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3.伯爵家の男は問題児ばかりのようです

「さっきは驚いたわね」


 自室に戻った私は廊下での光景を思い出し言った。

 シェリアはハーブティーを私に差し出すと同意する。


「確かに色々な意味で驚きました」

「マーベラの常識の無さにも驚いたけれど、フェリクス様があっさり彼女を切り捨てたのが一番意外だったわ」


 彼女は屋敷内では常にフェリクスの傍に居て身の回りの役目をしていたイメージだった。

 侍従の青年はちゃんといるから大きな問題にならないと思うが。


「ですが、元々伯爵様は彼女を余り良く思ってはいなかったのでは?」

「そうかもね、仕方なく雇っていたみたいなことを言っていたし……でも不思議ね」

「不思議、ですか?」

「乳母への恩はわかるけれど、父との約束って言うのがね……なんでそんな約束させたのかしら」


 フェリクスの父親というとは先代のアンベール伯爵だ。五年前に流行り病で故人になっている。

 そんな人が何故息子にマーベラを雇い続けろと約束したのか。


「下世話な考えだけれど……隠し子とか?」

「確かに有り得なくはないですけれど。先代の伯爵様はかなりの好色家だったらしいので」


 シェリアに言われ私は父の言葉を思い出していた。

 あの伯爵が存命だったら決してあの家に嫁には出さなかったと。

 つまり息子の嫁にさえ手を出しそうだと思われるような人間だったということだ。


「でもフェリクス様は全く逆よね。妻の私にさえ一切手を出さない」

「それはそれで大問題です」

「愛していないから触れる気も無い。マーベラへの対応見ると嘘がかなり嫌いなようだから納得だけど」


 だったらどうして結婚したんだと思うが、彼に一目惚れした自分が公爵の父に頼み込んだ経緯があるからこの部分では迂闊に被害者ぶれない。

 よく考えたらほぼ会話もせず婚約期間すらろくに無く結婚した。


 相手について知っていることなんて身分と名前と外見と年齢と剣の腕ぐらいで、女性の趣味さえ知らなかった。

 それなのに躊躇いなく輿入れしたのは女として愛される自信があったから。

 公爵家の末っ子令嬢として可愛い可愛いと甘やかされ過ぎた弊害だ。

 頭お花畑とは前世を思い出す前の自分の為にあるような言葉だった。


「……もしかして私から離婚を言い出させる為に毎日愛していないと言い続けていたのかしら?」


 今更その可能性に気付く。

 だとしたら簡単に離婚することが出来そうだ。若干複雑な気持ちになりながら私はハーブティーを飲み、少ししてから眠りに就いた。

 翌日フェリクスの弟のラウルが「やっぱり兄さんより僕の方を愛してしまったんだね!」と突撃してくることをその時の私は知らなかった。

  

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