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40.身内への謙遜は程々に

「ねえ、マリアン」

「何、アルマ姉さん?」


 唐突に名を呼ばれ私は返事をする。

 彼女にしては珍しく、少し迷った表情をしてから長姉は色づいた唇を開いた。


「実は前伯爵夫人に問題がありそうだって、私が以前から気づいてたって言ったら怒る?」

「えっ……」


 私は目を見開いて彼女を見た。

 怒るかどうかはわからないけれど、その時に教えてくれとは思う。

 でも前世の記憶が戻る前の私が素直にアルマ姉さんの言葉を聞いたかというと疑問だった。

 私とフェリクス様の結婚を邪魔するのねとか言い出した可能性すらある。

 そこまで考えてからやっと返事をする。


「わからない。ただ私には怒る権利は無いと思うわ」

「……本当に大人になったのね、マリアン」


 少し驚いたような顔をしてアルマ姉さんが言う。

 この程度の返事でそこまで感心される自分がちょっと情けなくなってきた。

 以前の私は彼女の目にはどれだけ幼く見えていたのだろう。


「辛い目に遭って成長するとはよく言われるけど、姉として色々複雑ね」

「気にしないで、結婚の件は自業自得だから。それより前伯爵夫人について気づいたことって何?」


 私が促すと長姉は何かを思い出すような目をした。


「二人の縁談が纏まって両家で顔合わせをした時があったでしょう」

「あったわね、私たちの家の方にアンベール伯爵家をお呼びして……」


 そういえばあの席にラウルはいなかった。急に熱を出したと説明されたが今となっては疑わしい。


「それで女性陣だけで歓談した時だけれど、前伯爵夫人って息子の悪口ばかり言ってたなと思って」

「そうだったかしら?」

「ああ、言葉が足りなかったわね。貴方がアンベール伯爵と席を外していた時よ」


 それは私がフェリクスに公爵家の庭園を案内していた時だろうか。

 たった一年前の筈なのに随分と遠い記憶だった。あの時はきっと幸福だった。今の私は思い出せないけれど。


「成程ね。悪口ってどんな?」

「そうね、分かり易い悪意というより一見心配しているようだけど思い返すと悪く言ってるなって感じかしら」

「わかるようなわからないような……」

「たとえば一見頼りがいがありそうだけれど余り気が利かないとか、剣の腕は優れているけれど実は意気地が無いとか」 

「ああ、そんな感じ……」


 前世の両親のことを思い出した。私が周囲に褒められる度彼らは似たようなことを口にした。

 発言内容は違うけれど、謙遜のつもりで貶してくるのだ。

 私が調子に乗らない為と一回言い訳をされたが今でも納得は出来ない。

 増長してもないのに鼻をへし折ろうとする意味がわからないし何より妹にはそうしなかった。


「こちらが公爵家だから過度にへりくだってるのかと思ったし、息子にベッタリで嫁の悪口を言うよりはいいかなと見過ごしてしまったのよね」

「……それか、息子の結婚自体が嫌だったとか」


 私の言葉にアルマ姉さんは数秒沈黙した後、そういう感じでは無かったと返した。


「結婚自体には前伯爵夫人は乗り気だったわ、だから油断してしまった」

「確かに私は前伯爵夫人に嫌な事をされた記憶は無いわ。特別親切にされた記憶も無いけれど」

「公爵家と伯爵家の結婚自体は歓迎、だけど夫となる人物は気に入らないって事態は流石に想像出来ないわよ。だって自分の息子でしょう?」

「……やっぱり私とラウルを結婚させようとしているのって、前伯爵夫人が黒幕だと思う?」

「証拠は無いけれど、彼女しかアンベール伯爵とその弟に強い影響を与える存在が現状思いつかないわ」


 なんでそんな面倒なことをしようとするのか理解に苦しむけれど。

 そう呆れたように言うアルマ姉さんは、けれど理由自体は察しているようだった。


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