」
とキャシー。
それを聞いた山賊の一人が、
「おっと、バイクのねぇちゃんはこっちに来な。
かわいがってやるぜ。ヘヘッ」
「気持ち悪い…」
さてどうするか、無視して強行することも可能だが、山賊の撃った流れ弾がキャシーに当たるかも知れない。
かといって、M.A.C.S.での威嚇射撃は強力すぎて使えない。
どうしたら良いか。なにか打開策は…。
ネイトはM.A.C.S.のディスプレイを色々と切り替えながら打開策を考える。
キャシーは、近づいてくる山賊に嫌悪感を感じながら、ジェットハンマーに手をかけていた。
「キャシー、耳をふさげ!」
「…?」
と言われたとおりに耳をふさいだ瞬間、耳を劈くような強烈な音が流れた。
「ぐわぁ、なんだこれぇ…」
ドスン、ドスン、という音とともに、山賊はひとり残らず倒れた。
「ええと…、これは、どういうこと?」
「警戒ラッパだよ、ランドクロウラーの装備のひとつとしてあったのをさっき見つけたんだ。
このラッパは、高周波を発するもので、動物などを遠くに追いやるものなんだ。
ちょっと調整すれば、人間の鼓膜に強烈なダメージを与えて気絶させられる音を出せるんだよ」
「なぁるほど!」
「奴らが起きないうちに行こう。人殺しはしたくない」
「わかったよ!」
ネイトとキャシーは、急いでその場から立ち去った。
峠を下り、平地へと差し掛かった。
「テントを張りたいが、もう少し先が良いな。
また山賊が出るかもしれない」
「そうだね、気持ち悪いよ…」
目的の100キロ地点はゆうに過ぎ、120キロ地点まで来ていた。
あたりはすっかり暗くなり、これ以上進むのは危険と判断。
「限界だな、ここを本日のキャンプ地とする。
テント張って、晩御飯にしよう」
「オッケー!」
M.A.C.S.を警戒モードにして、テントを張る。
仮に山賊が襲って来ても蜂の巣になるだけだ。そのときは、運が悪かったと諦めてもらおう。
テントの2ステップ展開は楽だ。
3分とかからずテントを張ることができる。しかも幕内は平均23℃と快適な温度を提供してくれる。
焚き火を起こし、お湯を沸かし、携帯食材にお湯を入れる。
「テント泊のときはいつもレーションだったからな。
今日は温かいものを食べよう」
「そうだねー!美味しいよ!」
今この瞬間も、キャシーは少し震えている。
寒いのではない、日中の山賊騒ぎがまだ頭に残っているのだ。
初めてのことで相当怖かっただろう。
「ジェットハンマーでけちょんけちょんにしてやったけどね!」
と、強がるキャシー。
ただ、本当にやりかねないのがキャシーの性格だ。
読んでいただき、ありがとうございます!
拙い文章ですが、一生懸命考えて書いたつもりです。
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