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無自覚勇者は『ヒモ』になりたい!  作者: サイトウ純蒼
第四章「次はアンデッド討伐? いやそれよりあの黒騎士ってまさか?」
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46.ウィルとマリンのどきどきダンジョン探索

 研磨石があるという洞窟。王都近くにあり誰でも簡単に見つけられるはずなのだが、数時間探しても見つからなかったウィルがひとりでギルドに戻って来て言った。


「変なエルフに絡まれて洞窟が見つからなかった。一緒に来てくれ、マリン」



マリンが頭を抱えながら答える。


「どうしてあんな簡単な洞窟が見つからないのよ~、ウィル君、子供なの!?」


「う、うるせえ! だから変なエルフに絡まれたって言ったろ!!」


 それとこれとは話は別じゃんと思いつつも、マリンがこれはいい機会だと思い直す。



「じゃあ仕方ないから私が一緒に行ってあげるわ。本当はギルド職員が冒険者のクエストの手伝いをするのは禁止されているけど……」


 マリンがウィルの耳元で囁くように言う。


「マスターに『作戦コード:HI-MO計画』のお手伝いだと言って許可貰ってくるね!」


「何だそれ?」


 意味が分からず首を傾げるウィルに、マリンが小さくウィンクをして奥の部屋へと消えていく。こうしてウィルはマリンを連れて再度郊外の洞窟へと向かった。





「るんるるんるる~ん!!」


 王都を出たふたり。マリンがウィルと腕を組み見晴らしの良い草原を歩く。ウィルが困った顔で言う。


「なあ、なんで腕組んでるんだよ、歩き辛いだろ……」


「え~、だっていつ魔物が襲ってくるか分からないし~、マリン、こわ~い!!」


 基本王都周辺は安全が保たれている。警備兵も時々見回っているし、強い魔物はそれこそ上級冒険者などによってあっと言う間に討伐される。


「全く仕方ねえなあ……」


 磁石のようにくっついて離れそうになりマリン。半ば諦め顔のウィルにマリンが言う。




「あ、あったよ。洞窟」


「え? こんなに近かったのか……!?」


 それは王都郊外というよりは城壁すら見えるような近い距離。なぜ見つからなかったのか不思議だとウィルが考える。



「じゃあ、俺ちょっと行ってくるから、マリンはここで待ってな」


 洞窟の入り口に立ったウィルが隣のマリンに言う。


「えー!! 何言ってるの、ウィル君!? こんなところにこんな可愛い女の子ひとり放っておいて何かあったらどうするのよ~、責任取って生涯面倒見てもらうからね、ね!!」


「……なんでお前はそう話が飛躍するんだよ。ここらは魔物なんて出ないぞ」


 平和な草原。魔物気配など全くない。


「やだー、やだやだー、マリンも行くのー!!」


 急に駄々をこね始めるマリン。ウィルが仕方なしに言う。


「わ、分かったから静かにしろって。本当に魔物が来るぞ」


「わーい、やった! ありがと、ウィル君!!」


 そう言って再びウィルの腕にしがみつくマリン。ウィルはもうそれ以上何も言わずに洞窟の中へと歩き出した。





「……ねえ、ウィル君」


「今度は何だよ……」


 洞窟に入ったふたり。その瞬間からマリンのウィルの腕にしがみつく力が強くなる。マリンが尋ねる。


「た、松明とかはないの……? 真っ暗で何も見えないけど……」


「松明? ないよ」


「……」


 マリンは思い出した。先日の『押し冒険者選手権』でもウィルは全く道具を持たずにダンジョンへと潜っていった。ウィルが答える。


「俺、洞窟の中でも見えるから」


「そ、そうなの……」


 さすが魔王を倒す『作戦コード:HI-MO計画』を任されたウィル。その実力は見習いギルド嬢では計り知れない。


「で、でもウィル君。私は何も見えないので、あまり速く歩かないでね……」


「そうか、まあ仕方ないか。でさ、研磨石ってどんな石なの?」


 マリンが暗闇にいるであろうウィルに答える。


「え、知らない」


「え!?」


「え?」


 立ち止まるウィル。マリンが言う。



「だ、だってマリンだってそんなの見たことないし、研磨石なんて普段使わないしー」


「マジかよ。仕方ない。適当に石を持って帰るか……」


 ウィルがそう言って周りにある石を適当に拾い持っていた布袋に入れる。マリンがウィルに抱き着きながら言う。


「ウィルくーん、怖いよー! ねえ〜、早く出ようよ~」


(ホント何しに付いて来たんだよ……)


 自分が洞窟を見つけられなかったことを棚に上げウィルがため息をつく。その後さらに幾つかの石を拾いふたりで洞窟を出る。





「あー、怖かった!! 洞窟って本当に怖いんだね!!」


「ああ、そうだな……」


 そう言いながらウィルは集めた石の入った布袋の中を見つめる。マリンも隣に来て袋を覗く。


「どれどれ~、研磨石はあるのかな~~??」


 石を見たこともないマリンが袋に手を入れひとつ握って取り出す。



「え? きゃあああああ!!!!!」


 マリンが握って取り出した物。それは何かの小動物の頭蓋骨。それをウィルに投げつけて言う。


「ちょ、ちょっとウィル君!! 何拾って来てんのよ!!」


「何って、お前がべったりくっつくからうまく拾えなかったんだよ!!」


「だからって……」


 その後も袋の中を確認するも半分以上がゴミやがらくたであった。マリンが呆れた顔で言う。



「石も拾えないの……、ウィル君……」


「いや、これはだな……」


 そう必死に言い訳を始めるウィルを適当にあしらい、マリンとウィルはこの中に研磨石があることを願って一緒に王都へと戻った。

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