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【完結】隣国の王太子様、ノラ悪役令嬢にごはんをあげないでください  作者: 秋色mai @コミカライズ企画進行中
夏のプリモピアット

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35/66

35. 何事も片付けは大事です


 マーレリアが商人の国ならば、アンジェライトは宗教と権力の国だ。王の力は絶対で、貴族は虎視眈々とその地位を狙っている。

 そんな国で、殿下があれだけお花畑でいられたのは、陛下と王妃様が溺愛して全てに目隠しをしていたからだ。つまり今回も、あのお二人が全て揉み消そうと動いているわけで。


「さて、どうするかな」

「このままなら何も起きませんけど……」

「長引くな」

「ですね」


 証拠を消すか、私を消すか。証拠は今持っているものはダミーで、本物は使用人が秘密裏に預かり、離宮の金庫へと運んでいる。私に関しても、ひとまずエドアルド様と動いていればいくら影でも手出しはできない。婚約者である情報が伝わるまではまだ時間がある。エサになるなら、今。


「別行動にしません?」

「俺のいないところで襲われるのは嫌だ。トマスを信用していないわけではないが」

「なら大丈夫じゃないですか」

「嫌なものは嫌だ」


 くっ……このヘタレ王太子殿下め。けれど、今回ばかりは私に分がありますから。

 どうにか説き伏せて宥めて、今度は私が勝った。


         *



「まあ、お久しぶりですわね」


 路地裏を一人歩いていれば、現れたのは黒いマントを身に纏った男か女かわからない人。

 侯爵令嬢だった頃、散々見たわ。


「……お命頂戴する」


 いつのまにか囲まれていた。無駄のない動きで私にナイフを向ける。


「い、命だけは……とでも言うと思いました? トマスさん」


 トマスさんが上から現れる。体重によって少し地面が揺れた。それにしても、三階から飛び降りて無傷って化け物……。


 私を守るような体制でいながら、初手で三人薙ぎ倒す。丸太のような腕で頭をやられて死んでないわよね……。

 後ろからきても、前からきても、圧倒的暴力の前では手も足も出ない。相手のナイフを逆に利用したり、体勢を崩したり。毒物や仕込みナイフについては説明しておいたから、対策済み。トマスさんは必要以上に相手に触れず、一撃でやっていく。

 ……けれど、一人取りこぼした。


「……クッ」

「トマスさん」

「わかっている」


 トマスさんの追撃。

 しっかり気絶させないと生け取りにできない。相手に意識があるまま尋問でもしようものなら、舌を噛み切って死んでしまう。そうすればこちらが面倒だ。


「チッ」


 数人は勝てないと悟ったのか逃げようとしている。うん、それでいい。……どいつかしら。あいつ、今手が震えたわね。


「右」


 恐怖で逃げようとしているものを教える。他の逃げようとしているものは仕留めた。その隙に右のやつが逃げる。

 というわけで、伸びている影共を縛る。気になってマスクをペラッと外してみた。女性もいるのね。確かにこの人は身軽だったわ。


「はい、じゃあこれを運んでください」


 エドアルド様がこちらへ到着した。従者の方々が裏道の水路に止めてあった船に死体のように乗せて倉庫まで運ぶ。布で隠しているから余計……犯罪臭い。


「うまくいったようだな」


 全て指示を終えたエドアルド様が私をあちこち確認してきた。そんなペタペタと。トマスさんが信用されていないのかとしょげてますよ。気づいてあげてください。

 そして無事なことを確認したのか、今度は……ああ、これは、うん。


「ありがとうトマス。よくやった!」


 ワシワシ撫でられてる。う、嬉しそう……。顔が怖くてガタイのいい人が10cmくらい低い年下に傅いて撫でられている図。

 ……なんかもう、見慣れたわ。本来違和感しかないはずなのに。


「さ、早く帰るか」

「これから書簡のやり取りで忙しくなりそうですしね」


 そうして船に乗り込んだ。エドアルド様はこれから他の国の王侯貴族の相手もしなければですし大変ですこと。

 まあ私は関係ないと昼寝しようとしたものの、知らないお店が多くてキョロキョロしてしまう。いつもと違う道だから……。

 ……ん?


「エドアルド様、あの黒いのはなんですか?」


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